試合レポート

都立日野vs法政二vs市立橘

2016.11.27

年内最後のOP戦!主力5人欠きながらも戦い抜いた都立日野、攻撃力充実の法政二、ハイレベルな野手揃いの市立橘!

都立日野vs法政二vs市立橘 | 高校野球ドットコム

佐野 瞭太(法政二)

  対外試合が27日が最後というチームも多いのではないだろうか。
 今年都大会ベスト4入りした都立日野は、秋季大会で横浜に接戦を演じた法政二、2015年春の県大会ベスト4入りを果たし、神奈川県内では実力ある公立校として注目される市立橘と練習試合を行った。

 都立日野はベスト4入りの原動力となったエースの小林龍太や主将で4番を打つ大石祐輝八王子戦で本塁打を放った須山倫など、計5人の主力選手たちがインフルエンザにより欠場。かなり戦力ダウンした形で試合に臨む形となった。

 まず第1試合の都立日野vs法政二の一戦は法政二が序盤から試合を優位に進めた。清水翼を捉えて、1回裏から2点を先制。さらに2回裏にも1点を追加。さらに5回裏には4番佐野の左前安打から5番倉持の適時二塁打で1点を追加し、さらに6回裏には、二死一、三塁から3番大高が右翼線を破る適時三塁打で2点を追加すると、4番小佐野の右前適時打で7対0と大きく点差を広げる。その後も法政二のソツのない攻めが決まり、8対0とした。その後、1点を返されたが、3投手のリレーで8対1で勝利した。

 法政二は県大会はベスト16だけあって、振れる選手が非常に多い。特に4番で主将の佐野はどっしりとした構えをした右打者で、構えから雰囲気の良さが伝わってくる。弧を大きく描いたスイングでボールを捉え鋭い打球を飛ばす選手だ。ただ絹田監督は、下半身を使えない打撃フォームに課題があると見ている。
「まだ上半身で振りにいっているところがあります。まだバーンと振りにいっているだけなんですよね。これでしっかりと体の回転を生かして振りにいけば、もっと良くなると思います」
 秋ではショートを守っていた選手で、今は肘を痛め、DHとしての出場だが、素質は非常に高いものを持った選手であるに違いない。佐野も下半身の使い方を課題にしており、さらにいかに芯で捉える確率を高めるかも課題にしていた。

 そして第1試合で投げた投手陣のレベルの高さも目に付いた。特に2番手右腕の池田大晟(1年・178センチ72キロ)はコンパクトなテークバックから、130キロ近い速球、スライダー、カーブ、スプリットを適度に投げ分ける好右腕。さらに3番手右腕・前芝航太(1年・179センチ72キロ)も腕の振りが良い好右腕で、指がかかったときは130キロを超えているのでは?と思わせるボールがあった。あとはもっと攻める気持ちで投げることができれば変わっていくだろう。


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羽二生和樹(市立橘)

 第2試合の市立橘vs法政二の試合は市立橘の打線が爆発した。1回表に先制を許したが、2回裏に2点を入れて逆転すると、3回裏にも3点。さらに4回裏にも打者一巡の攻めで5点を入れて4回まで10対1とした。都立橘で目についたのは、打線レベルの高さだ。ボールの待ち方がよく、何より強く振れる選手が多いこと。積極的にボールを打ちに行けて、さらにコンタクト能力が高いように、トップに入ってからインパクトに入るまでの動作が無駄がない。「強く振ることを求めているだけ」だと福田茂監督だが、選手1人1人の動きを見ると技術的に高いレベルに達しており、公立校としてはかなりハイレベルな打線だった。

終盤、3点を取られたが、市立橘が自慢の打力を存分に生かして、13対3で大勝した。
大勝した市立橘。だが率いる福田茂監督は「今日はたまたま当たっていましたが、サインミスやミスなどもあり、まだ課題は多いチームです」とコメント。秋季県大会では1回戦敗退。ミスが多発した形で、負けただけに走塁、守備、攻撃の精度をより高めることを求めていた。
 そして第3試合は都立日野vs市立橘の一戦に。市立橘は右腕の斎藤由宣が登板。斎藤はまだ1年生で、秋の大会で先発登板をしている投手で、オーバーハンドから威力ある速球を投げる投手で将来的には130キロ台も見込める投手であった。その斎藤は初回に1点を取られたが、粘り強い投球で守り抜き、後続を抑えると、3回裏、一死一、三塁から1番武島聖の右前適時打で同点に追いつくと、その後、押し出しで勝ち越し。さらに4番羽二生和樹の右超え適時二塁打で4対1と突き放した。

 打力が高い市立橘で際立つ活躍を見せていたのが1番武島聖(遊撃手・右投げ右打ち)と4番羽二生和樹(右投げ右打ち 右翼手)だ。武島の良さは軽快なフットワークを生かした守備。捕ってから投げるまでも早く、本人に守備について伺うと、やはり「捕ってから早く投げる」ことを意識しているようだ。福田監督曰く「今日はうまくいっていましたが、まだエラーばかりの日もあって、まだ安定感がないところが課題です。それができるといいですね」と語るように、常にアウトを演出できる遊撃手になれれば、もっと選手としての評価は高くなるだろう。振り出しからインパクトまでシャープなスイングが光る選手だ。本人は2学年上の好遊撃手・福田 耕平(現・横浜国立大)を憧れに持っており、いずれは福田を超える遊撃手になりたいと意気込む。攻守ともにセンスがある選手で、うまくいけば県内屈指の遊撃手になる可能性を持った逸材だ。


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佐藤秀(都立日野)

  そして羽二生は、164センチ71キロとマッチョ体型の1年生外野手。腕っぷしの強さが自慢で「僕はパワーだけです」と笑うが、スイングの鋭さ、インパクトの強さが1年生離れしており、この2試合で9打数4安打と大当たり。3試合目では2本の長打。それも逆方向への長打と、高い打撃技術を披露した。今はボールを長く見てしっかりと見極めることをテーマに取り組んでおり、多少始動が遅くてもスイングスピードの速さでしっかりとついていけている。課題は野球選手としての能力向上だ。

「まだ彼は走塁にしても、守備にしても、野球で大事な駆け引き、意識にかかわる部分を勉強中であり、一歩ずつ伸びてほしいと思います」と福田監督も期待を込める。ちなみに彼の父親はアイスホッケーのコクドでプレーしていた選手で、父親も身長は小さいが、腕っぷしが太い選手で、体型は父譲りだという。いずれにしろ期待の逸材であることは間違いない。その後、市立橘は5回裏に1点を入れて5対1と突き放す。
7回表に 都立日野の8番高尾の適時打や犠飛で3対5と2点差に迫られたが、8回裏に途中出場の下郡の適時打で6対3。投げては7回からリリーフした下郡が抑えて2連勝。とても良い形で公式戦を締めくくった。2015年のベスト4の躍進で多くの1年生が集まったが、スタメンは1年生が主体。来春~来秋にかけて躍進が期待できるだろう。

2連敗で今シーズンの練習試合を終えてしまった都立日野。主力選手5人も欠けた中での試合は、かなり苦労するものがあっただろう。それでも、2試合目に登板した右下手投げの1年生・小田が力投を見せ、また本来は3番だが、4番に座った佐藤秀が7打数3安打と意地を見せた。

 弧を大きく描いたスイング軌道はヘッドスピードが非常に速く、捉えた打球は非常に速い。多少姿勢を崩されても流し返す技術もあり、さらに脚力も高い。いつもはレフトだが、この日は二塁・一塁もこなし、まさに大忙しの1日だったが、ただ今日のように選手が欠ける事態になったとき、佐藤秀が複数しっかりと守れるようになると心強いことは間違いないだろう。

 今年は秋季大会ベスト4入りし、ますます注目が集まる都立日野。より上にいくのは全体な底上げが不可欠。試合後、都立日野の嶋田監督が選手たちに求めていたのは、配球を読んだり、駆け引きを学んだりすることだった。「今年は練習も、トレーニングもよくやる選手たちなんです。だけどそれだけではダメなんです」と語るように、都立日野の選手たちはより高い意識レベルを求められる立場となっているのだ。
 主力の離脱が多くの選手の成長のきっかけになることを期待したい。

(取材・文=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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