試合レポート

日大三vs佼成学園

2017.11.05

日大三、9回に一挙8点!健闘の佼成学園を振り切り7年ぶり13回目の優勝

日大三vs佼成学園 | 高校野球ドットコム
優勝を決めた日大三

 吹く風は冷たいものの、青空の下で決勝戦は行われた。1回戦都立城東戦は7-1で9回まで試合をした以外は、全てコールドで勝ち上がってきた日大三。特に帝京戦の7回に、1イニングで8点を挙げるなど、打線のつながりで、畳み掛ける集中打は圧巻である。対する佼成学園は、積極的な守備と、攻守の粘り強さで勝ち進んできた。決勝戦は、そうした両校の持ち味が発揮された好ゲームになった。

 佼成学園は、肘の負傷から復帰した中村 陸人が準決勝に続いて先発。日大三は昨年の櫻井 周斗のように、背番号8をつけながらも、主戦投手の1人として活躍する中村 奎太が、準々決勝に続いて先発し、中村対決になった。

 1回表日大三は、四球2に、3番・日置 航の右前安打で一死満塁とする。ここで1本出れば、初回からワンサイドの展開になる可能性があった。しかし5番・飯村 昇太は投ゴロ。1-2-3と、絵にかいたようなホームゲッツーで、日大三は無得点に終わる。

 その裏佼成学園は、1番・笹渕 勇武が右前安打で出塁すると、2番・幸田 一真は三塁前にバント。これを日大三の三塁手・金子 凌が、処理を誤り、無死一、二塁。3番・岸川 智哉、4番・松下 豪佑と内野ゴロが2つ続く間に、佼成学園が1点を先制する。

 2回裏も佼成学園は、6番・平澤 飛龍、7番・江原 秀星の連続安打に、8番・中村の犠打で一死二、三塁とし、9番・岡田 舜の遊ゴロを、日大三の遊撃手日置が本塁に送球したが間に合わず、1点を追加した。
「バント処理で慌てたり、1回、2回はバタバタでした。これが決勝戦の緊張かなと思います」と、日大三の小倉全由監督は語る。

 日大三佼成学園の先発・中村を捉えたのは、4回表だ。この回先頭の3番・日置が左中間を破る二塁打で出塁し、4番・大塚 晃平の中前安打で還り1点を返す。さらに飯村の犠打を挟んで、6番・中村、7番・柳澤 真平の連打で同点に追いつく。なおも攻撃が続き、9番・齊藤 龍二の四球の後、1番・金子の右前安打で日大三が逆転する。引き続き二死満塁。日大三としては、得意の集中打で、一気に引き離したいところだ。しかし、2番・木代 成の左翼へのライナーを、佼成学園の左翼手・笹渕が好捕。佼成学園らしい果敢な守備で、傷口を広げない。

 5回表からは、佼成学園は中村に代えて、この大会成長した青木 翼をマウンドに送る。

 日大三は青木から5回表は無死一、二塁、7回表は大塚の三塁打で二死三塁とチャンスを作るものの、得点を奪うことができない。「打てそうな感じなのに、小さな変化球にてこずりました」と日大三の小倉監督は言う。

 一方佼成学園は、6回裏に5番・斉藤 功大がレフトスタンドに本塁打を放ち、同点に追いつく。

 7回裏日大三は、先発の中村を中堅手にし、マウンドに井上 広輝を送る。神宮球場で行われた今大会の準決勝、決勝の3試合で、スコアボードのスピードガン表示で、初めて140キロ台を記録するなど、東京の高校球界を代表する速球投手である井上だが、7回裏は、この回先頭の笹渕を四球で出し、2番・幸田が送り、三番・岸川が流して右前安打にして笹渕が生還。佼成学園が1点をリードする。


 佼成学園の藤田直毅監督も、「8回まではいいゲームメイクができました」と、手応えを感じていた。9回を迎え、この回を抑えれば、佼成学園52年ぶりに優勝する。その高揚感は、緊張感になった。好投していた青木は、「優勝がよぎって、腕の振りが弱くなってしまいました」と振り返る。藤田監督も、「8回と9回では、別人になりました」と語る。

 9回表日大三の攻撃。この回先頭の1番・金子を四球で出したことが、日大三を勢いづかせた。金子は青木の暴投で二塁に。2番・木代のバントを捕球した青木は、思い切って三塁に送球したが、間一髪セーフ。同点は仕方ないとして、無理せず一塁に送球して、確実にワンアウトを取るやり方もある。しかし佼成学園の藤田監督は青木のプレーを、「素晴らしいプレーだった」と称えた。これまでも、一か八かの攻撃的な守りで戦い、勝ち上がってきた。そのスタイルを貫いたプレーだった。

 とはいえ、無死一、三塁と、傷口が広がったのも事実。ここで打席に立つ3番・日置は、「コンパクトに振って、大塚につなげよう。ボールを呼び込んで捉えようということを意識しました」と語る。その通り、焦って突っ込まず、コンパクトに振り抜いた打球はレフト前へ。同点の適時打になった。

 続く4番・大塚は右中間に二塁打を放ち、1点勝ち越した。こうなると日大三得意のつなぐ野球で、ビッグイニングの集中打になる。打順が一巡して、金子が三振するまでの間、9人連続で出塁。9回表1イニングで6安打。8人がホームを踏み、日大三が11―4とリードした。

 9回裏は佼成学園が岸川の三塁打などで1点を返し意地はみせたが、11-5。日大三が秋季都大会、7年ぶり13回目の優勝を果たした。

 前のチームでは、秋、春と決勝戦で敗れているだけに、幾度も優勝しているベテランの小倉監督としても、感慨深い優勝であった。前のチームでは、櫻井 周斗金成 麗生井上 大成ら、一発のある強打者が揃っていたが、新チームでは、「3年生に比べて体が小さく、芯くってもホームランにならない。それでも、自分たちからバットを振って、よく練習しました」と、小倉監督は、新チームの成長を語る。主将の日置も、「風呂に入ったら、手のひらがしみるほど、バットを振り続けました」と語る。選手たちは大会期間中も成長を続け、都大会を制した。それでも小倉監督は、「まだまだです」と、選手たちのさらなる成長を期待する。

 当面は明治神宮野球大会。それにまだ正式決定ではないものの、センバツの出場もほぼ決まった。ひと冬超えて、このチームはまた、たくましくなるに違いない。

 敗れた佼成学園であるが、1回戦堀越戦を観た時、まさか決勝戦まで勝ち進めるとは想像できなかった。1回戦では青木はまだ、中村の負傷により背負うことになった背番号1は、仮免許といった感じだった。しかし、試合を重ねるごとに、エースとしての自信と風格を感じさせるようになった。それを支えたのは、野手たちの果敢な守備である。センバツ出場は微妙なところであるが、可能性は十分あるだけに、甲子園でもその活躍が見たいチームである。

 雨に泣かされた大会であったが、決勝戦は天候にも恵まれ、日大三の優勝で幕を閉じた。その一方で、夏の甲子園でベスト4の東海大菅生は1次予選で二松学舎大附に敗れ、その二松学舎大附は都大会の1回戦桜美林に敗れた。関東一2回戦早稲田実に敗れた。これらの学校は、春はノーシードとして戦うことになる。第100回の夏の大会に向けて、これからの戦いの厳しさを感じさせる、この秋の戦いであった。

(文=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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