中部大一vs西尾東
前日大殊勲の中部大一、その勢いは衰えず快進撃は続きベスト8進出
先制打を放った9番の真鍋(中部大一)
前日、センバツ甲子園の優勝校・東邦を下した中部大一。中日の田島慎二を輩出していることで知られている。バスケットボール部は強豪で、全国でもトップレベルにランクされているが、野球部は県内でも中堅校からやや上という位置づけだったことは確かである。そんな中部大一が春の日本一に輝いた東邦を下したということで、一躍注目を浴びることとなった。もっとも、春季大会ということで言えば2015年の県大会にも優勝を果たしたという実績もある。
その中部大一に挑むのは、今の愛知県では最も甲子園に近い公立校とも言われている西尾東だ。記念大会だった昨夏の東愛知大会では豊川などを下して決勝進出。甲子園に手の届く位置にいることを確信した。そして秋も、ベスト4に進出して東邦に敗退した。さらに3位決定戦では中部大春日丘と20対23という史上まれに見る大乱戦で敗退して東海大会進出を逃している。それだけに、今大会の組み合わせ段階で、一つ勝って東邦と当りたいという思いは強かったであろう。「組み合わせが決まった時は、もちろん東邦さんのことは意識しました」と寺澤康明監督もはっきりと言う。ところが、その東邦が破れたことで中部大一との対戦となったのだ。
東邦を下した勢いに乗る中部大一は、西尾東の山田君がいささか力んだか制球にバラつきがあるところを突いて2回、四死球に暴投神谷隆登君の安打などで二死満塁。ここで9番真鍋君が一二塁間を破って先制。さらに満塁が続いて、山岸君が中前へ2点タイムリー打を放ってこの回3点。西尾東は、4回途中で先発山田君がマウンドを降り、橋本君がリリーフすることとなった。
こうして試合の主導権は中部大一が握ることとなった。
中部大一の先発は前日に東邦を1点に抑えた磯貝和賢君ではなく、左腕の背番号10の岡本君だ。岡本君は変化球を巧みに使い分けながら、交わしていくタイプだ。
中部大一は4回にも神谷君と山岸君のそれぞれ左翼線、右翼線を破る二塁打で追加点を挙げた。
リリーフで好投を見せた磯貝君
何とか岡本君を攻略したい西尾東は4回、先頭の加藤君、大谷君と連打してバントで進めると、越山君の中犠飛で1点を返した。
反撃ムードとなった西尾東。5回の中部大一の攻撃をあっさりと3人で抑えると、その裏四死球で二死一二塁として、岡本君を降ろして磯貝君を引っ張り出させた。中部大一の佐藤吉哉監督も、西尾東の4番加藤健輔君に対して、「ここが勝負どころになる」と見極めての決断だった。結果的には磯貝君が投げ勝って加藤君を三振に抑えた。この対決は、1球1球に見ごたえのある勝負ではあった。
以降は西尾東の橋本君と磯貝君の投げ合いという様相になってきて、やや試合も膠着しかかっていたが、8回中部大一がわずかなスキを突いて1点を追加した。一死から4番加藤竜之介君が左中間二塁打すると、内野ゴロの間に三塁へ進み、山田君の一打は深い内野ゴロでこれが送球ミスを誘って5点目が入った。さらに中部大一は9回にもダメ押しとも言える1点を鈴木暁斗君が中前タイムリー打して追加する。
中部大一の佐藤吉哉監督は、「今年のチームは、ホームランを打つような選手がいて破壊力があるというのではないですけれども、昨日の東邦戦もそうでしたけれども、しっかりと守れるチームになっています。プレッシャーでエラーもありますけれども、それで崩れないですから、それが大きいと思います」と、このチームの特徴を語ってくれた。「この大会では、新しい一面もいろいろ見られます」と、チームの成長を感じていた。
西尾東の寺澤康明監督は、「試合の途中で、今日はちょっと勝てる雰囲気が感じられないなと思っていました。山田は、このところ調子がよくないんですよ。ちょっとフォームそのものが乱れてきています。ただ、この大会を通じて橋本が成長してきて試合を作れるようになったのは収穫です。やはり、夏を見据えて山田一人というのでは心配ですから、これはチームの厚みにもなった」と、敗戦の中にも、夏へ向けての価値を見出していた。
(文・写真=手束 仁)