試合レポート

乙訓vs福知山成美

2019.05.04

福井のサヨナラ弾で乙訓が劇的勝利!

乙訓vs福知山成美 | 高校野球ドットコム
7回に逆転打を放って喜ぶ小橋翔大(福知山成美)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 昨春優勝校の乙訓とセンバツ出場校の福知山成美による注目の一戦。[stadium]峰山球場[/stadium]には多くの観衆が詰めかけ、熱戦の様子を見守っていた。

 前半は乙訓ペースで試合が進む。乙訓は1回裏、1番の田中純平(3年)が左中間への三塁打で出塁すると、続く2番・味田陽晴(2年)の右前適時打で1点を先制。さらに内野ゴロで一死三塁とすると、4番・中村志遠(3年)が犠飛を放ち、追加点を挙げる。

 続く2回にも二死満塁から3番・嘉門凌大(3年)の放った打球が前進するセンターのグラブを弾く適時二塁打となり、2点を追加。4回にも相手の失策から追加点を挙げ、4回終了時点で5点のリードを奪う。守りでも先発の林翔大(2年)が4回まで2安打に抑える好投を見せて福知山成美に流れを渡さない。

 この時点で乙訓の圧勝かと思われたが、そう考えていなかったのが乙訓の市川靖久監督だ。市川監督は「お前ら経験ないからどこかで絶対にひっくり返されるぞ」と選手に声をかけていたそうだが、それには根拠がある。

 昨年の春季大会準々決勝でセンバツ上がりの乙訓と当時の2年生レギュラーが多かった福知山成美が対戦した。この試合では福知山成美が初回に4点を先制したが、経験で上回る乙訓が終盤に逆転して6対4で勝利している。1年前と両校の立場が入れ替わり、試合展開も逆になることを市川監督は想定していたのだ。

 そして試合は市川監督の予想通りに福知山成美が反撃を始める。5回表に二死一、三塁から2番・人知憲蔵(2年)の中前適時打でまずは1点を返した。すると制球に苦しんでいたエースの小橋翔大(3年)が立ち直りを見せて、その裏の回を三者凡退に切って取る。


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8回に同点打を放った4番の中村志遠(乙訓)

 こうなると流れは一気に福知山成美へと傾く。6回表に二死一、二塁から8番・岡田健吾の左前適時打で3点差。続く7回表には二死二、三塁から6番・坂優斗(3年)の中前適時打で1点を返し、続く神内秦(3年)も右前適時打を放ち、1点差とする。続く岡田に四球を与えて満塁となったところで林は降板。市川監督は2番手に左腕の石倉浩大(3年)を送り出す。

 二死満塁と一打逆転の場面で打席に立つのは岡田とともにキャプテンを務める9番・小橋。小橋は2ボールからの3球目を振り抜くと、打球はセンターの頭上を走者一掃3点の適時三塁打となる。エースの一振りで試合をひっくり返し、逆に福知山成美が2点のリードを奪った。

 これでさらに福知山成美が畳みかけると思われたが、8回表に試合の流れを変えるプレーが起こる。二死二塁と追加点のチャンスで5番・井戸悠太(2年)の放った打球は綺麗なセンター返しとなり、二塁走者の人知は本塁へと突入した。しかし、ここでセンターの田中純が見事な送球を見せて本塁でタッチアウト。三塁側の乙訓応援席は大きく盛り上がり、もう一波乱を予感させた。

 するとその裏に乙訓は二死二、三塁のチャンスを作ると、4番・中村が2点左前適時打を放って同点。試合を振り出しに戻して最終回に突入した。

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サヨナラ本塁打を放ってガッツポーズを見せる福井裕太(乙訓)

 乙訓は9回から登板した3番手の斉藤俊(3年)が得点圏に走者を背負いながらもなんとか踏ん張り、味方にサヨナラ勝利を託す。9回裏、乙訓の先頭打者は6番の福井裕太(3年)。2ボール1ストライクから小橋が投じた内角高めのストレートを捉えると、打球はレフトスタンドに飛び込むサヨナラ本塁打となった。大熱戦を制した乙訓がサヨナラ勝ちで準々決勝進出。夏のシード権を獲得した。

 「レフトフライだと思いました。メッチャ興奮しています」と試合後も余韻が冷めやらぬ様子だった福井。本塁打は高校通算2本目で公式戦ではこれが初本塁打だったそうだ。

 乙訓は昨年のメンバーが全員3年生だったこともあり、新チームは0からのスタート。秋は経験不足を露呈したが、「精神面が成長した」(市川監督)と戦うごとに経験値を積んで逞しさがついてきた。センバツ出場校を倒した自信を武器にこれから真の強豪校への道を突き進めるか。

 福知山成美は5点のビハインドを逆転する意地を見せたが、最後に力尽きた。井本自宣監督は試合後半に足を攣る選手が何名か見受けられたことについて触れ、「体力のなさが歴然とした試合でした」と夏に向けての課題を示した。

 夏場の京都は30℃後半まで気温が上がる日も珍しくない。この日はここ数日に比べて気温が高かったことを考慮しても不安要素であることは否めないだろう。残り2ヶ月で夏を戦い抜くための準備をしていきたいところだ。

(文:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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