試合レポート

日大三vs国士舘

2018.04.29

投打に充実の日大三、国士舘を破り秋春連続で都大会を制する

日大三vs国士舘 | 高校野球ドットコム
本塁打の日大三・大塚晃平

  

 4月1日に始まった春季都大会もいよいよ決勝戦。準決勝からの連戦になる決勝戦は、1人のエースに依存するチームだと、控えの投手が先発して、やや気の抜けた試合になることがあるが、国士舘は左の3本柱が充実。日大三にも複数の投手がおり、点差から受ける印象以上に試合は締まっていた。

 

 

 日大三の先発は、小倉全由監督が期待する身長190センチと長身の2年生・廣澤 優国士舘は左の3本柱の中で球は一番速い草薙 柊太が先発した。また日大三は正捕手の齊藤 龍二が軽度の負傷のため大事をとって控え捕手の佐藤 英雄がマスクをかぶった。小倉監督しては不安であったが、佐藤 英雄はボールを体で止めて、失点を防ぐプレーを随所に見せた。特に大きかったのが、1回表の守りだった。

 

 

 廣澤の先発は3回戦の日体大荏原戦以来。その時は、「緊張して思い切り投げることができませんでした」と言う廣澤だが、この日は「自信を持って投げることができました」と言う。ただ経験が浅い2年生バッテリーにとって、足でかき回してくる国士舘は厄介な相手だ。

 

 

 1回表国士舘は1番・内藤 晃がいきなりバント安打で出塁すると二盗に成功。2番・内藤 真の犠打で三塁に進み、3番・倉田 和明には四球とやや不安定な立ち上がり。倉田も二盗し、国士舘は早速得意の足でかき回した。4番・門間 大樹の4球目は外側にワンバウンドのボール。ワイルドピッチかと思えた場面であったが、日大三の捕手・佐藤 英雄が素早く動いて体で止め、失点を防いだ。「止めてくれて助かりました」と廣澤が言うように、暴投で点が入っていたら、試合の流れは違ったものになったかもしれない。結局門間は三振、5番・田中 勇祐は右飛で無得点に終わったことは、国士舘には痛かった。

 

 

 その裏日大三は、1番・金子 凌が四球で出塁すると、犠打と内野ゴロで三塁に進み、4番・大塚 晃平の中前安打であっさり先制した。

 

 

 国士舘は2回表、7番・赤川 輝の二塁打で一死二塁のチャンスを作ったものの得点できなかったのに続き、3回表は死球と安打2本で一死満塁としたが、4番の田中 勇祐は投ゴロで1-2-3の併殺。国士舘にはホームが遠い。

 

 

 4回裏には日大三は、6番・上野 隆成のレフトへの特大本塁打で1点を追加する。国士舘の草薙は、この回で降板する。4回を被安打4の失点2。「腕だけで投げている感じで、ボールが走っていなかった」と草薙は、反省の言葉を口にした。

 

 

 それでも、そう極端に悪い内容ではなかったが、2番手で登板した井田尚吾の出来が誤算だった。5回表、日大三の1番・金子の中前安打の後、2番・木代成の三ゴロで併殺に倒れたが、3番・日置 航を四球で歩かせると、4番・大塚がレフトフェンスをギリギリで超える2ランを放ち、日大三が突き放す。

 

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国士舘・内藤晃

 

 リードする日大三は、6回表から廣澤に代えて、準決勝の緊急登板で好投した河村唯人が登板した。「廣澤が何点か取られると思っていました」と語る河村にとって、無失点でのリレーはプレッシャーにもなり得るが、「1点OKという気持ちで投げました」と言うように慌てない。3番・倉田に、野手の間に落ちる不運な二塁打を打たれるが、慌てず後続の3人を打ち取る。その後も太陽光が影響した安打を含め、走者は出すものの、落ち着いた投球をする。前日の好投ですっかり自信がついた感じだ。

 

 

 日大三は7回裏一死一、二塁から3番・日置が右中間を破る二塁打を放ち、決定的な2点を追加した。ここで国士舘は井田を諦め、石井 崚太が登板する。この試合が夏の前哨戦であることを考えると、国士舘にすると、エースの石井まで登板させたのは、誤算だったかもしれない。それでも石井は日大三打線を無失点に抑える。
「三高との対戦は楽しみでした。でも甘い球はミートされました。勝ち上がるのは簡単ではありませんが、夏は勝ち上がってリベンジしたい」と石井は語る。夏、国士舘日大三と対戦するとすれば、決勝戦ということになるが、夏に向けての練習のモチベーションになったようだ。

 

 

 結局9回表二死後、国士舘は代打攻勢で走者を2人出したものの、得点を挙げることができず、6-0。日大三春季都大会では3年ぶり、そして秋季都大会に続けて優勝を成し遂げた。
 国士舘にすれば、足で仕掛けた1回表に得点ができなかったことが、最後まで響いた。それでも、国士舘の足攻は、西東京大会でも、対戦校の脅威になるに違いない。左3人の投手陣は充実しているが、石井が、「スピードアップと、決め球で三振を取れるようにすること」を夏に向けての課題に挙げたように、さらにレベルアップして、夏の大会に臨むに違いない。

 

  一方日大三は大会の序盤は不本意な試合が続いたが、徐々に力をつけてきた。決勝戦を終えて小倉監督は、「今日の試合が一番良かったかな」と語る。この試合には、準決勝まで3試合連続で本塁打を放っている中村 奎太は、ブルペンで待機するために出場していない。しかし、そうした空白を感じさせないほど、選手の層が厚い。特に投手陣は、秋は背番号1だった河村が自信を得たのに続き、2年生の廣澤が可能性を示すなど、夏の厳しい戦いを考えると、大きな収穫であった。

 

 

 関東大会について小倉監督は、「大きな大会でどこまでやれるかですね」と語る。東京代表として関東大会に出場する日大三国士舘の健闘を期待したい。

 
 

文=大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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