試合レポート

国士舘vs関東一

2017.04.17

試合巧者対決を制した国士館が4強へ!5回に関東一、まさかの落とし穴

国士舘vs関東一 | 高校野球ドットコム
準決勝進出を決めた国士舘ナイン

 国士館も関東一も、相手の隙を突く試合巧者ぶりを発揮してきたチームだ。しかしこの試合、関東一としては近年見たことのない隙が生まれ、国士館が勝利した。

 1回表関東一は、国士館の先発、左腕の石井 崚太を攻め、二死一、二塁の場面で、「自分が打ったら勢いに乗る」と思って打席に入った、この試合の先発投手でもある小川 樹が、ライナーでレフトの柵越えをする3ランを放つ。さらに続く泉 健太も、小川よりは高い弾道でレフトの柵越えをし、関東一が幸先よく、4点を挙げる。

 高橋 晴が注目される関東一の投手陣であるが、小川も最速が140キロを超え、スライダー、カーブ、チェンジアップなどを投げる好投手だ。ただし、小川は「自分の課題は力んでしまうことです」と言う。

 4点をリードしても、小川に力みが感じられた。2回裏、国士館は7番・嶋崎 優介のレフト柵越えの本塁打で反撃を開始。続く上原 隼は二遊間を破った打球が外野フェンスまで達する二塁打を放ち、石井の左前安打、1番・片岡 将也の二ゴロで生還する。3回裏にも金澤 諒平の二塁打、嶋崎の左前安打などで2点を挙げ、同点に追いつく。

 勝負を分けたのは、5回の攻防だった。5回表関東一は、9番の横山 尚輝が、投手のやや一塁寄りに高い飛球を上げると、これを一塁手が落球。ラッキーな出塁と内野安打、四球で一死満塁とする。続く溝淵 龍之介の痛烈な打球を、国士館の投手・石井がグラブに収め飛び出した三塁走者を刺して併殺。今度は流れが国士館に向かう。

 その裏一死後、4番・山本 恵太が左前安打で出塁したものの、続く金澤は投ゴロで併殺。4回から登板の高橋をはじめ、関東一の選手はベンチに戻ったが、捕手が打者走者の走路妨害をしたとして走塁妨害が適用され、一、二塁のピンチになった。


 ここで6番・田中 勇祐の中前安打、7番・嶋崎の内野安打がそれぞれ適時打になる。さらに一塁手の野選、三塁手の一塁への悪送球と、関東一としては珍しいミスが続き、5回裏だけで4点が入った。関東一としては、チェンジと思った直後に迎えたピンチに、気持ちの整理がつかない部分もあったのかもしれないが、関東一の米澤 貴光監督は、「あそこは頑張らないといけない」と語る。

 関東一も7回表に4番・溝淵の中犠飛、5番・小川の左前適時打などで2点。8回表も3番・増田 哲平の右前適時打など3本の安打を連ね1点を返すなど、1点差に迫る。

 しかしながら8回裏、国士館が安打2本と四球で二死満塁のチャンスを迎えると、5番・金澤は三ゴロを関東一の三塁手が一塁に悪送球。関東一らしくないプレーがまたも出て、2人が還り、勝負を決定付けた。

 国士館は石井、城田 真理人草薙 柊太と3人の左腕に、最後はエースの深澤 史遠と4人の投手を投入して、10対7で関東一を破った。

 「今日の負けはもったいない」と関東一の米澤監督は語る。5回で失った流れを変えることが、最後までできなかった。関東一はこの春、各選手にツーポジションを課した。事実上のエースの高橋は背番号6。背番号1の小川は一塁も守り、足が速い外野手の早坂 秀太が捕手もこなした。

 どんなアクシデントが起きるか分からない夏の大会。このツーポジションが機能して、チームを救う可能性は十分にある。ただ春はまだ、チーム作りの過程といった感じだ。このまま終わるチームではないはずだ。夏にどのようなチームを仕上げてくるか、注目したい。

 一方勝った国士館は、4月22日に早稲田実業と対戦する。国士館は秋季都大会の準決勝で早稲田実業に9対0で大敗している。それだけに「勝つ気持ちで臨みたいし、勝ち負けは別としても互角の試合はしたい」と国士館の永田 昌弘監督は言う。次の早稲田実業戦は、関東大会出場をかけた一戦であると同時に、夏に向けた重要な前哨戦になる。

(文・写真=大島 裕史

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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