試合レポート

京都国際vs東山

2017.05.14

3時間44分の熱闘。京都国際が昨秋王者・東山を破る!

京都国際vs東山 | 高校野球ドットコム
上田(京都国際)

 5回終了時のスコアは3-1。

しかし東山京都国際、打線に力のあるチーム同士の試合がそのまますんなり終わるはずはなかった。

 先発マウンドに上がったのは共に背番号10の右腕。東山は力投派の高橋、京都国際は右サイドの中川英が立ち上がりに制球を乱したものの試合を作る。スコア同様、京都国際がやや押し気味に試合を進めていたが、東山は2点を追う7回、一死からキャプテン・長谷川が安打で出塁すると、3番・田中もライト前への安打で続き、4番・大西が左中間へ同点の2点適時二塁打を放つ。3連打で試合を振り出しに戻した。

 京都国際はその裏、3番・池田が二塁打でチャンスメイクすると、二死後、上野、清水、中尾が3連打。再び2点の勝ち越しに成功した。リードを奪うと直前の攻撃で中川英に代打を送っていたため、8回から背番号1の横江がマウンドへ。横江は球威のある右のオーバースローで、特にスライダーのキレが鋭くワンバウンドする球で空振りを奪える。ストレートに合わせつつ対応する、というのは難易度が高く、捨てるか狙うかハッキリさせないと攻略は難しい。

 終盤で2点を追う東山は粘投の高橋に代打・高倉を送るとセンター前に運ぶ。代走・木村宗が横江の牽制悪送球で二塁に進むと、小柄だが俊足の9番・宮口がセーフティ気味に転がし、一塁もセーフ。無死一、三塁からシャープなスイングを見せていた1番・増田は空振り三振に倒れたが、最後の1球がワイルドピッチとなり木村宗が生還。さらに一死二塁から長谷川があわや本塁打というレフトフェンス直撃の適時二塁打で同点とする。

 味方が追いついた直後の大事なイニングは、この回からマウンドに上がった金和が三者凡退に抑える。秋には横の変化とチェンジアップでかわすスタイルの投球を見せていたが、昨秋優勝の立役者は一冬越えて球威が増した。球速が上がることでより変化球が生きる。ミートセンスのある1番・安藤から始まった京都国際の攻撃はこれが4度目だったが、初めて3人で攻撃を終了した。

 9回は共に無得点に終わり、試合は延長戦へ。


 10回表、東山は一死から宮口が三遊間を破って出塁。さらに京都国際バッテリーに警戒される中、盗塁を決めた。増田のセカンドゴロで二死三塁となり、前の打席で同点の適時二塁打を放っている長谷川は四球で歩く。3番・田中のバットに期待がかかったが結果はショートフライ。もうひと押し足りなかった。

 ピンチを凌いだ京都国際はその裏、清水の安打と中尾の送りバントで一死二塁とすると、横江が変化球にタイミングを崩されながらもレフト前に運ぶ。一死一、三塁となって、東山内野陣は二遊間が盗塁もケアした前進守備。1点取ればサヨナラ勝ちとなる京都国際はスクイズを仕掛ける。しかし安藤は外角高めの球を空振りしてしまう。清水は三本間に挟まれタッチアウト。尚も二死二塁とサヨナラのチャンスは続いたが、ファールで粘った安藤も三振に打ち取られた。

 11回、四球や相手のミスで一死一、三塁のチャンスをつかんだ東山は金和の打席で一走・大杉がスタートを切る。京都国際の捕手・中尾は二塁に送球するが、誰もベースカバーに入っておらず、慌ててショート・上野がカットするが大杉が挟まれる間に三走・村井が余裕を持って6点目のホームに生還。この試合初めて東山がリードを奪った。

 その裏、京都国際の攻撃は2番からの好打順。しかし、児玉、池田が変化球を振らされ連続三振。観察眼に優れる東山の捕手・大杉の巧みなリードが光り、完全にタイミングを外された。勝利まであと一死と迫った東山は打席に4番の田中を迎えると、大杉は外一辺倒を選択。最悪歩かせても一発だけは許されない場面で最もリスクの少ないリードで結果的に四球となったが、ここまでは許容範囲内。しかし、続く上田への初球、変化球が抜けて背中に当たり走者がたまってしまう。東山にとって痛い死球となると、直前の守備で好プレーを見せた上野が起死回生の同点適時打を放つ。この試合5度目の同点劇でまだ決着がつかない。

 14時24分に始まった試合は3時間を優に超え、12回からは照明が点灯。東山は二死一、二塁としたが、球際に強い京都国際のセンター・安藤がこの試合3度目のダイビングキャッチで捕球し、勝ち越し点が入らない。

 13回からは無死一、二塁で任意の打順から攻撃を始めるタイブレークに突入。2番からの攻撃を選択した東山は長谷川がきっちりバントで送ると、田中が前進守備の三遊間を破る適時打を放ち1点を奪う。

 後続を断ち、1点で凌いだ京都国際もその裏、同じく2番からの攻撃を選択。バントの構えを見せる児玉に対し、1点もやらずに逃げ切りたい東山はサードとファーストが猛チャージ。ブルドッグと呼ばれるシフトで勝負をかけたが、児玉は無人の三遊間に転がすバント安打を決め無死満塁。低く構えたバットの位置から鋭い打球を連発していた池田は浅いレフトフライに倒れ一死となったが、続く田中がレフト前へ同点適時打を放つ。

 一死満塁から東山は内野はもちろん、外野も前進させサヨナラを防ぎにかかったが、上田の放った打球はレフト・田中の頭上を越え、3時間44分に及ぶ熱戦がついに決着。両軍合わせて31安打のシーソーゲームを京都国際が制し、ベスト4一番乗りを決めた。

(取材・写真=小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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