試合レポート

広島商vs広島工大高

2019.07.18

8回コールドで広島商が勝つ

 第101回全国高等学校野球選手権広島県大会は二回戦に突入。17日も各会場で二試合ないし三試合が行われ、広島県広島市西区にあるコカコーラウエスト球場でも一試合目に広島商業対広島工大高の試合があった。試合前には行列が出来るなど、広島県内の野球界を黎明期から支えてきた広島商業の人気は確かなものがある。特に今年は春の県大会で優勝し、六月に大阪桐蔭を迎えた招待試合にも参加し、県内でも一二を争う経験値を持っているとあって、期待が大きい。対して、工大高は去年の夏一回戦負け、春も緒戦で敗れている。そのリベンジを果たしたい。

 広島商業の最初のチャンスは二回、先頭の五番、左打者の花﨑成海(3年)がライト前に引っ張ると、六番副主将の山路祥都(3年)が広商野球の代名詞送りバントを成功させ、一死二塁。しかし、ここで広島工大高先発の中間壮史(3年)が意地を見せる。七番の杉山裕季(3年)をファーストライナーに打ち取る。八番の倉本裕翔(3年)にはまたライト前に持っていかれるが、九番の西森をしぶとくセカンドフライに打ち取ってピンチを脱出した。その頑張りにこたえたい広島工大高打線だが、広島商先発の倉本の制球力抜群の投球の前に、突破口を掴めない。

 すると、三回の表、広島商打線に途端に火がついた。先頭打者の一番天井一輝(3年)が鮮やかなセンター返しで出塁すると、二番の小兵北田勇翔(3年)が初球にきっちりと送りバントを決める。ここで打席に立つのは春まで北田のいた二番を務めていた水岡嶺(3年)。二球目の変化球の際に変化球と呼んだ天井が三盗でチャンスを拡大し、一死三塁。水岡はきわどいコースの変化球を見極め、五球目、甘く入ったストレートをはじき返して天井を生還させる。1対0。その後も四番で主将の真鍋駿(3年)がストレートをレフト前に、五番花崎も持ち前のパワーを生かした鋭い打球でショートを強襲する内野安打でチャンスを作るが、マウンドの中間もしぶとく後続を断った。

 先制された以上、追いつきたい広島工大高は四回、三番の川神風太(3年)が粘った末に一死からセンター前ヒットで出塁し、得点のとっかかりを掴む。広島商エースの倉本はコーナーを丹念につく投球をつづけるが、広島工大高打線はそれを見極め、とにかく早打ちをしないスタンスで対抗する。しかし、四番の主将谷口眞都(3年)は八球目を打ち上げ、セカンドフライ。五番山本凌平(3年)もピッチャーゴロで川神を得点圏に進められない。

 広島商は四回にも猛攻をかける。広島工大高のマウンドを守る中間は先頭杉山をライトフライ、倉本を三振に切って落とし、簡単に二死を取るが、ここからしぶといのも今年の広島商打線だ。九番西森颯大(3年)が、甘く入ったボールを強振し、それが左中間への二塁打。一番の天井も一塁線を破る二塁打の連続長打で一点を追加する。続けて先ほど送りバントを決めた北田が打席に入り、三球目を振りぬいてライト前に。結局二点を追加しての中押しに成功した。

 続けて七回にも広島商が仕掛ける。先頭打者の三番水岡がセンター返しで出塁すると、四番の真鍋が送りバントで一死二塁。すると五番に座り、随一の長打力を持つ花崎がこの試合三本目となるヒット。それも左中間を鋭く抜くライナーで長躯三塁を陥れ、四点目。広島工大高のエース中間もさすがに疲れ始めていたのだろう。六番の山路はなんとかショートゴロに打ち取るが、三塁ランナーの花崎を生還させてしまい、スコアボードに五点目が刻まれる。

 その後、代打の清水真翔(3年)が四球で出塁。代走新井泰輝(3年)が盗塁を試みると、守備連携が乱れたすきに三塁も陥れる。八番倉本が自分の援護をするのも自分とばかりにセンター前にヒットを放ち、新井が生還。六点目が入った。

 このままいけばコールドもあり得る展開だが、広島工大高も座して死ぬわけにはいかない。一矢報いたい打線だったが、四番谷口は高々としたショートフライ。五番の山本も初球を痛打したがセンターへのフライであっさり二死を取られる。打席に入るのは六番大道俊公(3年)。二球目を強振すると、センターを超える痛烈なライナーとなり、初の長打でチャンスを作る。しかし七番伊藤は初球攻撃を敢行するが、あえなくショートゴロとなり、倉本を崩せない。

 6対0となり余裕が生まれたのか広島商打線は洋々とフルスイングを続ける。八回はまたしても一番天井から。ファーストストライクをライト前にはじき返すと、俊足を生かして二塁まで行き、無死二塁のチャンスを作る。広島工大高はここで投手を中間から行森智紀(3年)に交代し、追加点を防ごうとする。ピンチに登板した行森だが、二番の小兵北田がいきなり出鼻をくじくライト前ヒットで無死一二塁。ここで迎えるのは今日猛打賞の三番水岡。一刻も早くペースをつかみたい行森が投じた初球を、水岡は冷静にスクイズし七点目が入る。コールドとなる七点目が。この回は結局六番山路が二死から三塁強襲のヒットで八点目を奪った。

 八回、どうにか反撃ののろしを上げたい広島工大高は先頭打者の代打熊本有希(3年)が粘って四球。しかし九番二岡広和(3年)がライトフライ。一番梶本周吾(3年)も三振に倒れ、二死一塁。広島商のマウンドには倉本をリリーフしている廣島智広(3年)。二番有井宏之輔(3年)が広島のストレートをライト前ヒットにし二死一塁二塁。三番川神もストレートの四球を選び、反撃のおぜん立てを整えた。緊張しているのか廣島はなかなかストライクが入らない。にわかにスタンドも活気だったが、四番の谷口は見逃し三振でゲームセット。8対0で終わってみれば広島商の快勝だった。

 今年の広島商の特徴として、近年にはないパワーを感じる。伝統の小技もさることながら、俊足ぞろいの選手を並べ、ちょっとしたミスも見逃さずに一つ先の塁を陥れる細やかさ。そこに主将の真鍋やパワーヒッターの花崎など、長打力のある選手がランナーを生還させる。2004年以来の夏の甲子園は夢ではなく、かなり現実味のある目標だと言っていいだろう。

(文:編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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