八王子vs東海大菅生
八王子悲願の甲子園初出場!延長11回東海大菅生・伊藤力尽きる
人気の清宮幸太郎擁する早稲田実が敗れ、平日に行われた試合であるにもかかわらず、1万8000人の観衆を集めて行われた西東京大会の決勝戦は、甲子園出場をかける一戦に相応しい、大熱戦になった。
結果として東海大菅生にとって痛かったのは、絶対的なエースである伊藤壮汰の立ち上がりの乱れ。1回表八王子は、2番竹中裕貴の四球、3番椎原峻の死球などによる二死一、三塁の場面で、8番小野田直道が中前安打を放ち、まず1点。
その裏東海大菅生は1番小田桐陸の難しい遊ゴロを、八王子の遊撃手・竹中が軽快にさばき、先発の2年生エース・早乙女大輝を助ける。
2回表八王子は、一死後2番細野悠が死球で出塁すると、すかさず二盗。9番早乙女は三振で二死になったものの、1番山口駿の一ゴロは内野安打に。一塁手から、カバーに入った伊藤投手にボールが渡るスキを突き、細野は一気に本塁を突いた。一瞬のスキを突かれたこの1点は、東海大菅生には響いた。得点には結びつかなかったが、山口も二盗に成功。1回にも竹中が二盗をしており、序盤2回で八王子は3盗塁と、東海大菅生バッテリーを揺さぶった。
さらに3回表は、中前安打の4番保條友義を6番川越龍がレフトオーバーの二塁打で還して、3-0と八王子がリードする。
序盤打者8人を完璧に抑えられていた東海大菅生であるが、3回裏二死後、9番高橋陸はセンターに低いライナー。八王子の中堅手・椎原が突っ込むも捕球できず、外野に転がる間に、高橋は三塁へ(記録は三塁打)。1番小田桐の左前安打で東海大菅生は1点を返す。
この1点が、東海大菅生の反撃の狼煙になる。5回裏、本来は4番も打てるエースで5番の伊藤がレフトフェンス直撃の二塁打を放つと、8番小玉佳吾の左前安打などで還りまず1点。続く前の打席で三塁打を放っている高橋は、左中間を破る二塁打を放ち、小玉が還り、同点に追いつく。
ここで八王子は先発の早乙女に代わり、米原大地を送る。最速が140キロを超え、今大会でも準々決勝の早稲田実戦などで好リリーフをみせている米原であるが、投入がやや早い感じがあった。しかし決勝戦だけに、そうした懸念は全く感じさせない力投をみせる。
八王子は7回表、安打2本と四球で、無死満塁のチャンスを迎える。しかし小野田の三ゴロを、主将で三塁手の落合宏紀が落ち着いて本塁に送球し、アウト。続く川越を、東海大菅生のエース・伊藤が魂のこもったスライダーやストレートで、三振。石塚冬汰は右飛に倒れ、無死満塁のチャンスを生かせない。
東海大菅生は8回裏、9番高橋が敵失で出塁すると、1年生で2番の田中幹也がしっかりと送る。すると3番落合を敬遠気味に歩かせる。しかし4番深澤祐太は二ゴロに倒れ、試合は延長戦に突入した。
延長10回表、東海大菅生の伊藤は、2人を三振に仕留めて三者凡退で切り抜けるなど、中盤から終盤にかけてエンジンがかかってきた。とはいえ、1人で投げている伊藤の球数は、10回が終わった時点で138球。疲労も貯まってきた。
10回裏東海大菅生は、一死後1番小田桐が中前安打で出塁すると、田中はキッチリ送る。すると八王子はまたしても、落合を歩かせ、深澤で勝負。深澤はまたしても二ゴロに倒れた。
11回表、八王子の8番細野の三遊間深い当たりを、東海大菅生の1年生遊撃手・田中が好捕したものの、一塁は間に合わず、内野安打に。米原が送り、打席には1番の山口。山口は4球目を叩くと、右中間の深いところに達する三塁打になり、細野が生還し勝ち越す。続く竹中は四球で、一死一、三塁とし、3番椎原は初球をスクイズ。一塁手の前に転がる野選となり、貴重な追加点を挙げた。
ロングリリーフが懸念された米原であるが、11回裏も球威は衰えず、5番本橋実生は左飛、6番で力投の伊藤は三塁強襲打で出塁したものの、続く金子佳樹は遊ゴロ。6-4-3と渡る併殺が成立し、八王子が優勝を決めた。
東海大菅生は、3年続けて決勝戦で涙をのんだ。それでも、準決勝の日大三戦の完投に続き、この日も延長11回、153球を投げ切った伊藤壮汰の力投は、素晴らしかった。
昨年のチームには、勝俣翔貴(国際武道大)という、投打の柱がいた。勝俣が抜け、その役割を担った伊藤であったが、冬場に足を痛め、春季大会では、背番号20だった。けれども夏は、キレのあるスライダーを武器に、誰もが認めるエースとしてチームを引っ張った。最後は力尽きる形で敗れたが、今後の活躍を期待したい好投手であった。
そして東海大菅生も3年続けて甲子園に出場しても何らおかしくないチームを作り上げてきた。ただ最後のほんの少しの勝運が足りなかった。1年生遊撃手の田中 幹也など、1、2年生に逸材が多い。来年こそ、壁を超えるチームができる可能性は、十分にある。
一方八王子は、決勝進出3回目で、悲願の甲子園出場を決めた。これまでも、西東京では強豪として名が通ってきたが、あと一歩届かなかった。今年のチームは秋季大会の1次予選敗退から始まっている。
それでも、春季都大会では、一戦一戦力を付け、8強に進出し、夏につなげた。チームとして大きかったのは、エースとして活躍した左腕の早乙女 大輝と、好リリーフをみせた米原 大地という2人の2年生投手の成長だ。打線はヒーローが日替わりで生まれ、その都度、チームの層が厚くなった。
準々決勝の早稲田実に続き、創価、東海大菅生という、西東京を代表する強豪、好選手を下し、混戦と言われた西東京大会を制しての、文句なしの甲子園出場である。と同時に八王子市にとっても、初の甲子園出場でもある。地元の声援も受けて、甲子園での活躍を期待したい。
(文=大島裕史)
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