試合レポート

都立小山台vs立教池袋

2016.07.15

10点ビハインドからの逆転満塁弾!都立小山台、ドラマチックすぎる展開で立教池袋に勝利!

 「初回に10点のビハインドを追い、途中、雨で試合が中断する。その中断明け、雨にも負けず投手が好投。じわじわと逆襲を開始し、満塁ホームランで逆転。勝利を収める」
もし野球漫画や小説、ドラマでこの筋を書いたら「何言ってるんだ?」と白けられてしまうだろう。だが、現実のものとなった。

 1回裏、立教池袋は1番・滝本 旺大がヒットで出塁。4番・漆原 啓介がタイムリーを放ち先制すると、5番・渡辺 康介も右中間を深々と破るタイムリーツーベースで続く。さらに二死一二塁から7番・塩澤 昂大がレフトへとヒットを放つが、これを都立小山台レフトが後ろに逸らす間に、ランナー2人が一気に生還。塩澤も3塁へと進む。二死から嵐のような攻撃にすっかり落ち着きを失う都立小山台ナイン。その後もエラー、四球などでランナーを溜め、2番・畑 祐輝の2点タイムリー、3番・野田 宏太朗の2点タイムリーツーベースを打たれるなど失点を重ね、あれよあれよと気付いてみれば10点。チャンスをつかみ相手の隙にキッチリ乗じた立教池袋が一気に試合の主導権を握ることに成功する。

 だが都立小山台は意気消沈することなく前を向く。3回表、四球で出塁の坂田 宙斗を二塁に置き、2番・渡辺 憲杜がレフトポール際に2ランホームランを放ち、2点を返す。

 そして3回裏二死満塁、立教池袋の攻撃、バッターは9番・新倉 大輔。フルカウントとなったところで雨脚が強くなり、試合は一時中断。これがこの試合を大きく変えることになる。
初回にイレギュラーと言っていい10点を奪った立教池袋は「このまま何事もなく」試合を進めたかったはず。もちろん、相手は都立小山台。このまま終わるとは思ってはいなかったろうが、リードするものにとってこの水入りは仕方ないこととはいえ嫌なはずだ。
一方、何かを変えたかった都立小山台。これが恵みの雨とばかりにスタンドの大応援団は勢いを増し、3回表のホームランで潮目の変わった流れをさらに力強く手繰り寄せていく。


 約1時間20分の中断後、都立小山台は1点を失うもののその後バッターを三振に取りピンチを脱すると、続く4回表にに強くなる雨に乗じ連打でプレッシャーを与え、押し出しとエラーなどで3点を奪う。
投げては1回途中からマウンドに上がった矢崎 裕希が、降りしきる雨をものともせず好投。4回裏、三者凡退で抑えると雄叫びを上げチームを鼓舞。チームの追い上げムードを盛り上げ、8回まで攻撃を3人で終わらせる快投を見せる。
こうなってくると、やはり追うものが強い。

 都立小山台は5回表には矢崎、6回には渡辺康介の犠牲フライでそれぞれ1点を追加し、7対11。じわじわと立教池袋を追い詰めていく。

 そして迎えた運命の8回表。ヒットと四球で無死満塁のチャンスを作った都立小山台は、3番・川嶋 海人の内野ゴロの間に1点を返し、8対11とその差を3点に詰める。続く4番・木戸 碧は四球を選び、一死満塁。都立小山台応援団は大盛り上がり。球場全体が一種異様な雰囲気に包まれる。そんな中、5番・宮川 慶悟が放ったのは、打った瞬間わかる特大のレフトへの逆転満塁ホームラン。この回さらに1点を追加した都立小山台が13対11とついにリードを奪う。
結局、9回に1点を取り合った末、14対12で都立小山台が劇的な逆転勝利をおさめ、球場からは大きな歓声が上がった。

 ぬかるんだグラウンドに滑るボール、タイミングにより強くなったり弱くなったりを繰り返す雨と風という逆境はあったが、条件としては立教池袋都立小山台も同じだった。
だが、対応する心構えと準備が違ったように見えた。たとえば、矢崎がゴロを処理する際に地面に手をついてしまった時、都立小山台ベンチはさっとタオルを差し出して手やグラブを拭かせる時間を作っていた。
一方、立教池袋はそういったブレイクをキャッチャーが意識的に取らせることはあっても、ベンチとして時間は取らなかった。攻撃をするにしても、雨だから余計に、と球数を投げさせようと腰を据える都立小山台に対し、立教池袋はどこか打ち急いでいるような感覚。
それほど「異常事態」といえる状況に余裕なく追い詰められていたというあらわれかもしれない。

 初回に10点を取りリードするも、大逆転を許す。この残酷すぎるドラマで敗者として主役になった立教池袋だが、戸惑いながらも最後まで気迫を見せ戦い抜いた彼らもまた、まぎれもない勇者だった。顔をあげて、また次なる戦いに向け進んでほしい。

(文=青木 有実子)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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