日大三vs折尾愛真
折尾愛真・投手陣の自滅に隠れた日大三打線
1回表、折尾愛真は大会屈指の強打者と評判の3番・松井義弥(3年)の安打もあって1点を先制したが、その裏、日大三は打者13人を送る猛攻で一挙に7点奪い逆転、さらに2回に1点、3回に3点を追加して試合を決めた。
日大三の強打線がどうというより、折尾愛真の繰り出す投手陣が自滅したという印象のほうが強い。先発の小野剛弥(3年)も2番手の下柳涼(3年)もストレートが遅いので、ボール球を振らせて打ち取ろうとするあまり逆にストライクが入らなくなり、1回は4つの四球と1つの死球、2回は2つの死球、3回は1つの死球を与えて大量失点のきっかけを作ってしまった。
日大三打線は15安打の猛攻と11個の四球、5個の死球を得て大勝したわけだが、相手の自滅の要素が強いため、かえってよさが見えにくいという皮肉な現象に見舞われてしまった。
試合前、最も期待した4番・大塚晃平についていえば、小野、下柳の緩いボールにまったくタイミングが合わず、第4打席までは四死球以外、ボテボテの内野安打1本きりという貧打ぶり。それが、投手が速球派の野元涼に代わると、7回に内角高め138キロのストレートを押し込んでレフトスタンドに放り込んでしまった。相手投手次第でバッターは良くも悪くも見える受け身な存在だと改めて思わされた。
大塚以外では6番の佐藤コビイ(3年)がよく見えた。バッターを評価するとき、私はタイミングの取り方を見る。投手が繰り出す緩急や予測したボール以外の球に対応するとき、ゆったりしたタイミングの取り方でないと好結果は出ない。佐藤は始動の動きも、ステップする動きもゆったりして急がない。4連続四死球で同点に追いついた1回、1死満塁の場面で打席に立った佐藤は1ボール2ストライクのあと、104キロのカーブをしっかり捉え、レフト前にライナーで運んで勝ち越しの2点を追加した。打つ形だけならこの日の日大三の中では最もよく見えた。
話を折尾愛真に移すと、3番手で登板した野元を先発で起用するプランはなかったのか、試合中ずっと考えていた。ストレートの最速は142キロを計測し、120キロ前後の斜め変化のスライダーはキレがよく、投手として育てるプランがあれば全国で通用するピッチャーになれたと思う。
松井とともに「強打」を標榜するチームの中心的存在なので、打つこと以外のことはなるべく遠ざけようという意図があったのだろう。しかし、他のピッチャーの自滅ぶりを見ると、これだけいい球種を持つピッチャーを控えの控えに置くのはもったいないと思った。
バッティングのほうは4打数0安打で三振が2つという内容。松井とともに、素材のまま現在に至ったという状態で、今後の成長は進んだ先の環境次第で化ける可能性があれば、反面低迷する可能性もある。
(記事=小関順二)