試合レポート

昌平vs鷲宮

2020.09.06

新生・昌平、今年のチームカラーは粘り

昌平vs鷲宮 | 高校野球ドットコム
鷲宮・横田琉之介

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 今夏東部地区決勝の再戦が早くも地区の初戦で実現した。

 今夏東部地区大会を優勝しその勢いで浦和学院を破るなど県大会準優勝校である昌平花咲徳栄を破るなど東部地区の決勝へ進出した鷲宮との一戦が早くも実現した。あくまで旧チームの話となるが、この両校は僅か3週間前に今夏東部地区大会決勝で激突し、その時は5対1で昌平が勝利している。地区大会屈指の好カードは予想に違わぬ展開となった。

 鷲宮は今夏もスタメンで出場していた渡邉空(2年)と間中俊(2年)が2、3番に入り、さらに、昨秋を経験している二遊間蓮見直也(2年)と関根亨(2年)が1番、5番に入るなど経験のある選手が上位打線に並ぶ布陣だ。一方の昌平にもプロ注目の吉野創士(2年)が残っている。

 打順は「初回に打席にということもありますが、少しでも打順を多く回したい」と言う昌平・黒坂監督の意向もあり夏と同じく3番、他にも昨夏を経験している寺山太陽(2年)が1番、昨秋を経験している川田悠貴(2年)が2番に入る布陣だ。先発は鷲宮が今夏の登板経験もあるエース横田琉之介(2年)、一方の昌平は1年生右腕・川島新大が登板し試合が始まる。

 「神様がもう一回戦って今度は頑張って勝てって言っているから夏のリベンジをしに行こう!」(鷲宮・高柳監督)と試合前に発破をかけられた鷲宮打線が初回から爆発する。

 鷲宮昌平・川島の立ち上がりを攻め、先頭の蓮見がセンター前ヒットを放ち出塁すると、一死後、3番・間中が右中間へタイムリー二塁打を放ち1点を先制する。さらに続く岩崎星哉(2年)が四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げると、5番・関根亨が右中間へタイムリー二塁打を放ち2点目を奪うと、続く川上晃太郎(1年)のピッチャーゴロの間にもう1点を追加し3点を先制する。

 対する昌平もその裏すぐに反撃を開始する。鷲宮・横田の立ち上がりを攻め、先頭の寺山がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く川田がきっちりと送り一死二塁とする。さらに3番・吉野が四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げると、二死後5番・福地基(2年)も四球を選び二死満塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。

 昌平は2回裏にも、この回先頭の山村羅偉(2年)がセカンドゴロを放つとこれが相手の悪送球を呼び二塁へ進むと、続く小林飛雄馬(1年)がきっちりと送り一死三塁とする。さらに9番・川島も死球を選び一死一、三塁とチャンスを広げるが、続く寺山の所で仕掛けたセーフティースクイズは失敗に終わると後続も倒れまたしても得点を奪えない。


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昌平・田村蓮

 それでも昌平は4回裏、一死から8番・小林が一塁線を破るヒットを放ち出塁すると、続く川島もライト前ヒットを放ち一死一、二塁とする。ここで1番・寺山がセンター前タイムリーを放ち1点を返す。

 一方、昌平の先発・川島は初回こそ鷲宮打線に捉えられたが、2回以降立ち直り、一定のリズムではなく時折クイックなどを交ぜながら工夫した投球を見せ、鷲宮打線を5回まで無失点に抑える。

 こうなると、次の1点をどちらが取るのかという展開になるが、次の1点は鷲宮に入る。

 6回表、鷲宮は一死から4番・岩崎がライト前ヒットを放ち出塁すると、ここで昌平ベンチは川島を諦め、2番手に同じく1年生の右サイド吉川優一朗(1年)をマウンドへ送る。鷲宮は吉川の代わり端を攻め、一走・岩崎がすかさず二盗を決めると、続く関根亨がレフト前へポトリと落ちるタイムリーを放ち次の1点が鷲宮に入る。これで一気に試合の流れが鷲宮に傾くかと思われた。

 だがここから、昌平が猛反撃を見せる。

 まず6回裏、この回先頭の小林がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く代打・赤川薫(1年)の所で昌平ベンチはエンドランを仕掛ける。結果はファーストゴロに終わるが、一走・小林は二進し一死二塁となる。ここで1番・寺山がライトフェンス直撃の二塁打を放つが、なぜか二走・小林は三塁で自重し一死二、三塁となる。

 昌平はこれまで再三スコアリングポジションへ走者を進めていたが、なかなか得点を奪えずここで得点を奪えないといよいよ敗戦が見えてくる中、2番・川田がレフト前へ貴重な2点タイムリーを放ち4対3とする。

 対する鷲宮も1点差に詰め寄られすぐに引き離しにかかる。7回表、この回からマウンドに上がった昌平のエース田村蓮(2年)に対し、二死から、9番・飯野隼斗(2年)が四球で出塁するとすぐさま二盗を決め二死二塁とする。続く蓮見がセンター前ヒットを放ちまた点差を広げたかと思われたが、途中からセンターに回った吉野の本塁へ好返球により二走・飯野は本塁で封殺され無得点に終わる。

 これで流れを掴んだ昌平は8回裏、ついに鷲宮・横田を捉える。

 先頭の寺山がピッチャー後方へのプッシュバントを決め出塁すると、続く川田がきっちりと送り一死二塁とする。3番・吉野は申告敬遠で歩き一死一、二塁とすると、二死後6番・福地がライト線へ逆転の2点タイムリー二塁打を放ち、昌平が5対4とついに試合をひっくり返す。

 最終回鷲宮の反撃に対し、昌平のエース田村が3人できっちりと打ち取りそのまま昌平が5対4で鷲宮を制し初戦を突破した。


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昌平・吉野創士

 まずは鷲宮だが、エース横田は被安打11ながらも再三のピンチを最少失点で切り抜けるなど良く投げていた。打線も初回の集中打は見事であり、再三にわたり機動力を使いながら盛んにプレッシャーはかけていた。今夏の勢いそのままに昌平にリベンジをと期するものがあったが、あと一歩及ばなかった。

 「勝ち上がったタイミング当たるとお互い経験値を積んだ状態で当たることになるので、勝つなら公式戦の初戦かなと。このタイミングであればチャンスがあると思っていたんですが」と鷲宮・高柳監督と悔しさを滲ませる。とはいえ、悲観をする事はない。新チームはセンターラインに昨秋や今夏の経験者も多く、この時期にしては完成度が高い。あとは、来春までにエース横田に続く投手を育てることが今後の課題であろう。

 一方の昌平だが、2年前から主力として出場していた千田泰智(3年)、吉野哲平(3年)、渡邉翔大(3年)に角田蓮(3年)など鉄板打線のメンバーがごっそりと抜けた。今夏も旧チームは決勝まで戦ったことで当然新チームの始動が遅れることは致し方ない。

 投手陣は当分の間は継投が基本路線となり、打線も打順などはまだ手探りだそうだ。その影響もあるかこの日の残塁は13と打線はややつながりを欠いた。とはいえ、最後にきっちりと逆転するなど新チームの公式戦初戦としては次第点の内容であろう。

 昌平・黒坂監督は
 「旧チームは先行逃げ切り型だったが、新チームは終盤の粘りが売りのチーム。新チームのメンバーには『旧チームの戦い方を真似る必要はない。自分達の勝ち方や色を出して行こう』と伝えてある」
と新チームに対する方向性は既に打ち出してあり、今日はまさにそのような展開となった。

 ただし、新チームが今後どうしても避けられないテーマとして「主砲・吉野の前後を打つ打者」というものがある。これは昌平打線の今後を占う上で新チームの生命線と言っても過言ではない。旧チームでは吉野の前後を打つ打者が強力であっただけにそんな心配はなかったが、新チームでは今夏の準優勝メンバーである吉野はどうしても目立つ存在でありマークも厳しくなる。

 当面は勝負を避けられるケースが増えるであろう。そのあたりは本人も既に想定していて
 「まだチームが出来上がっていないんで。新チームが始まって苦しい場面もあったんですが、歩かされるんであれば足と肩で。(本塁封殺の場面は)狙っていました」
とこの日もノーヒットながらも、3四球、2盗塁に好返球で本塁封殺するなどきっちりと役割を全うしている。

 新チームは現状勝ちながら育てる形になりそうだが、好素材はいる。経験を積み新チームは大会が進むにつれどんなチームに変貌を遂げるのか。新チームはまだ歩み始めたばかりである。

(記事=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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