都立城東vs都立紅葉川
下町対決は、元気のいい紅葉川が勢いで昨秋ベスト8の城東を下す
ダメ押しともいえる殊勲の三塁打を放った紅葉川・齋藤大陽君
春季東京都大会は、この日からは早くも2回戦となる。昨秋の大会でベスト16以上に残ったシード校も登場する。都立城東は、昨秋大会では早大学院、正則学園、足立新田を下してベスト8に進出している実力校だ。
その都立城東に挑む形になった紅葉川はこの春はブロック予選から通算して公式戦4試合目である。率いる田川監督は都立城東のすぐ近くのマンションに居住している。言うならば、都立城東の近隣住民でもある。一方、都立城東を率いるのは2001年に甲子園出場を果たした時の4番打者だった内田稔監督だ。明治大から順天堂大大学院を経て教員となり都立高島~都立足立東から母校を指導することとなった。
昨秋の実績から見ても都立城東の方がやや力が上かなとも思われていた。試合そのものの入りとしても都立城東主導で進んでいった。2回に都立城東は一死一塁で8番今井君が右越三塁打して先制。3回にも2番兼松君が右中間へ二塁打すると内野ゴロで三塁へ進む。そして、暴投で生還して2点目。ここまでは都立城東の流れだった。しかし、リードを奪われても紅葉川のペンチは元気がいい。
3回までは無安打だった紅葉川だが4回、一死で四球の齊藤大陽君が暴投で二塁へ進むと、4番込山君がチーム初ヒットを中前へ放ちこれがタイムリー打となって1点差。勢いづいた紅葉川は5回にも7番菅澤君が内野安打で出ると暴投で二塁へ進み、二死後都立城東の守りに内野と外野にそれぞれ痛い失策が出てしまい紅葉川が逆転する。さらに3番齋藤大陽君もタイムリー打でこの回3点。これで試合の流れはすっかり紅葉川に傾いていった。そして、こうなると紅葉川の田河監督が触発していく乗りいい野球は勢いを増していく。
7回にも紅葉川は1番からの好打順で櫻井君が安打で出るとすかさず二塁盗塁。二死後込山君が右翼へポトリと落として5点目。さらに2点を返されて1点差とされた8回も、二死一三塁から2番和田君が中前打。続く齊藤大陽君は右中間へ運ぶ三塁打でとどめとも言える2点を追加した。そして、9回の都立城東の反撃も砂川君が代打松下君の三塁打での1点のみに抑えて投げ切った。
この3月で東京都の教員という立場は定年退職となり、その後は立場としては外部指導員という形で、今年の夏の大会までという期限付きで指導していくこととなっている田河監督。「よく勝てましたね」と素直に喜びを表した。そして、「ずっと高校野球の監督やってきて、今年のチームは強いなと思った時に公式戦で都立城東と当って、日比谷の時も、紅葉川に来てからも、やられているんですよね。初めて公式戦で都立城東に勝てましたから…。(定年で降りようと思ったけれども)余分にやることになって、よかったかなぁと思っていますよ」と、終始笑顔だった。その後はこの4月に片倉から異動して来た都立城東出身の高橋勇士助監督が引き継ぐこととなっている。高橋助監督は都立城東の出身で、都立城東の内田監督の少し上の世代となる。
田河監督は、勝因としては、「カッコよくはないかもしれないけれども、がっちりとよく守りましたよね。打撃はある程度鍛えてきたんですけれども、今日は守りの勝利です」と守りきれたことを評価していた。
逆に二つのタイムリーエラーが致命傷となってしまった都立城東。内田監督は渋い表情のままで、「う~~ん、ノーコメントです。点の取り方もそうですが、ウチのやるべき野球ではなかった。自分も含めて反省材料は多く見つかりました」と言葉少なだった。
(取材=手束 仁)