健大高崎vs札幌第一
機動破壊の怖さは走るだけじゃない!
健大高崎vs札幌第一
健大高崎がお家芸の機動力を駆使した試合と言うより、札幌第一が健大高崎の機動力の影に怯え自滅した試合と言ったほうがいい。札幌第一の3投手の球数は162球。この少なくない球数は走者を一塁に置いたときに量産された。盗塁されることを恐れた捕手が大きく外れるボール球をたびたび要求するシーンが目立ったのだ。また、投手は一塁けん制を繰り返すことにより二盗を防ぐより自分のピッチングのリズムを狂わせることのほうが多かった。
健大高崎の盗塁は2回裏の大越弘太郎(2年)の1個だけで、失敗はやはり4回に1個だけあった。大きいリードや走るアクションだけ起こす偽走を繰り返し、バッテリーを揺さぶっても実際の盗塁企図はたった2つしかなかった。札幌第一が健大高崎の〝機動破壊″の幻影に踊らされたと言う意味がおわかりいただけると思う。
私が俊足の基準にする打者走者の「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」をクリアしたのは4人4回。今大会では至学館、創志学園と並ぶ最多人数である。1回に2番小野寺大輝(3年・左翼手)、2回に6番高山遼太郎(2年・右翼手)、3回に安里樹羅(3年・遊撃手)が全力疾走をして「健大は走る」というイメージを植え付け、札幌第一を自滅への道に導いた。健大高崎が勝つときはだいたいこういう勝ち方をする。
2回の3点は5番打者がエラーで出塁したあと、6番高山が右中間に二塁打を放って無死二、三塁とし、7番大越がライトに二塁打を放って2人を還し、さらに2死から今井が高めストレートを上から叩いて三遊間を抜くタイムリーを放ち、3点目の走者を迎え入れた。
広島の苑田聡彦・編成Gスカウト統括部長は帰り際、笑いながら「高山くんよかったねぇ、親父より足が速いよ」と言っていたが、この高山選手とは高山健一・広島スカウトのご子息である。お父さんが職人タイプの右投げ右打ちの内野手だったのに対して、この高山遼太郎は右投げ左打ちの外野手で、親父さんになかった俊足という武器を備えている。
高山だけではない。1番今井、3番山下航汰(一塁手)、7番大越、9番大柿廉太郎(捕手)も2年生である。そしてこの日は今井が3安打1打点、山下が7回の満塁ホームランを含む2安打4打点、高山が1安打、大越が1安打3打点と大活躍した。大柿は安打こそ出なかったがスローイングで見せ場があった。
最後に投手を1人紹介する。2番手で登板した小野大夏(3年)である。旧チームではレギュラー捕手を務めていた選手で、新チームになった秋から投手を始めたという。経験の浅さからくる未熟さは随所に見えた。走者が出るとスピードが5キロくらい落ち、セットポジションのフォームもしっくりこない。足から動かないで、手と足を一緒にスタートさせようとするのだ。
しかし、球が速いという魅力がそれらの欠点を補ってあまりある。この日のストレートの最速は144キロ。変化球はカーブ、スライダーがあり、いずれも変化は大きいが、キレは発展途上にある。この選手が安定すると健大高崎は強い。
オススメ!
第89回選抜高等学校野球大会特設サイト