試合レポート

関大北陽vs近大泉州

2018.05.19

地力に勝る関大北陽が、近大泉州に勝利し準決勝進出!

 近大泉州は、先日の5回戦で昨秋8強の箕面学園を倒しており、関大北陽もまた、汎愛、阪南大高といった実力校を下しての準々決勝。投打共にレベルの高い両校の対戦は、地力に勝る北陽が接戦を制する結果となった。
まずは1回裏、関大北陽は二死から3番・山下が挨拶代わりの一発で先制すると、しばらく試合は膠着した。

 関大北陽の先発は背番号1の久保。きれいなフォームの左腕で落ち着きがあり、球速はそれほど速くないが制球が良く、直球とスライダーを低めに集めてカウントを作り、外角の出し入れも正確である。今日は6回1/3を投げて2四球7奪三振と、十分な安定感を見せた。

 近大泉州の先発はこちらも背番号1の荒瀬。ワインドアップから右上手投げの力投派で、ずばずばとストライクを投げ込む。関大北陽の打線が早打ちだったこともあり、少ない球数でテンポ良く試合を進めたが、ストライク中心の配球というのは、甘い球を痛打される危険性もある。

 その典型が5回裏。関大北陽は7番・倉岡の右安、8番・野瀬の犠打、9番・久保の右安で一死一、三塁の好機を作ると、1番・宮内は初球をセンターに弾き返して1点追加。2番・村田も初球を狙い、三塁側へプッシュ気味の犠安を成功させ一死満塁。3番・山下がまたも初球をセンターに運び2打点目となる犠飛でもう1点を追加した。

 さらに6回裏。先頭の4番・赤松がストレートの四球で出塁したところで投手交代。2番手には背番号18の太田が登板したが、制球力に課題が残った。無死一塁で登板した6回裏には、2四死球で二死満塁のピンチを招き1失点。7回裏は二死から3四球で満塁としてしまうなど、1回2/3を投げて2暴投5四死球では安心して試合を任せられない。球質は良いだけに勿体ないところである。

 6回を終えて4対0と関大北陽優勢で進んできたが終盤は意外にもつれた。7回表、近大泉州の攻撃。一死から7番・垣外中が中安で出塁すると、8番・木村は四球、9番・太田の三塁側への犠打は小フライ気味になったがそれが奏功して一死満塁の好機を迎えた。ここで関大北陽ベンチが動き、2番手に背番号10の北口をマウンドへ送るが、久保が打たれていたわけではなく、そこまで決断を急ぐ必要があったかは疑問が残る。北口は1番・樋口に押し出し四球を与えて1失点、さらに2番・濱畑の打席で珍しいプレイが起こる。
打席結果そのものは、1ボール2ストライクからの空振り三振である。ところがここで、関大北陽の捕手・坂本がアウトカウントを間違えたのか、ベンチに帰りかけたのである。その隙を突いて三塁走者が本塁を狙う。バッテリーは焦ってベースカバーと送球を行うが、これが連続で悪送球を招いてしまい二塁走者も生還して、この回3失点となった。


 ただこれらの失点は、決して北口の投手としての能力に原因があるわけではない。2回1/3を投げて4四死球はいただけないが、7回表の救援にしても1失点してから本来は二者連続三振を奪っているし、力関係としては近大泉州打線を抑え込んでいた。

 試合はそのまま1点差で9回表、近大泉州の攻撃。9番・田中の左中間への大飛球は左翼手・倉岡が、1番・樋口の三遊間への安打性の当たりは遊撃手・山下が、それぞれ好守を見せて二死となったが、そこから四球と3番・岡田馨の中安で一、三塁と一打同点の好機を作る。この場面で打席に立った、ここまで4打数0安打の4番・平尾の打撃は「4番の意地」と表現したい。2ボール1ストライクから一、二塁間へ適時打を放ち、見事同点に追い付いた。

 なおも二死一、二塁の場面で関大北陽は投手交代。3番手には右スリークォーターの背番号7・辻が上がった。辻は、自らの暴投によりピンチを二、三塁に広げ、さらに5番・平の打球は一塁手正面へのライナー性の当たり。これを一塁手の村田はグラブに当てて弾いてしまうが、投手のカバーが間一髪で間に合いチェンジ。ぎりぎりのところで逆転は許さなかった。

 7回裏の途中から登板した近大泉州3番手の田中は右下手投げの軟投派。3人の中で最も制球力はあるが、このレベルで対等に勝負するにはやや力不足であった感は否めない。9回裏、6番・幸松の左安と2つの四死球で二死満塁となったところで迎える打者は1番・宮内。1つ前の打席では、田中の球を逆方向へのファウルで粘りながら、打席内で微修正して右線への二塁打を放っている。2回目の勝負となるとさらに余裕があったに違いない。2ボール1ストライクから、狙い通りと言わんばかりのサヨナラ適時打となる右安で勝負を決めた。

 この試合は両校共にバットはよく振れており、強打で勝ち上がってきたことを思わせる。ところが準々決勝という舞台において、より投手力の上回った関大北陽が内容的には無難に勝利を収めた結果となった。近大泉州は、投手陣の制球力とヒットエンドランの精度を鍛えれば、今夏の南大阪大会で上位に食い込むことは間違いない。

 勝った関大北陽の準決勝は、昨秋の3回戦で惜敗している初芝立命館との対戦となる。好投手の久保が大黒柱となる守備、好打者の宮内、山下らが活躍する打線を擁して、雪辱を果たせるか注目したいところである。

(文章=西村結生

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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