日本文理vs新津南
昨秋王者・日本文理、盤石のコールド発進
好投の新谷晴(日本文理)
ゴールデンウイーク前半最終日は、一昨年秋から県内で負けのない日本文理が登場。[stadium]新発田五十公野球場[/stadium]には、第1試合にも関わらず、入場に長蛇の列ができ、絶対王者の緒戦の注目度の高さをうかがわせる。
日本文理は初回、新津南先発の佐藤匡哉(3年)を攻め、2番・長坂陽(2年)がファールで粘って四球を選ぶと、この日4番に入った鈴木裕太(3年)が初球をたたきレフトスタンドへ先制のツーランホームラン。二回にも、一死から3本のヒットで満塁のチャンス作ると、3連続四死球(押し出し)で3点を追加。リードを広げる。
日本文理先発の鈴木は初回からエンジン全開。この日のMAX145km/hのストレートを武器に新津南打線を寄せ付けず、五回を無安打、1死球、7奪三振と完璧な投球。後続をリリーフ陣に任せる。6対0日本文理リードで迎えた六回、日本文理は新津南2番手・内山諒(3年)を攻め、2点をあげると、七回にも1点を追加。投げては鈴木の後を受けた川野邊一輝(3年)、新谷晴(3年)が、新津南打線を1安打に抑え、日本文理が10対0、七回コールドで緒戦を突破した。
エキサイティングプレーヤー
投打で活躍した鈴木裕太(日本文理)
鈴木裕太(3年・投手・日本文理)
これがプロ注目と呼ばれる選手の“本気”なのか。そう思うほど、鈴木裕太は変わった。
MAX140km/hを超えるストレートを武器に、1年春からベンチ入り。
そのポテンシャルは誰もが認め、誰もが未来に期待したが、ケガや不調で思うような成長曲線を描けない。昨夏の甲子園では緒戦の先発を任されながら、不本意な投球のままマウンドを降り、そのまま登板機会がないまま甲子園を去った(3回戦は当時のエース・稲垣 豪人が1失点で完投。仙台育英に0対1で敗れる)
だが、ここでの経験が鈴木を変える。
先輩が抜け、チームの主力としての自覚とプロへの憧れが彼を動かした。投球フォームを改良し、新潟の長い冬を厳しいトレーニングで乗り越え、自身も「春の大会が楽しみ」と話すをほど充実した期間を過ごした。(詳細はインタビュー参照)
迎えた春の緒戦、まずはバットで結果を出した。初回、二死一塁の場面、初球が高めに抜けると、その球を見逃さなかった。クッ、と一瞬タメを作り、バットを一閃。1球で仕留める集中力もさることながら、レフトスタンドへ運ぶパワーでも周りを驚かせた。
そして、一番驚いたのは投球ではない。六回に回ってきた第4打席での走塁だ。四球で出た3番・先川大智(3年)を一塁に置いて、レフトへ強烈なヒットを放つ。レフトが打球の処理にもたついているのを見ると、ものすごい勢いで進塁。思いっきりのいいスライディングで二塁を陥れた。そこには、先輩たちに引っ張ってもらっていた昨年までの鈴木の姿はなかった。
本業の投球はもちろん、バッターとしても4番という責任ある打順を任され、その中で投打ともに結果を出す。高い意識の中で自然と生まれた走塁。その姿を見ると、自然と文頭の言葉が思い浮かんだ。
夏までに一体どれだけの進化を遂げるのか。ますます楽しみだ。
(取材・写真= 町井 敬史)