前橋育英vs作新学院
前橋育英の梶塚が熟練したピッチングで7安打完封!
完封勝利の梶塚(前橋育英)
前橋育英と作新学院と北関東を代表する強豪校同士の一戦は、両チームのエースが持ち味を発揮し、1点を争う好勝負となった。
前橋育英の先発・梶塚 彪雅は前橋育英のエースらしい狙い球を絞らせない完成度の高いピッチング、1.00秒~1.10秒前後の高速クイック、フィールディングが完成された右投手。左肩の開きが抑えられた右のスリークォーターから投げ込む直球は130キロ~135キロ程度と突出した球速はない。ただ内外角、高低に自在に投げ分けができて、スライダー、カーブも低めに集める。梶塚の投球で特徴的なのはテンポの速さ。走者がいないときはキャッチャーからボールを受け取って4秒~6秒で投球動作に入 るので あ、考える暇を与えさせない。結果的にボールは変哲もないのだが、作新学院は狙い球を絞り切れない状況となるので、早打ちが多くなり、早く回が終わる。
一方、作新学院の先発の林 勇成(作新学院)は、左腕を高く掲げて、真っ向から振り下ろす右のオーバーハンド。この投げ方をすると、リリースポイントが安定しない傾向があり、制球にはばらつきがある。コーナーへ自在に投げ分ける制球力はない。ただ、今日の林は右打者、左打者問わず内角直球と一点集中のピッチング。常時130キロ~135キロ前後の速球には威力があり、1回裏は二死三塁のピンチから4番森脇を内角直球で追い込み、高めのストレートで空振り三振に奪うなど力が入ったピッチング。これに味を占めたのか、2回裏も内角ストレートを主体にアウトはすべて三振と、2回まで4奪三振。
前橋育英は県大会でも強打で勝ち上がってきたチームだが、その打線相手に空振りを奪える林のストレート。130キロ中盤だが、この球質のまま140キロ中盤まで早くなっていけばもっと見栄えする投手だ。
林は110キロ台のスライダー、100キロを割るカーブを投げていたが、4回裏に甘く入ったところを連打され、一、二塁のピンチを迎えてからはストレート主体のピッチングに転換。今日の試合はストレート主体のピッチングがはまり、走者を出しながらも、打たせて取っていく。リスクのある配球ではなるが、変に変化球を投げて。小細工するよりも、力のあるストレートを投げた方が打ち取ることができる。参考になる配球であった。
試合が動いたのは6回裏。前橋育英は3番剣持がライトスタンドへ飛び込む大会第1号本塁打を放ち、先制した。剣持はさらにレフト方向にも二塁打を放っており、無駄のないスイング軌道から広角に打ち分ける巧打のセカンドだ。
前橋育英の梶塚は7被安打を打たれ、さらに7回表には打球が体に直撃するアクシデントに屈することなく投げ続け、完封勝利。準々決勝進出を決めた。
前橋育英のエースは伝統的に精神力の強さがある。エースの力投にバックの守備が応えてくれた。11安打を打ったものの、1得点に終わったのは反省材料だが、打球内容を見ていてもよいので、準々決勝では勝負所で一打を見せてくれるかもしれない。
(文・=河嶋 宗一)