試合レポート

埼玉栄vs川越東

2016.07.18

埼玉栄、好投手・星野を攻略し4回戦へ

 投打の柱星野裕帆(3年)擁する川越東対前の試合最終回二死無走者から2点差を逆転し勢いに乗る埼玉栄との一戦は、意外な展開となった。

 先発は埼玉栄が年生右腕・米倉貫太川越東は試合前日調子の良かった星野が前の試合に続き先発する。この試合埼玉栄はやや布陣を変えてきた。これまでの2試合マスクを被っていた1年生で4番キャッチャー渡部壮大をスタメンから外し、この試合3年生の渡邉真輝(3年)がマスクを被る。また4番には鈴木貴大(1年)が入り試合が始まる。

 じゃんけんで勝ち、表攻めをとった川越東は、前の試合同様に初回からイニシアチブを握ろうと試みる。1回表、埼玉栄・米倉の立ち上がりを攻め立て、先頭の野口眞生(3年)がライト前ヒットを放つと、続く香取敬大(3年)がきっちりと送り一死二塁とする。

 続く浪江龍太郎(3年)はセカンドゴロに倒れ二死三塁となるが、4番・星野は四球で出塁し二死一、三塁とし5番・青山陽哉(2年)を迎える。青山はサードへのファールフライに倒れたかと思われたが、サードが落球してしまう(この場面、ライン上の打球であったため彼にはきっちりと一塁まで走って欲しかった)。

 すると、埼玉栄ベンチはこのタイミングですかさず伝令を入れ呼吸を整える。ここは落ち着きを取り戻した米倉が青山を三振に打ち取り無失点で抑える。

 埼玉栄もその裏、川越東・星野の立ち上がりを攻め、先頭の海崎雄太(1年)がセンター前ヒットで出塁すると、続く石井潤也(3年)の所でエンドランを掛けるがファールとなる。追い込まれた所で埼玉栄・若生監督は送りバントに切り替えるが失敗に終わり走者を進められない。それでも、3番・西本拓馬(3年)の所で一走・海崎が盗塁に成功し一死二塁とするが、後続が倒れ得点を奪えない。

 川越東は2回表、この回先頭の中前拓也(3年)がライト越えの二塁打を放ち無死二塁とすると、続く小泉篤司(3年)がセーフティーバントを決め無死一、三塁と絶好の先制機を得る。小泉はすかさず初球盗塁を決め無死二、三塁とチャンスを広げ8番・小澤光(3年)を迎える。ここで小さなミスが生まれる。

 小澤はセカンドゴロに対し、三走・中前が本塁へ突入するが、アウトとなる。この場面あえてどちらのミスかは言わないが、それでも、一死一、三塁から続く角好生(3年)がセーフティースクイズを決め先制するが、後続が倒れ1点で攻撃を終了する。川越東サイドとすれば、この日の星野の調子を考えると、初回、二回のチャンスでもう1,2点は欲しい所であったのではなかろうか。


 3回以降、米倉は変化球も決まり出し、徐々に調子を上げていったのに対し、星野は序盤何とか抑えてはいたが、指の影響もあったか前の試合同様に変化球が決まらずこの日絶不調であった。それでも、前の試合は相手に直球一本で待たれても三振を奪えるほど直球が走っていたので、事なきを得たが、この日はその直球も走らず案の定3回以降、徐々に埼玉栄打線に捕まり始める。

 3回裏、埼玉栄はこの回先頭の立川永一郎(3年)が左中間へ三塁打を放ち無死三塁とする。川越東・星野の踏ん張りに遭い二死まで持って行かれるが、二死後、3番・西本がセンター前タイムリーを放ち同点とする。

 そして4回裏この試合一つ目の大きな山を迎える。

 埼玉栄は、この回先頭の渡邉が四球で出塁すると、若生監督は続く茂森健(2年)に強攻の指示を出す。これが当たり無死一、二塁とチャンスが広がる。7番・茶屋吹祐馬(1年)がきっちりと送り一死二、三塁とすると、埼玉栄ベンチは早くも米倉を諦め、代打に渡部を送り勝負に出る。ここで、星野の変化球がすっぽ抜けワイルドピッチとなり、埼玉栄が1点を勝ち越すと、これで楽になったか渡部もライト前へタイムリーを放ち3対1とし星野をマウンドから引きずり降ろす。

 埼玉栄は、代わった二番手・関谷航平(3年)からも、二死から9番・立川が右中間へ二塁打を放つと、続く海崎も四球を選び二死一、二塁とする。ここで、2番・石井がフルカウントから三塁線を破る2点タイムリー二塁打を放ち5対1とし試合の主導権を握る。

 だが、川越東もすぐに反撃を開始する。この回からマウンドに上がる二番手・1年生左腕の嶋田に対し、一死から1番・野口がライト越えの二塁打を放つと、続く香取敬大(3年)がセンター前ヒットを放ち1点を返す。さらに香取はすぐ二盗を決め一死二塁とする。ここで3番・浪江が左中間へ大きな当たりを放つがセンターの好捕に遭うと後続も倒れ反撃は1点で終わる。しかもこの日当たっていた野口がこの回の走塁で足を攣ってしまう。

 野口は一回目の治療で復帰するが、その後6回裏の守備でサードライナーをジャンプしながら取った際に今度は患部が悪化してしまい途中交代を余儀なくされる。これは川越東にとって誤算だった。

 それでも5回以降立ち直った関谷が、途中足を攣りかけながらも4者連続三振を奪うなど好投を見せ、中盤以降はやや川越東ペースで試合は進む。

 川越東は、6回表二死から7番・小泉が四球を選ぶと、埼玉栄・嶋田の一塁牽制間にディレードスチールを決め二塁を奪う。ここで関谷がライト前ヒットを放つが、ライト立川の好返球もあり小泉は本塁憤死しどうしても2点差にする事ができない。

 迎えた8回表、この試合二回目の大きな山を迎える。


 一死から主砲星野がライトスタンドへ打った瞬間それと分かる特大本塁打を放ち追撃を開始する。2点差とし、嶋田をマウンドから引きずり降ろすと、代わった3番手・冨屋竜生(2年)に対しても、川越東の攻勢は続く。

 5番・青山が四球で出塁すると、続く中前がライト前ヒットを放ち一死一、三塁とし、押せ押せの場面であったのだが、ベンチは7番・小泉の所でセーフティースクイズの指示を出す。もちろん小泉に細かいミスがあったのだが、結果は本塁封殺に終わり後続も倒れこの回の反撃は1点で終わる。

 この場面、埼玉栄守備陣は二遊間が下がり、1点はOKという守備体形であっただけに、彼の足なら併殺もほぼないだけに強攻や場合によってはプッシュバントなども面白い場面であったと個人的には思うのだが。

 最終回、何とか星野まで打順を回したい川越東であったが、冨屋の前に三者凡退に打ち取られ万事休す。結局、チャンスを確実に物にした埼玉栄が5対3で勝利し4回戦へ駒を進めた。

 まず、埼玉栄だが、前の試合の勢いそのままに試合に入り、打線は活発で二ケタ安打を放った。投げては米倉、嶋田の1年生コンビが好投したのは大きかった。この試合要所で好守備が生まれるなどノーエラーと守備も堅かった。スタミナ面に不安を残す1年生が中心で投げているだけに今後も継投で凌いでいく試合が続くであろう。ここは、エース大谷の奮起に期待したい。

 一方の川越東だが、この結果は痛恨であろう。4回の大量失点は重かった。この日、今まで見たこともないような星野の乱調は誤算であった。また、関谷も好投手なのだが彼は公式戦ほとんど投げていない。4回の場面はその経験値の無さが出てしまったか。2点タイムリー二塁打を打たれた場面は打たれた云々より、フルカウントにしてしまったことが大きかった。

 その後落ち着きを取り戻し好投していただけに、ややもったいない入りであった。また、チームのキーマン野口の負傷も大きかった。とここまで散々、恨みつらみを書いてきたが、今年のチームは昨年のチームと比べられながらもチャレンジャー精神でよくやってきた。星野もこの日投げる方でうまくいかなかった分、打つ方で意地を見せた。来年は大きくチームは生まれ変わるが、青山、苅部、田村などが中心となり先輩たちの悔しさを晴らしてもらいたい。

(文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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