試合レポート

県立岐阜商vs岐阜

2018.09.23

岐阜の早慶戦は、県岐商が岐阜を辛くも交わしてベスト4進出

県立岐阜商vs岐阜 | 高校野球ドットコム
準々決勝を突破した県立岐阜商の試合前の一瞬

 岐阜県の高校野球を作り上げてきた名門校同士の対決と言っていいカードである。歴史的にも、その地域を代表する旧制中学と商業学校ということでもある。岐阜の早慶戦と称する人もいるくらいである。現実に岐阜の北川英治監督は慶應義塾大出身、県岐阜商の鍛治舎巧監督は早稲田大出身でもある。ただし、ユニフォームのデザインに関して言えば岐阜の方がワセダっぽい。

 さらに言えば、県岐商の鍛治舎監督は今春から就任したが、熊本の秀岳館を3季連続で甲子園ベスト4に導いた名将である。県岐商OBでもあり早稲田大で活躍した後は社会人野球の松下電器(現パナソニック)でプレーし都市対抗野球にも出場して監督も務めた。社会人野球の現場を退いた後には、会社では役員として会社経営を支える一方で少年野球チームの枚方ボーイズでも指導していた。さらにはNHKの高校野球解説者としても、多くの高校野球ファンに親しまれていた人物である。それだけに、岐阜県内の高校野球はやはり県岐商の動向は大いに注目されるところではある。

 これに対して岐阜も、県を代表する進学校であると共に野球でも戦後の一時代は県岐商と競い合う存在でもあり、甲子園での準優勝という実績もある。80年代に西武ライオンズの黄金時代を築いた森祇晶監督も岐阜の出身者である。

 そんな伝統校同士の対決だけに、注目度の高い試合となった。

 試合は、投手戦というかロースコアの戦いとなっていった。少ないチャンスをどう生かしていくか、そこに活路を見出していくという戦いになった。また、投手も岐阜が4人、県岐阜商が3人とお互いに可能な限りで、相手の目先を交わしていっていた。鍛治舎監督は、「継投は当初からの予定通りで、3回ずつを任せていくという考え方で、延長に入ったとしても、次を考えていた」とさすがに名将、じっくりと試合展開を見ていた。

 一方、岐阜の北川監督は、「投手としては6人まで用意していたので、緩い球でどうやって交わしていくかということも考えていましたし、細かくつないで活路を見出したかった」という考えだったが、投手陣に関してはそんな思惑に近い戦いは出来ていたのではないだろうか。

 ただ、岐阜としてはあまりにも打てなさ過ぎた。「朝も練習をしてきて、調子は悪くはなかったので、もっと打てると思った」と言うが、松井君を想定した速いボールに対しての対処を徹底してきたというが、それだけにむしろ、県岐阜商が抑えとして3人目でエースナンバーの松井君を投入してきてからの方が、当たりそのものとしてはよくなってきていた。



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惜しくも敗退した岐阜の試合前の様子

 2回に県岐商は四球の走者を併殺でなくして二死から6番森亮太君が中前打すると暴投で二塁へ進む。続く栗本君が左翼へポトリと落として、これで二塁から森亮太君が帰った。3回に、岐阜は2番手として左腕久保田君を送り出す。久保田君は3イニングをしっかりと抑える。そして6回からは3人目の徳永君へとつないだ。県岐商も当初の予定通りに4回からは三塁手の佐々木君をマウンドに送りです。佐々木君は球の力もあり、制球もよく、鍛治舎監督としては投打に期待を込めている選手でもある。

 試合もやや膠着気味となってきたところだったが、岐阜は6回に9番の神戸君が左中間へ運ぶ二塁打を放つがこれが初安打だった。7回、県岐商は予定通りに3人目の松井君を送り出したが、岐阜打線は松井君をイメージして練習してきたというだけに、ここから捉え始めた。先頭の2番岡田君が左前打すると、失策もあって一死一二塁。5番仙石君が左前打してスタートのよかった二塁走者岡田君が同点のホームイン。さらに死球もあって二死ながら満塁となった。ここで、投手として入っていた徳永君に回ったのだが、松井君が投げ勝った。この場面に関して北川監督は、「ワンチャンスでしたけれども、あそこで一本打って逆転するしかなかった」と振り返る。

 同点とされた県岐商はその裏すぐに、4番小笠原君が左前打で出ると、鍛治舎監督はここが勝負と代走服部君を送り出す。北島君がバントで送って一死二塁というところで、森亮太君が左中間を破る二塁打で服部君を帰す。これが決勝点となった。

 苦しんだ試合だったが鍛治舎監督は、「公式戦は結果が全てです。こうした接戦を勝って行くということで、また、選手たちは自信も得られていきます。まだまだゲーム慣れしていないのですがこうした経験が成長させてくれると思います」と秋の戦い方を語ってくれた。

 1点差負けが悔しい岐阜は、「崩せる余地はあったと思う。今後のテーマとしては、もっと打線の強化でしょう」と、北川監督は口惜しさをバネにまた、次への飛躍を目指そうという意気を示していた。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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