明大中野八王子vs都立小山台
明中八王子・小林知被安打6の完投 白熱の投手戦を制す
完投した小林知(明大中野八王子)
どちらか1チームは本大会に出場できないのは、あまりに惜しい。そんな気持ちを抱かせる好試合であった。
第21ブロックCは、3チームのブロック。代表決定戦からの登場になる都立小山台は、先週は雨で流れ、この日が初登場。「先週は文化祭だったので、雨で流れたこと自体は良かったのですが……」と都立小山台の福嶋 正信監督。しかし相手は明大中野八王子。いきなり強豪と対戦することになった。
明大中野八王子の先発は背番号11の小林 知樹。夏はベンチ入りしているものの、公式戦は初先発である。立ち上がりは、微妙に曲がるストレート系の変化球が決まり、2者連続三振という快調ぶり。しかし「公式戦は初先発。優しい子なので、ほっとしたのかもしれません」と明大中野八王子の椙原 貴文監督。
都立小山台の3番小倉 俊に左前安打を打たれると、4番佐伯 哲明は死球、5番郡司 達也はきれいに流してライト線への二塁打を放ち、都立小山台はあっさり1点を先取する。続く佐藤 怜はセンターに痛烈な打球を放つが、明大中野八王子の中堅手・島村 遼太が好捕し、傷口を広げない。この後、小林知は立ち直り、都立小山台に付け入るスキを与えない。
一方都立小山台の先発は背番号10の戸谷 直大。戸谷は1回裏、明大中野八王子の俊足の1番大池 稜に、レフトへの二塁打を打たれたものの、後続を断つと、球威のある球に抜群の制球力で、守りにテンポをもたらす。
1点が重い展開で試合は6回裏明大中野八王子の攻撃も二死。ここで6番天野 翔太の打球は、ライトへ。これを右翼手・小倉が目測を誤り、記録の上では三塁打となる。小倉は背番号1で本来は投手。「もともと外野ではないけれども、ライトのエラーが大きかった」と都立小山台の福嶋監督。続くは中堅手として好守備をみせている6番島村が三遊間を破り、明大中野八王子は同点に追いついた。
さらに明大中野八王子は7回裏、この回先頭の8番池田 諒平がレフトオーバーの二塁打。9番小林知が三塁に送った後、1番大池は、遊撃手と左翼手の間に打球を打ち上げたが、これが安打になる。しかし三塁走者の池田はスタートを切れない。けれども、一死一、三塁という、仕掛けやすい状況になった。打席には、2番の飯嶋 圭吾。飯嶋は1ボール1ストライクからの3球目、飯島はややボール気味の球をうまくさばいて左前安打とし、明大中野八王子が勝ち越した。
「あそこはエンドランです。フライになったり、空振りしたりしたら、こっち(監督)の責任。とにかく強制的に振らせました」と明大中野八王子の椙原監督。積極策が功を奏したわけだ。
8回表都立小山台は、力投の戸谷を代え、代打藤澤 祐輔が四球で出塁したが、二盗に失敗。続く1番高橋 春樹が二塁打を放ったが、得点に結びつかない。
それでも8回裏は、戸谷に代わりマウンドに上がった小倉が三者凡退で明大中野八王子打線をぴしゃりと抑える。
9回表都立小山台は一死後、5番郡司の左中間二塁打を、中堅手がボール処理をミスする間に郡司は三塁に。都立小山台ベンチは郡司に代わり、玉井 聡一郎を代走に送る。続く佐藤 雄大は三ゴロ。玉井は思い切って本塁を突くが、間一髪アウト。あと一歩届かず、明大中野八王子が2対1で緊迫の投手戦を制し、本大会の出場を決めた。
明大中野八王子は夏の練習試合はなかなか勝てず、苦しんだという。それゆえ、「いい意味で開き直りました」と椙原監督は言う。それでもこの日は、小林知が好投したし、都立小山台の福嶋監督が先発を予想していた後山宗一郎もいる。この日は後山、小山瞬の3、4番に当たりが出なかったが、1番俊足の大池とうまく機能すれば、強力でなくても、うるさい打線になる可能性はある。
都立小山台との接戦を制しただけに明大中野八王子の椙原監督は、「素晴らしいチームとやらせてもらいました。ブロックの代表として、しっかりがんばりたい」と本大会に向けての抱負を語った。
一方敗れた都立小山台であるが、本大会での活躍を見たかった好チームであった。中でも、戸谷、小倉の両投手が素晴らしかった。2人ともそうであるが、特に小倉の投球を見ていると、センバツに出た時のエース・伊藤 優輔(中大)の投げ方にどこか似ている。「(伊藤が)大学の練習が休みの時は、練習を見てくれています。当然影響は受けるでしょう」と福嶋監督。今の選手たちは、都立小山台がセンバツに出場したのをみて入学しており、「才能があります」と福嶋監督は語る。夏とはメンバーの大半が入れ替わったが、今後も注目したい好チームであった。
(文=大島 裕史)
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