半田工vs半田商
兄弟対決とも言える半田市内の実業校対決は半田工が制す
3安打4盗塁、3得点と活躍した半田工・小西悠介君
かつては母体が半田商工という時代があって、同じ学校だった両校。そういう意味では、兄弟対決とも言える半田市内の実業校対決である。歴史的には半田商は、長谷川良平元広島カープ監督や、ロッテで新人王を獲得した三井雅晴投手を輩出したという実績もある半田商。昭和の愛知県の高校野球の中では強豪という位置づけも示していた半田商だが、平成も終わりを告げようとしている現在は、部員確保も厳しい状況になっているというのが現実のようだ。
また、半田工も現在は新3年生が24人いるものの、新2年生はわずか6人。このままいけば、新入生を何人かきっちりと確保していかないと、秋季大会はチームとしての出場も危うくなるというのが現実である。
敢えて中学生を勧誘しないということを信念としている半田工の稲生誠司監督。「来てくれた選手たちだけで、チームを作っていく。それでどう戦っていかれるのか」ということを大前提としている。しかし、「私学の無償化や推薦枠が下がってきたことで、我々のような実業校としては(野球部として存続させていくことそのものが)本当に厳しい状況になっている」と現状を嘆いている。
とは言いながらも、この春に向けてきっちりとチームを作ってきたのは見事である。
半田工で光ったのは、捕手で3番に入っている小西君だった。1、3、5回と奇数回に回ってきた打順でことごとく安打で出るとすぐに二塁盗塁を決めていく。初回は5番佐伯君の中前打、3回は三盗も決めて失策で生還。5回は内野ゴロで三塁に進むと、佐伯君のスクイズで3点目のホームを踏んだ。ここまで、小西君が半田工のすべてのホームを踏んだということになって3対0とリードした。
そして7回の半田工は二死からの連続押し出しを得て、なおも満塁という場面。ここで9番中島君の打球は右翼線にポトリと落ちて2者が帰ってこの回都合4点となった。
その裏を0に抑えたらコールドゲームという状況で、稲生監督はここまで4安打0点に抑えていた三浦君を外野に回して、先の東浦戦で立ち上がりに失点したという山下寛太君を投入。山下君は、2者に四球を与えて厳しい状況を作ってしまったものの、その後はしつかりと押さえて何とかスッキリとしたコールドゲームを成立させた。山下君は、先の試合では投球のタイミングを狂わせていたということだが、この日は入りで二人に四球を与えながらも、その後きっちり抑えていかれたことで自信になっていくのではないだろうか。
飄々として6イニングを投げて0とした先発の三浦君は、大きく曲がるタテのカーブなど、変化球も効果的で、打ち気にはやる相手打線を上手にかわしていた。決して球威があるというタイプではないが、巧みに打たせていく投球の上手さもあった。5回の一死一三塁という場面でも、スクイズを外して空振りを取り三塁走者を刺すなど、終始冷静な投球だった。
(文・写真=手束 仁)