試合レポート

東海大菅生vs東京成徳大高

2018.10.06

逆方向への鋭い打球は確かな自己分析から。東海大菅生が20得点で圧倒!

東海大菅生vs東京成徳大高 | 高校野球ドットコム
1番を打つ石田(東海大菅生)

 東海大菅生東京成徳大高との初戦を迎えた。試合は東海大菅生が自慢の強打を存分に発揮した試合となった。

 まず1回裏、一死二塁から3番小山 翔暉(2年)のレフトへの二塁打で1点を先制。さらに4番杉崎 成(1年)も変化球を強引に引っ張り、レフトへ二塁打を放ち、2点を先制した。

 しかし東京成徳大高は2回表、無死二、三塁から7番東野 一志(2年)の痛烈な二ゴロで1点を返し、8番古池 克圭(2年)の三ゴロの間に1点を返し、同点に。ここまでよい勝負に見えたが、2回裏、東海大菅生打線が爆発。一死二、三塁から1番石田 隆成(2年)がスライダーをとらえ左中間を破る三塁打で勝ち越しに成功。その後、 打者12人の攻めで、計8得点の猛攻。3回裏にも打者10人の攻めで、6得点。4回裏にも4得点を入れ、計20得点。

 東海大菅生の先発・藤井翔(1年)は、右スリークォーターから常時120キロ後半~133キロの直球、スライダー、カーブをコーナーに投げ分け、2失点の力投で東海大菅生が5回コールド発進を決めた。

 東海大菅生は打撃内容が抜けている。東京成徳大高の先発・福本 光希(2年)は120キロ~125キロ前後の速球、110キロ台のスライダーを投げ分ける左腕で、都内では平均レベルの実力を持った左腕。東海大菅生ほどのチームでは無ければそれなりの試合が作れそうな投手だが、福本から3回途中まで11安打15得点をとってしまう打撃は脅威である。

 何より光ったのは逆方向。逆方向に軽々と長打を打つのである。若林監督は「相手は左投手が先発でしたから、右打者はライトに、左打者はレフトを狙わせるよう指示しました」というが、だが逆方向へ長打は簡単に打てるものではない。何かヒントがあるのか?というと、逆方向に三塁打を打った石田主将がそのコツを語ってくれた。

「自分も逆方向というと最初は合わせる意識だったんですけど、なかなか強い打球を打てませんでした。だから、逆方向へ引っ張る意識ですね。基本的にセンター方向を打つことを意識しているのですが、少しタイミングが遅れると左中間に飛びます」


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杉崎成(東海大菅生)

 技術的に意識していることは、右腰。右腰でうまくロックして、そこから一気に左腰を回して鋭いスイングを生み出しているという。その高度な技術が実現できている理由は日ごろの筋力トレーニングのたまものだ。
「ずっと上半身ではなく、下半身を強化してきたので、それが強い打球を打てると思います」
明確に説明する石田の姿を見ると頼もしさを感じる。石田に限らず、東海大菅生の選手たちは自分の打撃技術をしっかりと解説できる選手が多い。
先制打を含む3打数2安打2打点の活躍を見せた高校通算15本塁打の強打の捕手・小山 翔暉(2年)。侍U-15代表を経験し、この夏も強打の捕手として活躍したが、小山の場合、体をひねり、フルスイングをさせることを意識している。
「僕の場合、体をひねり、しっかりと腰で回転を与えてボールをぶつけるスイングをしています」
 自己分析ができる。またこれまでの活躍は先輩スラッガー・片山昂星の影響も大きかったようだ。
「片山さんは自分ではわからないところを指摘してくれる。素晴らしい先輩でした」
夏から当然のごとく活躍を見せているが、自分の打撃内容には満足していない。他の選手と比べるとジャストミートした打撃はなかった。
「今日はうまくボールが見えていなかったので、次の試合へ向けてしっかりと修正をしていきたいと思います。」
そして最速1.8秒台を誇るスローイングも2.00秒台にとどまった。
「もっと上がってきますよ」と話す若林監督の期待に応えることができるか。


 

 1年秋の時点で高校通算20本塁打を放っている杉崎 成(1年)も2打数2安打2打点の活躍。とにかく打球の速さが尋常ではない。第1打席は痛烈な左二塁打。第3打席は左前適時打と、いずれも打球が速かった。

 杉崎の構えは特徴的だ。捕手よりでベースから少し離れてオープンスタンスで構える。この意図について詳しく解説をしてくれた。
「僕の場合、体が硬いというのもあるんですけど、普通に構えると、うまく体が回転しないんです。うまく腰を回転させるためにどういう構えをすればいいかを考えた結果、今の構えになりました」
また、この構えは引っ張りに適した構えとなっており、外角球でも巻き込んで鋭い打球が打てるという。もちろん右方向へ強い打球を打ちたい欲求はある。だが、今は自分の体の構造にあった構えで勝負するつもりだ。
 愛知西シニア時代は28本塁打。自信をもって入学したものの、2歳上の片山昂星の打撃に衝撃を受け、よりレベルアップをしないといけないと実感した。

 「片山さんは軽々と上段に運ぶし、逆方向でもこすった当たりでも本塁打にできるんです。この人を見て、より頑張ろうと思いました」
打撃フォームに微調整を加え、「より弾道が高い本塁打が打てるようになった」と手ごたえをつかんだ杉崎は9月に行われた東海大甲府との練習試合で2打席連続本塁打で、20本に到達した。ライバルは東海大相模西川 僚祐(1年)だ。
「たぶん、西川君は相手にしていないと思いますけど(笑)でも負けないよう頑張りたい」と意気込む。

 こうしてみると各選手の技量は非常に高い。キレの良さで攻守はつらつとしたプレーを見せる1番石田、攻守にバランスが取れたセンター・今江 康介(2年)。田中幹也(3年)に比較されながらも、守備範囲の広さと確実性が高い遊撃守備で信頼をつかんでいる成瀬 脩人(2年)と野手の人材は豊富だ。

 伝統の守備力、そして強化している走塁にも磨きがかかった。最も意識するのは3回戦で対戦するであろう二松学舎大附。第一関門を突破し、2014年以来の東京制覇を目指していく。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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