加藤学園vs御殿場西
まさに「勝ちに不思議の勝ちあり」を実践して見せた加藤学園
東部地区1位で県大会へ進出を果たし誇らしげな加藤学園
昨秋の静岡県東部地区予選は3位校として通過して県大会は準優勝。2位校として出場した東海地区大会では2勝してベスト4進出。準決勝では県岐阜商に延長の末敗退したものの、中京大中京の優勝で得られた明治神宮枠でセンバツ出場を勝ち取った加藤学園。
しかし、そのセンバツは新型コロナウイルスの感染拡大によって中止。無念の思いを味合わされたが、その救済措置として開催された夏の甲子園交流試合では鹿児島城西と対戦して初めての甲子園で勝利を記録した。
その交流試合で、米山学監督が思い切って1年生を起用してきたことも話題となった。
そして迎えた新チームでのこの秋の大会。何人かのメンバーが残ったチームは、ある程度安定した戦いができる形でこの東部地区大会も勝ち上がってきている。
対する御殿場西は、かつて常葉菊川で全国制覇を果たした実績のある森下和幸監督が異動してきて指揮を執るようになって4年。着実にチーム力を上げてきている。そんな両校の対決は、県東部では今後も、注目の黄金カードとなっていきそうである。そんな両校の対決、期待は高かった。
加藤学園は夏の甲子園交流試合で1年生ながら1番遊撃手として起用されて活躍して“令和の牛若丸”などと称せられた太田圭哉君がどんなプレーを見せてくれるのかと期待もあった。ところが、この日は肩に少し違和感があるということで県大会も控えているので大事を取って出場回避となった。
そのことによって、いくらかメンバーが入れ替わる形になった。ただ、米山監督としては、「今年のチームは経験も少ないので、より多くの実戦を経験としていくということではいい機会だし、まだまだ、チームとしては未完成」ということで、戦いながら作っていくという方針である。
初回、御殿場西は一死一二塁から4番五十嵐君が三遊間を鋭く破ってこれがタイムリーとなって先制する。しかし、加藤学園もその裏、すぐに先頭の平尾君が中越二塁打すると続く佐野君が右前打で帰してわずか2人ですぐに同点。
さらに盗塁と内野ゴロのゴロGO戦術で2点目を奪った。このあたり、交流試合とはいえ学校創立以来、初めて甲子園の舞台を経験した加藤学園がその経験を生かして逞しくなってきたなぁと思わせる戦いぶりだった。
独特の腕をだらりとおろしてから投げ込むフォームの御殿場西・市村君
しかし、御殿場西も3回に二死一三塁という場面から、8番有川君がしぶとく一二塁間を破って同点とする。このあたりは、さすがに勝負強いなと思わせる戦いぶりだった。ただ、加藤学園も逞しい。その裏すぐに、先頭の2番佐野君が内野安打で出ると、一塁への強襲四球と内野ゴロで一死二三塁となったところで5番内田君。内田君の一打はいい当たりだがライナーで中堅手へ。
三走の佐野君は一瞬飛び出したがすぐ戻ってタッチアップで本塁へ帰ってきた。このあたりの判断も素早かったが、こうしたところにチームとしての質の高さが感じられた。結果的には、これが決勝点となっただけに、より貴重なプレーだったとも言えよう。
その後は、御殿場西は先発の市村君がそのまま投げ続けて、何とか加藤学園打線を抑えていく。
加藤学園は、先発吉村君は、球の威力はあったものの、もう一つ制球が定まらず3イニングで7四死球。4回からリリーフした岩間君も、もう一つスキッとせず、加藤学園は5回まで毎回先頭打者を出すという苦しい状況だった。それでも、何とか失点を逃れていっていた。3人目の左腕樋口君も代わり端に安打でまたも先頭打者を出すという苦しい局面。それでも、投手陣が粘りながら、4人で何とか御殿場西打線をかわしていった。
米山監督は、「今年のチームの課題はまず投手陣です。去年までは肥沼という一枚看板がいて、そこに頼っていたところもあったのですけれども、今年は、この試合もそうですけれども、4人、5人でこらえていかないといけませんからね」と、苦しい台所は否めないというところである。
それでも、この試合でも後半に投げ2人の左腕はそれぞれトリッキーで、「制球も、そんなに悪くないはず」ということで、継投で活路を見出していきながら勝ちを拾っていくというスタイルの戦い方になりそうだ。
そういう意味では、この試合などは、加藤学園としては、よく言われる野球格言にもある「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を実践した形だったかもしれない。
決勝犠飛を放った主将の内田歩希君も、「今後の県大会でも、今日みたいな競った展開になっていくと思います。これからも、緊張感をもって練習を積んでいきたい」という気持ちを語っていた。
御殿場西は、終わってみたら5安打散発で2得点。ことに、終盤の左投手陣に封じ込められたのは、森下監督としても、次への課題といったところであろうか。
(文=手束 仁)