智辯和歌山vs星稜
未来を見据えた中谷采配 黒川史陽が見事に体現
5打数4安打の活躍を見せた黒川史陽(智辯和歌山)
夏の激闘の再戦、そして将来を見据えた木製バットの使用と、国体は初日の初戦から非常に話題の多い試合となった。
そんな中、この試合で最も目立ったのは智辯和歌山の3番に座った黒川史陽だった。
木製バットの対応も苦にすること無く、5打数4安打1打点と大当たり。
選抜甲子園までは左肘がグッと深く入っていたことで、インコースが上手く捌けない打撃フォームだったが、その姿は今はもう無い。コースに逆らうこと無く、バットがスムーズに出るのでより確実性の高い打撃が可能になった。
またこの日驚かされたのは、普段はセカンドに入っている黒川がショートに入り、ショートの守備についている西川晋太郎がセカンドに入っていることであった。二遊間がこれまでとは入れ替わった形となったが、黒川も西川も危なげなく守備機会をこなす。
試合後、黒川はこの起用についても、中谷監督の将来を見据えた「親心」があったことを明かした。
「公式戦では初めてでしたが、この先内野手としてやっていくためにはショートもやっておいた方が良いと中谷監督にアドバイスして頂き、普段から練習でも守っていました。国体の舞台で緊張しましたが、普段通りにできました」
中谷監督の「将来を見据えた」国体での戦いは、バットだけで無く守備においても現れていた。
一方の星稜は、ドラフト上位候補の奥川恭伸が先発マウンドに上がる。
だがこの日は本調子とは程遠い投球で、序盤から智辯和歌山打線に痛打される場面が目立つ。ストレートは140キロ台中盤から後半を記録するが、制球が明らかに甘く、3回に黒川史陽、佐藤樹にタイムリーを浴びる。
結局奥川は、3回2/3を投げて被安打6、2失点でマウンドを降りる。奥川らしからぬ最後であったが、それでも試合後は「楽しかった」と笑顔で試合を振り返った。
「入学した時点でまさかここまで来られるとは思っていませんでした。この悔しさを糧に次のステージで活躍したいと思います」
試合後にはプロ志望を正式に表明し、プロでの活躍を誓った奥川。10月17日のドラフト会議がまた一段と楽しみになった。
(文=栗崎 祐太朗)