試合レポート

狭山ヶ丘vs鷲宮

2019.07.14

狭山ヶ丘が長打攻勢で鷲宮を一蹴

 強気な2年生バッテリーと、長打力が売りである狭山ヶ丘、粘りが身上の伝統校鷲宮との一戦、初戦ということもあり、堅い展開で進むかと思われたが、試合は意外な結末を迎えた。

 先発は狭山ヶ丘が2年生エースの清水竣介、一方の鷲宮は背番号11の吉田大騎(3年)で始まる。

 試合は初回から狭山ヶ丘打線が鷲宮・吉田に襲い掛かる。

 狭山ヶ丘は初回、吉田の立ち上がりを攻め立て、一死から2番・正高奏太(2年)、3番・小林澄風(3年)が連続四球を選び一死一、二塁とする。ここで続く和田啓佑(2年)が右中間へタイムリー二塁打を放ち、狭山ヶ丘が幸先良く2点を先制する。

 これで流れを掴んだ狭山ヶ丘は、2回表にもこの回先頭の石塚泰佑(3年)がレフト前ヒットを放つと、続く清水の犠打をピッチャーがファンブルし無死一、二塁とチャンスが広がる。さらに1番・長谷川稜輔(3年)の所でダブルスチールを決めると、結局長谷川も四球を選び無死満塁と追加点を奪う絶好のチャンスを迎える。だが、続く正高が併殺に倒れるなど後続が倒れ無得点に終わる。

 狭山ヶ丘は3回表にもこの回先頭の和田が死球で出塁すると、続く渡邉魁(3年)の所でディレードスチールを決める。結局渡邉も四球を選び無死一、二塁とすると、さらに相手のワイルドピッチで労せず走者を進め、無死二、三塁と再度追加点のチャンスを迎える。だが、後続が倒れまたしても得点を奪えない。

 これ以上追加点を奪えずズルズルといくと試合の流れが変わりかねない展開の中、迎えた4回表、狭山ケ丘はついに鷲宮・吉田を捉える。

 この回先頭の清水がショートへの内野安打で出塁すると、続く長谷川も三塁線を破る二塁打を放ち無死二、三塁とチャンスを広げる。ここで2番・正高もピッチャー強襲ヒットを放ち無死満塁とすると、続く小林澄がレフトスタンドへグランドスラムを叩き込む。6対0となりこれでほぼ試合の大勢は決した。

 だが、鷲宮ベンチはまだ吉田を続投させる。

 一気に決めてしまいたい狭山ヶ丘は、当然攻撃の手を緩めず、5回表にも一死から8番・石塚がレフト前ヒットを放つと、相手のワイルドピッチで一走・石塚は二進し一死二塁とする。ここで続く清水がレフト越えのタイムリー二塁打を放ち、7点差をつけ吉田をマウンドから引きずり降ろす。

 一方、狭山ヶ丘・清水の前に僅か2安打に抑えられていた鷲宮、コールドだけは避けたい中、6回裏反撃を開始する。


 一死から2番・福井駿(3年)がショートへの内野安打で出塁すると、続く根岸海成(3年)もレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とチャンスを広げる。二死後、5番・岩井菊次郎(3年)がセカンドへのタイムリー内野安打を放ち、鷲宮が一矢報いる。

 だが、ここまでであった。5回途中から好投していた2番手・伊藤謙仁(2年)が、8回表一死から1番・長谷川にソロ本塁打を浴び、再度7点差となり万事休す。

 投げては狭山ヶ丘・清水が、相手打線を8回途中1失点に抑える好投を見せる。

 結局、その裏の鷲宮の反撃を無得点に抑えた狭山ヶ丘が、8回コールド8対1で鷲宮を下し、初戦を突破した。

 まず、鷲宮だが、とにかくこの日は、与四死球も多く一向に立ち直る気配のない吉田をあまりにも引っ張り過ぎた印象を受けた。代えるタイミングは何回かあったように感じる。味方打線が沈黙していただけに、せっかちな人であれば、おそらく2回表の無死満塁を切り抜けた次の回、回の先頭から連続四死球を与えた場面で代えているであろう。ただこの回は彼に打席が回ってくるので、この回まで引っ張っているのかと思われたが、代打は出さなかった。

 次のタイミングは4回表、回の先頭から連打を浴びた所である。ちょうど3巡目を迎えた所であり、きっかけとしやすい所であったが、ここでも頑なに代えず、6点差となり手遅れになってしまった。もちろん、既に7点差付いており、あまりプレッシャーがかかりにくい状況ではあったが、皮肉にも昨秋、今春とエースナンバーを付けた2番手・伊藤は好投した。さらに、今夏エースナンバーの山﨑竣介(3年)も残っていただけにやや残念な結果であろう。

 一方の狭山ヶ丘だが、とにかく打線が好調だ。2回以降なかなか追加点が奪えず、やや嵌りかけたが、力で押し切った形となった。巧みに機動力を絡め、特に上位打線は強力だ。投げては2年生エース清水が、とにかく自信を持って投げている。強気なバッテリーを前にし、打者は攻め込まれる印象を受けるであろう。直球は目測でMAX130km前半ほどだが、この日の与四死球1と制球力がある。

 今春は県大会初戦で浦和実業に当たるという不運もあったが、その浦和実業戦でも清水は好投した。途中までリードしながら逆転を許し、僅か1点差での敗戦である。それにより今大会ノーシードとなり、悔やまれる部分もあるが、元々の地力はある。この試合で勢いに乗るようであれば、上位進出も見えてくるであろう。

(文=南 英博

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会
■開催期間:2019年7月10~7月28日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会埼玉大会】
■展望コラム【今年の埼玉は大混戦!シード校の戦力とシードを脅かすノーシードを徹底紹介!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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