日本航空石川vs日大三
初出場の日本航空石川がタイブレークの末、日大三を下す
日大三バッテリー
シーズン最後の高校野球大会としてすっかり定着してきた明治神宮大会。各地区大会の優勝校が出場するようなになっても20年近くなるが、来春のセンバツの展望的要素とともに、優勝校の地区にはセンバツでの1枠増があるということも定着してきた。ことに、毎年6番目の椅子が難しくなる、関東・東京地区にとっては、この地区代表から優勝校が出れば、心配することなく関東から5校、東京2校ということになると思われるだけに、東京代表と関東代表の戦いは気になるところでもある。
ことに、東京代表は開催地の地元としての任もある。その東京都大会をこの秋制したのは日大三だった。「新チームスタート当初は心配だった」と言う小倉全由監督だが、この秋も、強力打線は健在ぶりを示していた。決勝では9回に一挙8点を奪う猛攻を見せての優勝だった。
そんな日大三に対して、北信越大会を初めて制して今大会初出場となる日本航空石川は、「打ち勝とうという考えでしたから、バントはあまり考えていませんでした」という中村隆監督の思惑通りに、積極的に打って言っていた。それが功を奏して前半は主導権を握った。
初回の日本航空石川は、先頭の中西君が内野安打すると、牽制球をそらす間に労せずして二塁へ進み、続く小坂君の右前打で二走が生還。わずか4球の打者2人で先制した。さらに3回も、3番原田君と4番上田君の連打で一三塁として、長谷川君の犠飛で2点目を追加した。ここでたまらず、小倉監督は先発した背番号8の中村 奎太君をセンターに下げて、2人目として背番号18の林玲介君を送り出した。
その林君に対しても日本航空石川は、3回は小板君が二塁打して二三塁としつつも後続がなかったが、1点返された4回に、中西君と小坂君の1、2番の長短打で追加点。さらに四球で無死一二塁とし、4番上田君がセンター横への二塁打を放って2点を追加する。続く長谷川君も三塁線を破る二塁打でこの回4点となって、日本航空石川は5点をリードした。
9回裏のクロスプレー
5回まで、日本航空石川の1年生投手重吉君に対して、3本の長打こそ放ったものの、4回の1点のみだった日大三。しかし、代打もあって6回からマウンドに登った杉本君を捉えた。1番からの好打順だったが金子君、木代君、日置君と3連打で無死満塁とすると、押し出しで1点を返す。ここで日本航空石川の中村監督は「球がまったく来ていない」と判断して、エースナンバーの林君を一死も取れないまま諦めて、3人目の大橋君を送り出した。大橋君は上手に打たせて取っていったが、内野ゴロ2本で2者が帰って2点差となった。
こうなると日大三の追い上げムードになってくる。7回にも、一死二塁に四球の柳澤君を置いて、金子君が左前打で帰して1点差。そして9回、二死二塁に金子君を置いて、4番大塚君が中前へ鋭くはじき返してついに追いついた。日本航空石川としては、あと一人で勝利を手中にできるところだったが、さすがにここは日大三が土壇場での粘りを見せつけた。
その裏、日本航空石川は一死から上田君と長谷川君と中軸の連打で一二塁とし、小板君は倒れたものの、7番山岡君は右前へはじき返して、二走の上田君は本塁を狙った。微妙なタイミングだったが、185cm97kgの上田君が170cm77kgの齊藤龍二君に激突し落球。セーフでサヨナラかと思われたが、これが危険なプレーと判断され、守備妨害でアウトが宣告された。
こうして試合はタイブレークの延長に突入した。タイブレークは、無死一二塁から始められるが、日大三は2番木代君からで、まずはきっちりとバントで送り二三塁とする。頼りの中軸で勝負に出たが、ここは日本航空石川の大橋君が踏ん張った。
そしてその裏、日本航空石川は3番原田君から始めたが、初球を右前打して満塁とする。そして、上田君への2球目が後逸になって、三塁走者が帰り、あっけなく決着がついてしまった。日本航空石川としては、最後まで当初の意図通りに「ゲッツーになってもオッケーというつもりで、積極的に打っていこう」という意識を作っていったことが実ったと言っていいであろう。しかし、9回のクロスプレーについては、「大変申し訳ないことをしたと思っています」と、中村監督も平身低頭だった。
9回に追いつきながらも、タイブレークで勝ち切れなかった日大三。小倉監督は、「ウチは日置(3番)、大塚(4番)のチームですから、タイブレークでそこが打てなくては勝てません」と潔く負けを認めていた。それでも、一時は5点差あったものを追いついたことについては、「9回は大塚がよく打って、粘りは見せられましたけれどもね」と、評価していた。
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