土佐vs高知東
土佐、それぞれの想いを集め初戦突破
土佐先発・竹村 拓記(3年)
1953年夏・1966年春と2度の準優勝を含め甲子園通算15勝12敗。近年でも2013年センバツでの21世紀枠出場に続き、2016年には前年秋季四国大会ベスト4入りを認められ、センバツは3年ぶり8回目・甲子園通算12回目の出場を果たすなど、いにしえから現代に至るまで高知県高校野球の歴史を築いてきた土佐。そんな伝統校にはもう1つの顔がある。
それは野球部を含めた大多数が国公立・有名私大を目指す「進学校」。普段から野球部寮「右文寮」自習室での補習授業が日常風景であり、過去には前・東京大野球部監督の浜田 一志氏や、元・慶應義塾大野球部代行監督の高多 倫生氏など、有名校の指導者も多数輩出している土佐の選手たちにとって「志望校現役合格」は「甲子園出場」と同義語、いやそれ以上に果たすべきミッションである。よって夏の甲子園への道が絶たれた土佐の3年生18名中14名が「休校期間中に自分を見つめなおす時間ができて、ここまでの勉強の遅れを自覚して、個人面談を経て引退を選択した」(西内 一人監督)のも無理はないと言えよう。
ただ、残る3年生4人は今大会まで野球をやり切る選択を下した。ただ、その理由は様々である。公式戦初登板初先発で最速130キロをマークし6回86球2安打7奪三振1四球無失点と高知東打線を寄せ付けなかった竹村 拓記(177センチ71キロ・右投右打・吹田市立第一中<大阪>出身)は「甲子園がなくなって一度は気持ちが切れかかったが、大学でも野球を続けようと思っている中で練習再開後に最後まで続ける気になった」と試合後に語れば、国公立大学を経て野球指導者への道を志す主将の滝田 海生(三塁手・160センチ63キロ・右投左打・北摂リトルシニア<大阪>出身)は「高校野球に区切りを付けたかったのが一番です」。彼らはそれぞれの想いの中で高知東と戦った。
その一方で、土佐の下級生たちも3年生への感謝を抱きつつ、それぞれの目標を定めている。「プレッシャーを感じさせないようにしてくれた」3番・難波 蔵之介(1年・一塁手・171センチ68キロ・左投左打・SASUKE名古屋ヤング<愛知>出身)が「文武両道の学校を探していて土佐を選びました。もちろん勉強もありますが、今は野球が楽しみです」と笑顔で3安打3打点の公式戦デビューを語れば、慶應義塾大野球部志望・50メートル走6秒3・30メートル走4秒1の俊足を有する1番・濵松 圭太(2年・左翼手・167センチ58キロ・右投右打・守山リトルシニア<滋賀>出身)は「3年生はみんな優しくてのびのびとプレーさせてくれるので、この大会では1勝でも多くできるようにしたい」と決意を表明した。
そして土佐の次戦の相手は昨秋四国大会4強・今大会は登録選手全員を3年生で固めた岡豊。3年生の想いと、それぞれの学年の想いの結集がぶつかった時、どんな化学変化が起こるのか?注目したい。
(取材=寺下 友徳)