誉vs中京大中京
誉が愛工大名電に次いで中京大中京も下して、初の決勝進出
いよいよベスト4の激突。朝9時プレーボールだが、開始1時間以上も前から、スタンド周囲は開場を待つ人たちで取り囲まれていた。そして、応援団も黙々とスタンド入りの準備を進めている。いつもの高校野球の光景ではあるが準決勝。心なしかいつもよりもそれぞれに緊張感があるようにも感じられる。そしてグラウンドでは、選手たちがアップからランニングを始めているが、こちらはいつも以上にリラックスしようと心掛けているかのようでもあった。
準決勝という緊張の場を前に、そうした球場の光景も妙に心地いい。
さて試合は、初回の中京大中京がいきなり度肝を抜いた。1番の西村君が3球目を叩いて先頭打者本塁打を左中間に叩き込む。さらに3番中山君も2試合連続となるソロホーマーを右翼スタンド中段に運んでいった。たちまち2対0とした。
しかし、本塁打を浴びても誉の先発杉本君は慌てず、自分のぺースは崩していなかったので崩れることはなかった。そしてその裏、すぐに誉は反撃する。1番内田君が内野安打で出ると、バントで進み澤野君が二塁手と右翼手の間にポトリと落として、これがタイムリーとなり1点を返す。これで試合そのものも落ち着いていくことになった。
中京大中京は2、3、4回と安打は出るものの、追加点には至らなかった。
それに対して誉は4回、先頭の2番手塚君が内野失策で出塁するとバントと内野ゴロで三塁まで進み、林山君の中前打で同点とする。さらに死球で一二塁後、坂君の痛烈な右前打で二走を帰し逆転。なおも、杉本君の一打もポトリと左前に落ちて、これで4点目が入った。一気に誉が逆転した。
それでも、さすがに中京大中京はすぐに5回、西村君の左前打と四球、捕手悪送球などで無死一三塁。中山君の左前タイムリー打と内野ゴロで同点に追いつく。
こうして、再スタートという意識で6回以降に入っていくのだが、誉は6回からは左腕杉本君に代って、山口君となる。この大会含めて、ここまでこうした継投がメインだったというパターンだ。同点で後半まで来られたということで意識としては誉の方がやや勝っていたのかもしれない。
誉は7回、先頭の8番に入っていた山口君が左前打すると、バントで二進。子で中京大中京は先発の高橋宏斗君を降ろして2人目として松島君がマウンドに登るが、誉は内野ゴロで二死三塁とすると2番手塚君が左前へ運んで、結果的には決勝点を叩き出す。ファーストストライクに食らいついていった積極的な誉の積極的な攻撃が功を奏したとも言えよう。
中京大中京は、この1点を8回、9回と詰め切れなかった。ことに8回は、一死から3連打で満塁として1番西村君という絶好の反撃機だった。しかし、ここを誉の山口君が気力で抑えきった。
「大大金星ですね」と、満面の笑顔だった誉の矢幡真也監督。「初回に、2本の本塁打を浴びた時は、さすがにレベルが違うなと思っていました。ただ、ベンチに戻ってきた選手たちの顔を見たら、意外と平気なんですよね。だから、このまま我慢していたら、何とかなるかなとも思っていたら、意外にラッキーな形で1点返せたので、これで行けるかなという気持ちになれました」と振り返ってくれた。
結果的には思惑通りというか、思惑以上の形で逆転した誉。継投は、いつものパターンだというが、リリーフした山口君がしっかりと4イニングを抑えたことも大きかった。矢幡監督は中京大中京の高橋宏斗君に対しては、「とにかくしっかり見極めていこうということにして、一巡目は見逃しの三振もオッケーとして、スライダーを見極めていくのかということを徹底していった」と、そんな気持ちで向かわせたということを明かした。
いい形で先制した試合の入りを維持しきれなかった中京大中京。いささか悔やまれる敗戦ではあっただろうが、高橋源一郎監督は、「先発の杉本君が尻上がりによくなっていっていたが、もう一度捕まえかかったところで山口君になって、気合の入った投球を攻略しきれなかった」と悔いた。戦いとしては、先制後も必ずしも悪い形ではなかったはずだ。ただ、トーナメントとしては、やはりここというところで相手に対して決定的にダメージを与えていく攻撃を仕掛けていかないと、力としては優っていたとしても、やられてしまうということはよくあることである。そんなよくない形が、中京大中京京としては、一番大事な局面で出てしまった。
(文=手束 仁)