中京大中京vs県立岐阜商
中京大中京8回に追いつかれるも9回に突き放し11年ぶりの秋の東海大会優勝
常時140キロを超えるストレートを投げ込む中京大中京・高橋宏斗君
東海地区の戦前からの実績を有する伝統の強豪校同士。愛知県と岐阜県を代表する名門校対決は、最後まで息の抜けない手に汗握る対決となって、見ごたえも応え十分。まさに、東海地区の雌雄を決するにふさわしい試合だったと言えるものだった。中京大中京が8回に4点リードを追いつかれながらも、9回に再び突き放し、どちらも勝負強さを示した試合だった。
4点を追いかける県岐阜商は8回、先頭の8番服部君が左翼線に二塁打すると、二死三塁となって、代打の山本君が二塁へ内野安打して1点を返す。さらに暴投と死球で一二塁。2番宇佐美君が左越打して二走が帰り、なおも二三塁。3番佐々木君は当たり損ない気味だったがそれが却って内野安打となってついに1点差。さらに、やや平常心を失った中京大中京の高橋宏斗君は連続死球で押し出しついに同点となった。
この秋、県大会から終盤での勝負強さを見せている県岐阜商。県大会準決勝では大垣西に6回まで完全に抑えられ、5点差をつけられながらも残り3イニングで追いついて延長として逆転勝ち。今大会でも前日の準決勝で、3点差を終盤で追いつき、延長で加藤学園を下している。これだけの勝負強さを見せつけてきている県岐阜商である。8回に追いついた時点で、県岐阜商の流れになってしまうのかと思われた。
しかし、中京大中京もさすがだった。同点とされても慌てることなく、ベンチからは自然に、「浮いた球はセンターへ返していこう」という声が上がっていたという。それを聞いて高橋源一郎監督は、「まだ大丈夫だ。勝負していける」と思ったという。
だから9回、県岐阜商の5人目西内君に対して、先頭の3番中山君がよく選んで死球で出ると、送らず打って行けと言う指示。印出君は凡退したものの、暴投で二塁へ進むと、5番吉田修平君は粘った末に左翼へ上手に運んで一三塁。さらに南谷君が初球を叩いて中京大中京が再リード。捕逸もあって二死二三塁となって、8番に入っている高橋宏斗君が詰まりながらも中前へ運んで、自らのバットで2者を帰して3点差としてその裏の守りとなった。
それでも、粘る県岐阜商は先頭の塚原君が右前打。「まだまだ諦めないぞ」というところを示した。しかし、岩田君は大きな中飛で一死。代打湊君の一打はいい当たりだったものの6～4～3のダブルプレーとなって、２時間38分の熱戦はついに中京大中京の勝利でゲームセットとなった。中京大中京は、堂林翔太選手(広島東洋)らがいた時以来の優勝となった。
序盤は中京大中京のペースで流れ、初回は先頭の西村君がいきなり三塁打すると、死球などもあって一死一三塁から印出君の右前タイムリーで先制。2回は一死二塁から9番村上君の右前タイムリー。3回も失策の走者を南谷君がタイムリー安打で返して３点差とした。南谷君は、「4度過去度に一度打つ選手」と言う高橋源一郎監督だったが、この日はいいところでタイムリーを放ち、決勝点も叩きだして活躍した。
これに対して県岐阜商は二死走者なしから途中出場の山田君が中前打すると、高木君の二塁打で帰してまず1点詰める。さらに5回は一死から佐々木君が内野安打で出ると、バント後高木君の右前打で帰して1点差。中京大中京の先発左腕松島君も決して悪い内容ではなかったものの、県岐阜商各打者がしっかり食いついてきていた。中京大中京は、6回からは1番を背負っている高橋宏斗君が抑えとしてマウンドに立ち、6回はきっちりと3人で抑えたものの、終盤に県岐阜商打線が、140キロ超のストレートにも臆することなく、しっかりと捉えてきていた。
それでも、中京大中京は7回に3人目として三塁手からマウンドに立った佐々木君に対して中嶌君、印出君の連打などに失策もあって2点を追加。さらに8回にも二死走者なしから村上君と西村君の連打に暴投でもう1点追加していただけに、展開としてはそのまま中京大中京が逃げ切れるかと思われた。ところが、その裏に県岐阜商の驚異の粘りがあったのだ。
優勝旗を受け取る中京大中京・印出太一主将
安打数はともに13本ずつ。終盤からは、いつどちらにどう転んでもいいという展開でもあった。「まずはホッとしました」と高橋源一郎監督。最後に中京大中京がもう一度突き放せたのは、「夏の愛知大会ベスト4での敗戦から、悔しい思いを背負いながら苦しい練習をしてきた。そうした中で培っていった自信も大きかった」と、高橋監督も選手たちの意識の成長も評価していた。そんな中でも8回に4点を失った高橋宏斗君に関しても、「8回に1点入ったことで、逆に丁寧に行こうと慎重になりすぎてしまい、自分の投球を見失ってしまっていた。だけど、同点止まりでこらえられて、試合中に修正できたのは大きかった」と振り返った。
これで、中京大中京としては明治神宮大会にも11年ぶりの出場。さらに、来春のセンバツへ向けても、「一冬超えて、下位打線にもう少し厚みを増していかれれば、全国でも戦えるのではないかと思う」と高橋監督もさらなる成長へチームを磨いていこうという思いだ。
4点差を追いつきながらも、最後は突き放された県岐阜商の鍛治舎巧監督は、「明治神宮大会は行きたかった」と悔しさをにじませていた。「大事なところで、失策とパスボールというプレーが出てしまってはダメですね」と言いながらも、「この大会を通じて収穫も多かったし、松島君、高橋君と言った全国でも一流の投手を打てたのは成長」と評価していた。昨年3月に就任して以来、着実に名門復活を進めてきた鍛治舎監督だが、ニューユニフォームとなって、新しい県岐阜商として、勝負強さは確実についてきている。来春の成長は、さらに楽しみだと言ってもいい。
（取材・写真＝手束 仁）
■開催期間：2019年10月26日～11月3日（予定）
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