試合レポート

桜美林vs二松学舎大附

2017.10.10

延長10回の激闘!中嶋の決勝打で桜美林が二松学舎大附を破る大金星

桜美林vs二松学舎大附 | 高校野球ドットコム
勝利を喜ぶ桜美林ナイン

 この夏の東東京代表である二松学舎大附は、この秋も1次予選で、西東京代表で甲子園でも準決勝に進出した東海大菅生を破り、この大会でも優勝候補に挙げられていた。

 対する桜美林は、かつては夏の甲子園大会で優勝したとはいえ、この夏は西東京大会の4回戦で都立八王子北に敗れるなど、結果を出せないでいた。それゆえ「夏は悔しい思いをしましたから、本当に練習をしました」と、桜美林の工藤真彦監督は語る。

 二松学舎大附に気の緩みがあったとは思わない。けれども、この一戦にかける気持ちの強さでは、桜美林の方が上回っていたのではないか。

 試合は二松学舎大附がエースで左腕の海老原凪桜美林は背番号3ながらも、旧チームでも投げていた久富大輔が先発した。

 1回裏二松学舎大附は、1番の右田稜真が内野安打で出塁し、2番・野村昇太郎が送って二塁に進んだが、牽制で刺される。その後、3番・畠山大豪が右前安打で出塁しただけに、もったいない攻撃であった。

 初回のピンチを脱した久富は、「一球一球丁寧に投げろ」という工藤監督の指示通り、緩急を効果的に使い、二松学舎大附を抑える。

 すると桜美林は二死から、四球2個と4番・佐藤塁の右前安打で満塁とする。ここで6番・中嶋大夢が遊撃手への内野安打で桜美林が先取点を挙げる。ただ記録は安打でも、遊撃手・張本盛雄の守備能力を考えれば、十分アウトにできる打球であった。張本は2回表にも失策をしており、失点した後、遊撃手を有馬卓瑠に交代している。

 二松学舎大附にとっては嫌な流れで試合が進んだが、6回裏はこの回先頭の2番・野村が二塁手・中嶋の失策で出塁すると、3番・畠山が送りバント。一度ファールになっても、引き続きバントをしており、二松学舎大附の必死さが伝わってくる。その必死さが伝わったのか、4番・平間陸斗がレフトフェンス直撃の二塁打を放ち、同点に追いつく。

 続く5番・保川遥に四球を出したところで、桜美林は久富から、左腕の小池礼亜に交代する。


 二松学舎大附は右打者の堀川尚希で、小池は左腕だが「小池は右打者に打たれない」という工藤監督の期待に応え、堀川を二ゴロの併殺に仕留め、ピンチを切り抜けた。

 ここからは、二松学舎大附・海老原、桜美林・小池の両左腕の辛抱のし合いになる。両投手の好投を、バックも攻守で盛り立て、ホームが遠い試合は、延長戦に突入した。

 延長10回表、桜美林の3番・久富の遊ゴロを、途中出場で、好守備をみせていた有馬が一塁に悪送球。無死の走者を出してしまった。久富は犠打で二塁に進んだものの、二死二塁。打席には先制内野安打の中嶋が入る。

「日ごろから気が弱いと言われています」という中嶋だが、インコースを冷静に狙って、左前安打。貴重な決勝点となった。

 もっとも、二松学舎大附としても、ここであっさり負けるわけにはいかない。
 10回裏の先頭打者は、一塁への悪送球で決勝点のきっかけを作った有馬。有馬は遊ゴロを打った後、一塁にヘッドスライディングをしてセーフ。いよいよ反撃かと思われた。

 マウンド上の小池は「焦ったら終わり。冷静になる」ということを考え、二松学舎大附の1番・右田を二ゴロの併殺で切り抜け、2番・野村の左飛で試合終了。桜美林二松学舎大附を破り、2回戦進出を決めた。

 試合後やや感極まった感のある桜美林の工藤監督は、「選手たちは怖がらず、逃げなかった」と、選手たちを称えた。

 おそらく今年の東京の高校野球で、最大級の番狂わせと言っていい、桜美林の勝利であった。個々の選手の能力では二松学舎大附の方が上回っていたと思うが、1つ1つのプレーをしっかり丁寧にしていたという面では、桜美林に分があったのではないか。

 ただし強豪を破ったとはいえ、本大会はまだ始まったばかり。勝った勢いをどうつないでいくか。日大豊山と当たる2回戦も重要である。

 二松学舎大附は、東京でトップクラスの力があるだけに、敗戦の口惜しさを成長の糧にしてほしい。

(文=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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