都立国立vs攻玉社
1年生4番鈴木が劇的サヨナラ弾!国立が6年ぶりの都大会進出!
3安打の徳田(都立国立)
都内屈指の進学校で、1980年には甲子園出場経験がある都立国立だが、都大会では春では2013年、秋では2012年以来遠ざかっている。代表決定戦に臨んだ都立国立は最後にドラマが待っていた。
1回裏、都立国立は徳田健吾(2年)がレフトへ二塁打を放ち、一死二塁から3番の敵失の間に1点を先制。さらに一死二塁から4番鈴木太陽(1年)が詰まりながら中前適時打を放ち、2点目を入れた。
2回裏には二死三塁から徳田の適時打で3点目、4回裏にも二死二塁から1番徳田の右前適時打が飛び出し、4対0とリードを広げる。徳田は3安打2打点1得点の活躍。強く振りきるスイングは迫力があり、打球の1つ1つが鋭い。この試合では2盗塁を決めるなど、なかなかの俊足。楽しみな右打ちのアスリート型センターだ。徳田は夏まで投手を務めていたが、福谷真一監督は「彼の身体能力の高さを生かす意味を込めて」と野手転向を言い渡した。ここまでの活躍を見ると、それはうまくいっている。
同点に沸く攻玉社
都立国立の先発・延安 航大(2年)は好投を見せ試合を作る。延安は110キロ中盤の速球、スライダー、カーブを織り交ぜながら投球を展開する技巧派左腕。走者を出しながらも要所を締めるピッチングを見せていく。
5回まで4対0とリードしていたが、6回表、攻玉社が相手のミスを絡めて2点を返すと、流れが変わる。6回裏、都立国立は1点を入れて、5対2としたが、7回表、攻玉社は1番青貝のライトへの二塁打、2番辻井の安打で無死二、三塁のチャンス。ここで投手交代。セカンドの阿部哲也(2年)がマウンドに登る。阿部は常時120キロ台の速球、スライダーを織り交ぜる右のサイドハンド。二死を打ち取ったまではよかったものの、バッテリーミスで1点を返され、、5番四家のレフトへの二塁打、6番寺田の中前適時打で5対5と試合を振り出しに戻される。
サヨナラ本塁打を打った鈴木太陽(都立国立)
攻玉社は4番手にエースの中島啓貴を投入。中島はアーム式フォームから繰り出す右のスリークォーターで、120キロ前後の速球とスライダーを投げ分け、都立国立打線を抑え、延長戦に持ち込んだ。
試合は延長11回裏、2番の敵失でチャンスを作り、3番長谷川 太一(2年)は犠打を試み、俊足を飛ばし、セーフを誘い、さらに守備の乱れもあり、二、三塁のチャンスとなった。ここで打席に入ったのは4番鈴木太陽。
鈴木は「先輩たちがつないでくれたおかげで、定位置より後ろのフライを打てば、試合は決まると思っていました。打てる球は思い切り振ろうと」
無心で振り抜いた打球はレフトスタンドへ飛び込むサヨナラ3ラン。なんとサヨナラ弾で都大会出場を決めた。
鈴木は「素直にこういう結果になってうれしいです!」と笑顔。福谷監督は「苦しい試合を予想していましたが、ここまで苦しい試合になるとは。試合を決めた4番鈴木は能力もある選手ですし、夏休みの練習試合からずっと4番で使い続けていた打者でした。ヒットを打っても詰まった当たりのヒットが多く、本人からすればかなり苦しかったと思いますが、最高の形で報われて良かったです」と4番の一打を高く評価した。
鈴木は3安打4打点の大活躍。トップが深く、鋭い腰の回転を利かせた強打の右打ちショート。175センチ75キロと都立国立の打者の中では一番がっしりしており、遊撃守備を見ていても肩の強さが際立つ。楽しみな選手だ。
今年は夏場から振り込みを重ね、1キロのバットを1日1000本振る練習を重ね、パワーをつけてきた。トップを深くとって、外側の球を強く叩く方針がこの試合で功を奏したといっていいだろう。
6年ぶりの都大会進出に福谷監督は「守備の乱れが多く、崩れる時は大量失点になることもあります。都大会開幕までに守備力を強化したい」と守備力向上を課題に掲げ、主将の長谷川は「守備を鍛えなおし、多くの人に応援していただいているので、その期待に応えたいです」と都大会の活躍を誓った。
これまで都立国立の中でも例年以上に打者のタレントが揃っており、投手陣も粘り強い陣容で、このサヨナラ勝ちで勢いに乗っている。平成最後の秋に国高旋風を巻き起こすことができるのか?
(文=河嶋 宗一)