試合レポート

巻総合vs長岡

2017.07.17

五回一挙7点! 巻総合、逃げ切って初の8強に名乗り

 前日、[stadium]新潟市鳥屋野運動公園野球場[/stadium]で雨の中行われた3回戦2試合はいずれもシード校が敗れる大波乱。巻総合長岡大手に競り勝ち、長岡は粘る昨秋準優勝の村上桜ヶ丘を振り切って4回戦へと駒を進めた。この2チームがベスト8、[stadium]HARD OFF ECOスタジアム新潟[/stadium]での試合を懸けて激突。両チームとも死力を尽くした白熱の好ゲームとなった。

 前日に続いて連投となる巻総合鏡 理央(3年)、長岡池山 匠(3年)の両エースの先発で幕を開けたこの試合。先制したのは長岡。初回、四球と盗塁で二死二塁のチャンスを作ると、4番・高橋 颯太(3年)がセンター前にはじき返し、1点を先制。長岡は二回にも、8番・佐納 光紀(3年)、9番・池山の連続ツーベースで1点、三回には二本のヒットとセカンドゴロでさらに1点。疲れの見える巻総合・鏡から三回までに3点を奪う。

 反撃したい巻総合は、毎回ランナーを出すものの、長岡・池山の巧みな投球の前にあと一本が出ず、なかなか得点が奪えない。巻総合は四回からエース・鏡を諦め、2番手・梨本 央河(3年)にスイッチ。梨本はランナーを出すものの、後続を抑え、長岡のスコアボードに初めて0を刻む。すると五回表、風向きが変わる。

 ここまでランナーを出しながらも0点に抑えてきたエース・池山に代えて、前日同様2番手・高橋 雅人(2年)にスイッチ。高橋雅は、先頭打者を見逃し三振に切って取るが、続く2番・白戸 悠生(2年)に左中間をやぶるツーベース、3番・三富 魁翔(2年)のヒットでピンチを招く。守備妨害で二死後、打席に立ったのは途中出場の梨本。カウント1ボール、ツーストライクから強振した打球は、レフトの頭上を越える2点タイムリーツーベース。1点差につめよると、ここでキャプテンの6番・田原 諒(3年)がレフトスタンドにたたき込み、4対3と逆転。さらにこのあともヒットと四球でチャンスを広げ、押し出し死球、2番・白戸のこの回2安打目となるタイムリーで一挙7点。試合をひっくり返す。

四回以降、好リリーフをみせていた巻総合・梨本だったが、六回、3本のヒットで満塁のピンチを招くと、3番・中野 志颯(1年)に押し出し四球、4番・高橋 颯にライト前へ2点タイムリーを打たれ、1点差まで詰め寄る。リードを広げたい巻総合だが、五回途中からリリーフした左腕・中野のテンポのいいピッチングに得点を奪えない。何とか1点を守り切りたい巻総合は七回から、外野を守っていたキャプテンの田原をマウンドへ。この田原、スローボールを有効に使いながら、七、八回を0点に抑える。

そして迎えた最終回。長岡先頭の4番・高橋颯がツーベースで出塁するが、続くバッターが送りバンド失敗で一死。進塁打で二死三塁となり、バッターはここまで1安打の7番・安達 練(3年)。フルカウントから田原が投じた六球目は、サード正面へのゴロ。巻総合・サードの山岸 大輝(2年)が落ち着いて打球をさばき、ゲームセット。巻総合が、初の8強に名乗りを上げた。

エキサイティングチーム:巻総合

 2011年の白根(ベスト4)、2012年の十日町糸魚川(共にベスト4)、2013年の(ベスト4)、村上桜ヶ丘(準優勝)、2015年の小出新潟(共にベスト4)など、新潟大会では公立校が旋風を巻き起こすことがよくある。そのほとんどが好投手を擁し、下馬評が高かったケース。だが事前の予想では名前が挙がらなかったにもかかわらず、シード校を撃破し、試合を重ねるごとに強くなっていくチームが存在する。今年の巻総合のように。

 巻総合の下馬評は決して高くはなかった。名前が県内でも名が知れた有力選手がいるわけでもない。だが上位進出という高い目標ではなく、目の前の一試合一試合を全力でプレーしているからこそ、持っている力以上のものが出せているのではないだろうか。それを象徴するかのようなプレーが、この試合でも何度かあった。

 例えば、三回の長岡の攻撃。連打で無死二、三塁のチャンスを迎え、バッターは4番・高橋颯。高橋颯の放ったセンターへ鋭く抜けようかという強烈な打球を前進守備の巻総合セカンド・吉澤 祐真(2年)が横っ飛びで好捕。一死となり、このあとセカンドゴロで1点を失うが、二死三塁のピンチで後続を断ち、最少失点で切り抜けた。五回の攻撃に関しても同じことが言える。6番・田原のツーランで4対3と逆転。二死ランナーなしの状況から、後続の打者がヒットと四球でつなぎ、この回さらに3点をたたき出した。

 もし三回の守備で、あの打球がセンターに抜けていたら、長岡のチャンスは続き大量得点できたかも知れない。もし五回の攻撃が逆転ツーランで終わっていたら、その後再び逆転されていたかもしれない。勝負の世界に“たられば”は禁物。だからこそ、巻総合の1つ1つのプレーが非常に意義があり、勝利につながったのだと言えるだろう。

 強豪校に比べると、ベンチ入りしている選手の体格は非常にきゃしゃだが、ひとりひとりが自分の個性を120%出してプレーできている。応援団の数も決して多くはないが、ひとりひとりの声が響き渡っている。そして試合中、好プレーをした選手を全力でたたえ、勝利の校歌を歌っている最中、涙を流す感激屋の監督。全ての歯車がかみ合ったからこそ、この結果につながっている。

 現高校名になって初の8強入りを果たした巻総合。[stadium]HARD OFF ECOスタジアム新潟[/stadium]での初の公式戦で対戦するのは日本文理。旋風を巻き起こす公立校が、強豪相手にどんな試合を見せるのか楽しみだ。

(取材=町井 敬史)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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