試合レポート

東海大相模vs日大藤沢

2019.04.14

好投手・重富を攻略した東海大相模!2015年を思い出させる強打と対応力

東海大相模vs日大藤沢 | 高校野球ドットコム
先発・武富陸(日大藤沢)

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 強打の東海大相模は対応力、迫力含めて全国トップクラスと印象付けた試合だった。東海大相模は地区予選で放った本塁打は11本。ほぼ毎試合、当たり前のように本塁打を放った長打力は好投手相手にも発揮するのか?

 対する日大藤沢は昨年から活躍をしてきた好左腕・武富陸がいる。東海大相模の実力を測るには絶好の相手だ。

 まず日大藤沢の先発マウンドに登った姫木 陸斗(ひめき)だ。跳躍力があり、体にバネがありそうな投手で、マウンドの傾斜をうまく使って角度良く振り下ろす本格派左腕。常時130キロ~133キロは回転数が高く、手元でもしっかりと伸びるストレート。早くマウンドに降りてしまったので、あまり測れなかったが、立ち上がりより勢いのあるストレートはあったので、135キロ前後のストレートを投げていても不思議ではない。姫木は気持ちが強く、全面に出して抑える投球スタイルだ。

 降板後、センターを守ったが、脚力があるので、守備範囲も広い。常にフルスイングを心がける打撃はまだコンタクト力が足りず、ほとんどが詰まり気味。速球、変化球に対してどうアプローチをしていくのか?学んでほしいことはいろいろあるが、ポテンシャルは非常に高く、楽しみな選手であることは間違いない。

 1回表、2奪三振に抑えた姫木を援護しようと打線は1回裏、東海大相模の先発・野口を攻める。一死一塁から3番牧原巧汰が右前安打を放ち、一死一、三塁のチャンスを広げ、その後、満塁から3番姫木が詰まりながら中前適時打を放ち、1点を先制。さらに内野安打の間に1点を追加する。

 だが、東海大相模は2回表、一死三塁のチャンスから8番河邉壮太の犠飛で1点を返し、3回表から武富が登板。武富は1年前よりもかなり成長を見せていた。ノーワインドアップから始動し、右足を高々を上げてから、徐々に重心を下げていき、インステップ気味に着地を行う。テークバックはコンパクトで、左ひじをしっかりと上げて、胸を張ることができている。そこから左腕を振り下ろすオーバーハンド。常時133キロ~138キロを計測し、最速142キロ。回転数が高いストレートに加え、120キロ台の横スライダー、120キロ後半で打者の手元で鋭く落ちるスラッター、100キロ台のカーブを投げる。特にスラッターの切れ味は鋭く、東海大相模の打者も思わず空振りをしてしまうほどの切れ味がある。

 ただこの男は違った。4番・山村 崇嘉は高めに浮いた136キロのストレートを逃さず、打った瞬間、本塁打と分かる当たりで、ライトスタンドへ持っていく高校通算30号本塁打は逆転2ランとなり試合をひっくり返す。本塁打を打つまでの過程が素晴らしく、力のあるストレートをファールにしたり、スライダーを見極めたりと、徐々に苦しめた上で甘いボールをパンチショットするという満点の打撃内容だった。高校2年生ができる芸当ではない。

 だが、武富も切り替えて、130キロ後半のストレート、スラッターを出し惜しみすることなく、低めに集め、東海大相模打線を打たせて取っていく。

 そして5回裏、日大藤沢も粘る。2番菅波靖哉が四球で出塁すると、菅波は盗塁を仕掛け、暴投の間に三塁へ。3番・牧原はライト線を破る適時二塁打で同点に追いつく。牧原は攻守ともに楽しみな逸材だ。スクエアスタンスで両ひざを曲げて構えて、インサイドアウトでボールを捉えることができる選手で、適時打を打つ前はホームラン性のファールもあった。

 注目してほしいのは1.9秒~2.0秒のスローイング。セカンドベースへ鋭角に投げることができる。フットワークも軽快で、内野手もできそうなほど足の運びが軽い。日大藤沢の捕手といえば、大型な捕手が多いイメージだが、好打者でセンス型の強肩捕手はなかなかいない。まだ2年生ということでぜひ注目していきたい選手だった。


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本塁打を放った山村(東海大相模)

 3対3で折り返し、6回表、東海大相模は敵失で勝ち越し。ここから東海大相模はじわりじわりと追い詰める。必死の力投をみせていた武富だが、平均球速は130キロ前半まで落ち、自慢のスラッターもひざ元ではなく、ベルトゾーンに落ちるようになり、東海大相模打線もアウトになりながらも良い当たりといつ捉えていてもおかしくない雰囲気だった。

 そして8回表、クリーンナップを迎えた8回表に仕掛けた。3番・井上 恵輔が甘く入ったスライダーを逃さず左中間を破る二塁打を放つ。井上はこの1年で攻守にスキがなくなってきた。スクエアスタンスでゆったりと構え、トップをとっていくのだが、井上の場合、捻りが小さく、すぐに振り出しに入ることができる。それでいて腰を鋭く回転させて、手打ち感が全くない。

 守備でも安定感が出てきて、スローイングも1.90秒前後まで速くなり、セカンドベースへ突き刺すような球筋が多くなった。

 無死二塁から4番・山村はスライダーを合わせて右前適時打。ただ豪快な打撃だけではなく、こういう軽打でダメ押しの適時打を打たれるのは、バッテリーにとって痛いものだ。この試合を決める大きな一打となった。

 

 強打、軽打の打ち分けができるのは、本人の状況判断能力もあるが、技術的なことをいえば力みのない構えからボールを待つことができて、余計な捻りもなく、軸のブレも小さい打撃フォームをしているから。高校2年生にしてこの完成度、幅の広さは突き抜けている。2018年ドラフト1位野手の2年生時より明らかに超えているだろう。

 さらに東海大相模は二死三塁から金城飛龍が高めに入ったスライダーを逃さずレフトを破る二塁打を放つ。金城は歩幅を狭めて、腰をくるっと回転させる打撃フォーム。以前よりはよくなったのは目線の位置がずれずにボールを捉えることができるようになったこと。右肩が下がりすぎて、ヘッドが下がったスイングで打ちあげる打球が多かったがだいぶスムーズになった。

 東海大相模は多くの打者が成長を見せている。


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本塁打を放った西川(東海大相模)

 そして9回表、2番に入った西川 僚祐が高校通算31号となる場外本塁打でさらに1点を追加した。この本塁打もすさまじいものがあり、外角球を巻き込んで、鈍く、大きい金属音を響かせて、とてつもない打球速度ではるか遠くへ飛ばすワンシーンは、岡本和真(巨人)の打撃をみている錯覚に陥った。西川は並みの高校生打者と違って、余計な捻りもなく、手打ちのような打ち方もない。この1年でだいぶ洗練された打撃フォームとなった。ここから調子を上げていくことを期待したい。

 ここまで野手の成長をたたえたレポートとなったが、東海大相模の投手陣も紹介したい。

 8回途中まで好投を見せた野口裕斗は昨年と比べて平均球速が上がり、常時135キロ前後の速球は力強さを感じ、120キロ台の縦スライダーの落差も十分。立ち上がり2点を取られても、しっかりと修正し、高めで攻めたり、コーナーで攻めたり、変化球をひざ元に投げたりと、完成度の高いピッチングを見せてくれた。

 8回途中からマウンドに登ったのは背番号1の紫藤 大輝。紫藤も昨秋と比べるとだいぶボールに強さが増した。テークバックを取って、リリースに入るまでの動きがスムーズで、腕の振りも強くなり、常時135キロ前後のストレートは両サイドに投げ分けるだけではなく、125キロ前後のカットボール、120キロ前後のチェンジアップ、ツーシーム、100キロ前後のカーブと、球種も多彩。しかも変化球は打者の手元で変化するので、判別がしにくい。紫藤は1.2回を投げて4奪三振と素晴らしいピッチングを見せ、東海大相模がベスト8進出を決めた。

 好投手・重富を攻略し、じわりじわりと追い詰めた打撃、相手のスキをついて一気に突いた走塁、そして投手も着実に球速が伸びており、一冬の間に計画的に強化してきたことが伺える。

 全国制覇を果たした2015年のチームと比べると、攻撃面に関しては負けないポテンシャル、対応力の広さ、きめ細かさを持ったチームになってきたといえるだろう。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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