上野学園vs都立戸山
上野学園、積極的な走塁で都立戸山を圧倒
先発・岡田海希人(上野学園)
1回戦は、1次予選を勝ち抜いたチームと、秋季都大会に出場し、1次予選は免除されているチームの対戦になっている。高校生だけにどんな強豪校でも、1次予選を免除されているチームにとって1回戦は今年最初の公式戦であり、緊張感はあるものだ。しかし昨夏はベスト8に進んだ上野学園には、そうした緊張感はない。スタンドで見ていると、むしろ野球を楽しんでいるという感じがする。「苦しんでいる時に、どう楽しむか。笑顔でプレーすることをこころがけています」と、上野学園の小川貴智監督は言う。
1回表上野学園はあっさり二死となったが、3番・半貫淳久が死球で出塁すると、すかさず二盗。身長161センチ、体重93キロという関取体形の4番・鈴木裕斗が中前安打を放ち、半貫を還した。鈴木が打てば、チームが盛り上がる。
2回表は二死二、三塁の場面で、8番・井口玄太がスクイズ。一塁への送球の間に、三塁走者だけでなく、二塁走者の田嶋治貴も生還する、ツーランスクイズを成功させた。
「走塁も積極的にして、前半はとにかく攻めるつもりでいました」と上野学園の小川監督は言う。積極的な走塁が都立戸山の焦りを誘い、失策を誘発するようになる。
この回上野学園はさらに盗塁2個を絡めて二死二、三塁として3番・半貫の中前安打で2点を追加する。
上野学園の先発は、昨夏も投げている横手投げの岡田海希人。時おり腕の位置を変えながら、コーナーを突く投球で、都立戸山打線を苦しめる。1次予選は東洋に16-0、都立千歳丘に12-2と打ち勝ってきた都立戸山だが、これまで対戦した投手とは、質が違った。結局5回で打った安打は4本。5回裏に佐々木薫平の三塁打などで1点を挙げるのがやっとだった。
上野学園は4回に井口の本塁打で1点を追加すると、5回表は半貫の二塁打の後、都立戸山の内野陣が乱れて失策を連発して一挙7点が入り、5回コールドが成立した。
戸山の小泉重雄監督は、「質や精度が全く違いました。自分たちは一つ一つのプレーがアバウトであることを感じました」と語る。都立戸山は進学校で、練習時間も限られているが、3年生は夏まで野球を続けるという。「すごくいい勉強をさせてもらいました」と小泉監督。制約がある中でも、どこまで力を伸ばせるか。夏に向けての成長を期待したい。
勝った上野学園は、次は都立久留米西と対戦する。昨夏ベスト8に進んだからといって、入ってくる選手のレベルが上がるといったことはないという。ただ確実に、力をつけてきていることは間違いないだけに、今後の戦いが注目される。
大島 裕史