東海大高輪台vs区立九段中等教育
東海大高輪台、来海―田代のリレーで健闘の区立九段中等の追撃を許さず
先発の来海由明(東海大高輪台)
東海大高輪台にすれば、次に二松学舎大附との大一番を控えている中での戦い。先発9人のうち、6人が背番号は二桁。1年生の夏から主戦の捕手である主将の木下優成もベンチスタートとなった。「いろんな子を試してみたかった。それができるのは、この試合しかありませんでした」と、宮嶌孝一監督は言う。強豪校であれば、控えの選手も実戦で使って適性を見極めながら、勝ち進むにつれ、戦力を整えるという戦いが理想だ。けれども、次は二松学舎大附だけに、そうはいかない。
とはいえ、対する区立九段中等は、この夏、4回戦まで進んだメンバーのほとんどが残る。中高一貫で、中学生の時は都大会で準決勝に進んだこともあり、決して侮れない。実際、東海大高輪台は苦戦を強いられた。
1回裏、区立九段中等の先発、身長167センチと小柄な篠崎央の制球が定まらず、東海大高輪台の1番・富松輝の左前安打の後、四死球3で押し出し。東海大高輪台が1点を先制する。それでも。篠崎も踏ん張り、追加点は許さない。
東海大高輪台の先発は、背番号19の1年生・来海由明。「本来はキャッチャーですが、フォークボールなんかもいいし、ボールが来ている」と宮嶌監督。東海大高輪台には主将の木下という絶対的な捕手がおり、来海にしてみてば、いずれ捕手に戻るにしても、投手を経験することで、リードの幅が広がるという考えもあるようだ。来海は、球はそう速くないものの、捕手だけに、球に力強さがある。
それでも3回表区立九段中等は、この回先頭の8番・池田光吏郎が四球で出ると、内野ゴロ2つで三塁に進み、2番・大橋奏互の左前安打で、同点に追いついた。
その裏東海大高輪台は、2番・山﨑敦也、3番・三星太雅、5番・吉澤望と単打3本ですぐに逆転する。
それでも、区立九段中等の先発・篠崎は、テンポのいい、強気の投球で東海大高輪台を最少失点に抑え、試合の行方を分からないものにした。
もっとも、スコアの上でも接戦でも、4回以降は来海に完全に抑えられ、安打が1本も出ない。結局来海は、7回を被安打2、四死球4、失点1の投球であった。
7回裏東海大高輪台は、一死一、二塁から2番・山﨑が二塁打を放ち1点を追加。3番・三星のライトへの大飛球を、区立九段中等の右翼手・和田康佑が好捕したが、犠飛となった。さらに4番・島根颯佑の右前安打でさらに1点を追加して、試合を決めた。
東海大高輪台は、8回からエースの田代樹が登板。田代は2回を無失点に抑え5-1で東海大高輪台が勝利した。
試合時間は1時間28分。9回まで進んだ試合としては、最近では珍しいスピーディな試合であった。東海大高輪台の2人の投手の好投と、区立九段中等の篠崎のテンポのいい投球が、進行の速い試合にした。
区立九段中等は平日の練習は2時間で、練習の場所も限られている。それでも、個々の選手のレベルは低くないだけに、伸びてくる可能性はある。「どれだけ野球に厳しく向かい合えるかです」と、小美濃清一監督は語る。
一方、東海大高輪台の宮嶌監督は、「もう少し打てないと」と不満を表しつつ、「組み合わせが決まってから、二松学舎大附戦のことを考えて練習して来ました」と語る。都大会出場をかけた代表決定戦は、その成果が問われる一戦であり、今回の1次予選、最高のカードとなった。
(文=大島 裕史)