試合レポート

明大中野八王子vs都立田無

2019.07.11

明大中野八王子、1年生・福本の左前安打で逆転サヨナラ! 田無の健闘も光る

 試合後、勝った明大中野八王子の椙原貴文監督は、ベンチに座ったまましばらく立ち上がれなかった。それくらい、力のこもった熱戦であった。

 試合は立ち上がりから、波乱含みであることを感じさせる展開になった。

 都立田無の1番。大東雅貴の二ゴロを、この試合先発に抜擢した1年生の須江陽海がエラー。2番・赤星海吏の投ゴロで二塁に進み、3番・西村信也の遊ゴロを、今度は経験豊富な熱田泰祐がエラーし、大東が還り都立田無が1点を先制する。試合が落ち着く前に無安打で失点した明大中野八王子浦田光であるが、都立田無の4番・竹内直飛が四球で一死一、二塁となり、6番・中原喜竜の右前安打でさらに1点を失う。

 2点のリードを許した明大中野八王子であるが、2回裏は二死三塁から8番・浦田の遊ゴロを、都立田無の遊撃手・赤星が一塁に悪送球をし、1点。3回裏は、3番・熱田の左前安打で同点に追いつく。ここからは、球威のある明大中野八王子の浦田と、遅い球を有効に使う都立田無の左腕・高橋咲多の投げ合いになった。

 均衡が破れたのが、6回表、都立田無の攻撃だった。一死二塁から6番・中原のレフト線ギリギリを破る二塁打で都立田無が1点を勝ち越す。ここで明大中野八王子は先発・浦田に代えて、下手投げの久木田斗馬を投入する。久木田に対し都立田無は、7番・濱田耀介の内野安打で一、三塁とし、8番・梅本健太はスクイズを敢行する。中原を本塁で刺されるも、残った一、二塁の走者がダブルスチールを成功させる。都立田無はこうした思い切りの良さが光った。そして9番・高橋の右前安打で2人が生還。好投の高橋自らがリードを広げる適時打を放った。

 リードを広げたことで、高橋の緩急をつけた投球がさらに冴えをみせた。ところが疲労からか、8回裏に急に乱れる。この回明大中野八王子は4番・花岡秀太が死球で出塁したが、5番・渡邊麟太郎の痛烈な打球が一塁走者に当たりアウトになる。ここまでは、都立田無にまだ流れがあったが、この後の3人が続けて四球になり押し出しで1点を返す。さらに9番・鶴見洋大の右犠飛で1点差に迫る。この後都立田無は遊撃手の赤星がマウンドに上がる。

 そして9回裏、左前安打の3番・熱田を4番・花岡が送り、打席には「最後まで勝てると信じていました」と語る主将の渡邊が入る。2ボールの後、渡邊が叩いた打球は左中間を破る三塁打となり、まず同点。三塁はやや危なかったが、渡邊はうまく滑り込んだ。続く、込戸翔の内野安打で一、三塁とし、打席には前の回に代走として出場していた1年生の福本真士。福本は1年生から出場しているが、スポーツ推薦で入ったわけではなく、普通に受験して入学した選手である。福本はうまくさばいて流し打ちした打球は左前安打となり、明大中野八王子が逆転のサヨナラ勝ちを収めた。

 苦戦した明大中野八王子であるが、最後勝ち切ったことは大きい。「まさに九死に一生。ものすごくいい勉強になりました」と椙原監督は言う。このチームは、秋は1次予選で敗れ、春も3回戦で東海大菅生に敗れ、ノーシードで夏を迎えた。「つらいこともありましたが、みんながいたからやって来れました」と渡邊主将は、ベンチに入れなかった部員も含め、3年生17人の絆の強さが支えになったという。厳しい試合を物にしたことで、勢いに乗れるか。次は明星多摩大聖ヶ丘の試合の勝者と対戦する。

 敗れた都立田無であるが、高橋の緩急をつけた粘りの投球と、攻撃の思い切りの良さは光るものがあった。高橋はまだ2年生。この経験を、新チームに生かしてほしい。

 

(文:大島 裕史

2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会西東京大会
■開催期間:2019年7月6~7月26日(予定)
■組み合わせ表【2019年 第101回全国高等学校野球選手権大会西東京大会】
■展望コラム【西東京を制すのは東海大菅生か日大三か?それとも新鋭が現るか?戦力を徹底分析!】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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