都立小山台vs明星
1点を巡る攻防、投手が粘り強く投げた小山台がしぶとくサヨナラ
戸谷直大君(小山台)
ここで勝つと、ベスト16進出が決まり、夏の選手権のシード権が得られる。それだけに、各校ともに夏を見据えて、春季大会の3回戦突破は一つの目標ということになる。2014年には、都立校として初めて、21世紀枠代表校としてセンバツ出場を果たしている小山台。福嶋正信監督は、「ここで勝つと負けるのでは夏を考えたら、大違い」と、勝ちにこだわっている。それはもちろん、明星も同じことである。
明星の先発は、秋季大会は1番をつけていたが、この春は初めての登板となった背番号20の石井南果君。小山台はしっかりしたフォームで投げ込んでくる戸谷直大君の先発。
最初に好機を掴んだのは小山台で初回、一死一二塁で4番會川君が右前出するが、明星の鈴木歩夢君が好返球して本塁アウト。先制機を逃した。そして3回、明星が先制する。
明星はこの回、一死から9番の石井君が左越二塁打を放つと1番岡部勝太郎君の当たりは三塁ライナーとなったが、続く寺尾君が右前へはじき返して二塁走者を帰した。さらに、明星は鈴木歩夢君も安打して続いたが、何とか戸谷君がその後を抑える。しかし、戸谷君としては思ったよりもストレートが高めに浮いていたようで、そこをしっかりと明星打線が捉えていた。しかし、戸谷君が優れていたのは、それを試合の中で修正していって、後半からは低めをしっかりと攻めていったところだ。
そして1点を追いかける小山台は5回、一死から1番松永君が死球で出ると、続く佐藤晃君が中前打してスタートを切っていた松永君は三塁へ進んで一三塁。飯田君は三塁ゴロとなったが、リードを取りながら一塁へ送球するのを見てスタートを切った松永君が生還して同点とした。このあたりは、少ないチャンスを何とかモノにしていきたいという小山台の果敢な姿勢が功を奏したとも言えよう。さらに、4番會川君も安打して続いたが、そこは石井君も踏ん張った。
こうして中盤以降は、お互いの投手がそれぞれの持ち味を示していく投手戦となっていって、次の1点はどちらもなかなか難しいぞと思わせる展開となった。
今大会から導入されることとなった、延長13回からのタイブレークシステムだが、その可能性も高いのではないかと思わせるような展開だった。場内アナウンスでも、13回からはタイブレークとなるという旨も告げられたが、そんな矢先の9回に試合が動いた。
明星は3番鈴木歩夢君からだったが、失策で二塁まで進む。そして、一死三塁となったところで、スクイズを試みたがスライダーにバットが合わず空振りで三塁走者が刺された。試合後明星の石山敏之監督は、「走者が二塁に行った時点で、簡単には打てないので何とか三塁まで進めてスクイズで1点ということを考えていた。切れのいいスライダーだったけれども、ファウルにしてもいいから、何とかバットに当ててほしかった」と、空振りで走者がなくなりチャンスを逸したことを悔いた。
そしてその裏、小山台は先頭の代打南君が初球で死球。石山監督が、「一番恐れていたことが起きてしまった。だけど、内側を攻めていくのは、石井の生命線でもあるので、仕方のないところだった」と振り返った場面である。小山台の福嶋監督は代走廣瀬君を送り出すが、バントですぐに二塁へ進む。さらに、2番佐藤晃君が三塁―のバント安打を決めて一三塁。結果的には、これが効果的だったことになる。続く飯田君の打球は十分に犠飛となる距離だったが、送球を焦った野手が落球してあっけなくサヨナラとなった。
まさに明暗を分けた9回の攻防だった。試合後、福嶋監督は、「9回が勝負でした。ピンチでは一二塁にした方が守りやすいかなとも思ったんですが、スクイズをさせなくてよかった」とだけ言い残すと、次の相手となる「早大学院・桜美林」の試合を見に行くために八王子に向かった。あとを受けて、才野秀樹助監督は、「試合としては、最初のチャンスもそうでしたけれども、あと一本が出ていたら、もう少し楽に勝てたかもしれませんが、相手の投手もよかったですからね。ただ、失点の少ないチームなので、何とか凌げていました。総合力としては、センバツに行った4年前のチームよりも上かもしれない」と、チームの状態の良さを感じていた。
(取材・写真=手束 仁)