試合レポート

高知東vs高知高専

2019.07.24

高知東、選手権史上初「延長16回タイブレーク」で高知高専との死闘を制す!

高知東vs高知高専 | 高校野球ドットコム
既定の15回を188球7安打10奪三振6四死球失点1自責点1で投げぬいた高知東・島田 龍二(3年)

 試合開始13時48分・試合終了17時56分。
 
甲子園はもちろんのこと、地方大会も含め昨年から延長13回より導入された無死一・二塁からの「タイブレーク制」で夏の選手権史上最長イニングとなる延長16回4時間8分の死闘は、高知東島田 龍二(3年・174センチ91キロ・右投左打・高知市立城北中出身)、高知高専岩室 響(3年・180センチ80キロ・左投左打・室戸市立羽根中出身)両先発投手が持ち味を出し切ったことにより生み出された。

 最速138キロ右腕の高知東・島田は序盤をあえて抑え気味に入り、中盤以降「ボールが相手打線に捉えられはじめた」と悟ると腕を思い切り振る通常スタイルにギアチェンジ。味方が1点を勝ち越した10回裏に一死一・三塁から高知高専同点に追い付かれたものの、ここでは自己最速となる139キロをマーク。

 11回裏は無死満塁。タイブレークに入っても13回裏一死満塁、14回裏二死満塁、15回裏二死三塁と再三再四サヨナラ負けのピンチを背負っても気持ちで投げ切った15回188球・被安打7・10奪三振6四死球であった。
 対する岩室もこれも自己最速となる129キロのストレートを右打者インローへ投げ込む強心臓と、「延長からは今までで一番いいストレートが投げられていた」と本人も納得のボールを駆使し15回を投げ234球11四死
球と制球を乱しながらも4安打11奪三振。なお10回表の失点も一死二・三塁から高知東5番・門田 将弥(3年・左翼手兼投手・183センチ68キロ・右投右打・高知市立一宮中出身)を遊ゴロに仕留める間に失ったものであり、有効な当たりはほとんどなかった。

 かくして2人は高校野球特別規則のタイブレークに関する項22-6「タイブレーク開始後、15回を終了し決着していない場合にはそのまま試合を続行する。ただし、1人の投手が登板できるイニング数については15
イニングを限度とする」に倣い、16回以降のマウンドをチームメイトへ託すことに。試合は16回表に一挙7点を奪った高知東に凱歌が上がったが、岩室が「島田くんはすごいボールを投げていた」、島田も「岩室くんは疲れた中でもよく踏ん張っていた」と称えあった両投手の投げ合いは。責任を背負い1球1球に全身全霊を込める高校野球エースの原点、あるべき姿を改めて私たちに示してくれたと言ってよい。

(文=寺下 友徳

[page_break:試合後のインタビュー]

試合後のインタビュー

高知東・北岡 茂監督

 長いこと指導者をしていますが、こんなことはなかなかない。紙一重の試合でした。15回を超えて投げられないルールは選手のことを考えたらこうしないといけないと思います。2番手投手やルールの中で投手を育たなければいかない重要性を感じましたし、ウチは2番手(門田 将弥・3年)がよく投げてくれたと思います。

島田 龍二(3年)
右腕先発15回 188球・被安打7・奪三振10・四死球6・失点1・自責点1

 16回以降投げられないルールは知らなかったです。もし投げられるのならもちろん16回も行くつもりでした。今日は序盤は抑え気味に入りましたが、終盤には捉えられていたので、そこからは「腕を振るしかない」と全力投球しました。延長戦に入ってからは疲れもあったが「味方が点を取るまでは踏ん張らないと」と気力で投げました。

高知高専・長田 昌太郎監督
 難しい試合でした。ルールがなければ延長16回も岩室を投げさせていたが、そこはお互い様。16回に投げてもらったのは練習試合で少し投手をした3年生と1年生2人。本来は遊撃手の久武(洸嗣・3年主将)も投手ができるが、体力的に限界でした。これから先は4人くらいは投手を作らないといけないと思います。

岩室 響(3年)
左腕・先発15回 234球・被安打4・奪三振11・四死球11・失点3・自責点1

 延長戦を投げたのははじめてでしたが、今日のストレートは延長に入ってから、いままでで一番良いストレート。なので16回以降も投げたい気持ちは正直ありました。ルールとはいえ、もどかしい気持ちでしたし悔しかったです。

高知県高等学校野球連盟・山﨑 正明理事長

 両チームには14回を終えた時点で「2番手投手の肩を作ってほしい」と伝えました。15回を終えた時点でグラウンド整備もしたので、肩を作る一定の時間は取れたと思います。高知高専の岩室(響・3年)くんは200球を超えていたので、個人的には交代させてほしいと思っていました。ただ、試合展開上変えるのは難しい。15回を超えて登板できないルールはその意味でも適切だったと思う。
 対して高知東の島田(龍二・3年)くんは前半抑え気味だったことで、延長戦でもアウトローのストレートに力があった。延長14回裏二死満塁から見逃し三振に取ったストレートは、今日の投球を表していたと思います。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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