宮崎大宮vs富島
富島の夢を破った機動破壊・宮崎大宮
【第2シード・富島】2回戦:7対6日章学園、3回戦:7対2高鍋農
【宮崎大宮】1回戦:7対4宮崎北、2回戦:13対3宮崎農(6回コールド)、3回戦:5対4聖心ウルスラ(第7シード)
ノーシードから、勝負強さをみせて勢いにのる宮崎大宮が、第2シード・富島に挑んだ準々決勝第2試合は、今チーム初顔合わせとなる。
機動力野球の宮崎大宮が、富島の強肩キャッチャー・木村から走れるか?富島のエース・吉田を打てるか?投手陣が富島打線を抑えることができるか?
一方、第2シード・富島に、唯一、不安要素があるとしたら、エース・吉田の調子(制球)。戦前の予想は、そのようなところだった。しかし、予想だにしない結末となる。
宮崎大宮は、2回と3回。
四死球で出塁した走者が二盗を試みるも、2度、木村の強肩に阻まれた。木村の捕球から二塁への送球は(手元の計測で)1.94秒、1.86秒。宮崎大宮は、そう簡単に走れないことが身を以て分かった。
しかし、それでも機動力野球を貫く宮崎大宮。なんとしてでも自分たちのペースへ持ち込もうとする。0対0のまま迎えた4回表、宮崎大宮の攻撃前。
ベンチ内の大富 省三監督から「勝ちたいとか!?徹底しろ!!2ストライクになったら変化球は打たんでいいぞ!」選手を鼓舞する大きな声がバックネット裏まで聞こえた。
すると、制球が定まらない富島のエース・吉田から、連続四球で無死一二塁のチャンスをもらう。ここでミスが出て宮崎大宮の二走・黒木が先制のホームを踏んだ!
ここで、4番・日高がセカンドの左を抜く中前適時打を転がす!宮崎大宮2対0富島。
続く、5番・石橋が敵失で出塁した後、二死一三塁。一走・石井が二塁へスタートをきる!富島・木村が二塁へ送球!同時に、絶妙のタイミングで三走・石橋がホームを狙った!富島ショート・日髙がホームへ返球してクロスプレーになるも、間一髪セーフ!宮崎大宮が、ホームスチールで3点目をあげた。
5回表、宮崎大宮9番・川末が四球で出塁すると、ついに二盗に成功!1番・竹本も四球を選ぶと、富島・吉田がマウンドから降りる。続く2番・黒木は、富島2番手の黒木彰から死球を受ける。
宮崎大宮が無死満塁のチャンス!ここで、3番・寺原の内野ゴロ間に三走・川末が4点目のホームイン!さらに、一走・寺原が二盗に成功!
宮崎大宮が完全に流れをつかみ、富島は浮足立ってくる。絶対的な扇の要・木村にまで動揺がみえる。相手盗塁時に、捕球後のボールが手につかず、送球できない。2度、簡単に二盗を許してしまう。
こうなると、さらに宮崎大宮が牙を剥く!
6回表、宮崎大宮は9番・川末の中前適時打、1番・竹本の内野安打、2番・黒木の左前適時打の3連打で2点を追加!6点をリードした。
7回表の攻撃前。「攻めろ!攻めんと駄目!」大富監督の檄がとぶ!
すると、4番・日高の右安打、5番・石橋の右安打、6番・清水の中前適時打!7番代打・鮫島(左打者)の左前安打!8番代打・神田(左打者)の中前2点適時打!圧巻の5連打3打点!宮崎大宮9対0富島。
このまま終わりたくない富島は、7回裏に内野ゴロ間の得点から敵失も絡んで2点を返したが、後続が倒れてゲームセット(7回コールド)。ノーシード宮崎大宮に、完全にのみこまれて準々決勝敗退。甲子園初出場は叶わなかった。
機動力で打ち勝つ宮崎大宮野球が、準々決勝でも通用した。
ランナーが出れば進塁打を転がす意識はもちろんのこと、右サイドスローの富島・黒木彰がカウントをとりにくるファーストストライクを逃さず、センターより逆方向へ飛ばす理想的なバッティングを徹底した。バットのヘッドが先に出て、ひっかけてしまうこと、打ちあげてしまうことは一切なかった。
投げては、先発の左腕エース・新井 宏斉(3年)が、直球120キロ前半、スローカーブ90キロ後半を使い分け、打者のタイミングを上手くかわした。6回を被安打3、失点0、この上ないピッチングだった。
九州大会を経験し、数々の強豪校や本格派投手と対してきた富島に勝った宮崎大宮は、富島がこれまでに対戦したことが少ないタイプ、力勝負を避けて王道からかけ離れたチーム。言ってしまえば、結果の通り、富島を不意に落とし穴に落とせるようなチームだった。
ノーシードから準決勝進出を決めた宮崎大宮は、「宮崎商vs宮崎日大」との勝者と激突する。
夏を終えた富島
濵田 登監督の就任2年目となる2014年4月に、濵田監督と甲子園に行きたいと思って富島に入学した選手たち。吉田、木村らの注目選手は1年夏の大会から出場。
秋の1年生大会ではチーム初優勝。2年夏の大会では、横山 楓投手(現 國學院大)を擁して準優勝した宮崎学園に、激闘の末、3回戦で敗れた。現チームとなり、昨秋・準優勝、今春・初優勝で2季連続となる九州大会出場を経て迎えた夏だった。
宮崎県の高校野球史に数々の歴史を刻み、勢力図を揺るがして、着実に成長してきた富島ナインには、当然、学校創立100周年でもある今年の夏に「甲子園初出場」の期待がかかったが、涙をのんだ。
学校関係者やOB・OG、日向市民らが野球部に寄せていた熱が、ここで冷めることなく、更なる新時代をつくりたいところだ。新チームの動向に期待が集まる。
(文=三角 竜之)
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