試合レポート

蕨vs狭山ヶ丘

2016.07.14

「2年生エース小長、強打の狭山ヶ丘打線を1安打完封」

  3年前の夏もそうであったが、相性などもあるのかもしれない。昨秋ベスト4の狭山ヶ丘と”埼玉の機動破壊”チームとして知られるとの一戦は、点差以上にが投打に圧倒した。

 狭山ケ丘・藤野優斗(3年)、小長由侑(2年)と両エースが先発し始まったこの試合、先制したのはであった。

 3回表、は一死から1番・馬場洋平(3年)がショートゴロエラーで出塁すると、さらにワイルドピッチで馬場が二進し一死二塁とする。続く五幣諒(3年)もショートゴロを放つが、またしてもショートが一塁へ悪送球をし、一死一、三塁とする。さらに、続く米山恭平(2年)の所で一塁走者・五幣がすかさず二塁へ盗塁し一死二、三塁とチャンスを広げると、米山はセンターへきっちりと犠飛を放ちがこの回ノーヒットで1点を奪う。

 は4回表もこの回先頭の宮野広大(2年)がレフト前ヒットを放つと、続く葛葉雪斗(2年)の所でエンドランを掛ける。これが見事に当たりショートへの内野安打となると、さらに相手の一塁送球が悪送球となり無死二、三塁とチャンスが広がる。ここで7番・大谷民斗(3年)がライトへ犠飛を放ち1点を追加すると、続く加藤廉(3年)がセンター前タイムリーを放ちが3点差をつける。

 一方の狭山ヶ丘だが、・小長の前に打線が沈黙する。小長は特段速い球を投げる訳ではないが、制球が良く直球、変化球共に両コーナーに投げ分け、強打の狭山ヶ丘打線を全く寄せ付けず序盤3イニングをパーフェクトに抑える。

 3点のビハインドを背負ったこともあるが、狭山ヶ丘の攻撃はどこかチグハグであった。4回裏、一死から2番・濱川裕吾(3年)が四球を選び、この試合初めて走者を出すとベンチは続く濱田祐太(3年)の所ですぐに盗塁のサインを出す。盗塁は成功したかに思われたが、濱田がキャッチャー送球に対しての守備妨害を取られチャンスは萎む。


 6回裏には、一死から9番・中島龍生(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、ベンチは強攻を指示する。だが、続く川村駿介(3年)がショートゴロ併殺に倒れチャンスを広げられない。

 7回裏には、二死から4番・増島緩人(3年)が四球で出塁すると、続く永田琢己(3年)の所でベンチはエンドランを仕掛ける。結果はサードゴロとなるが、サードのエラーを誘い二死一、二塁とこの試合初めての複数走者を出し、スコアリングポジションへ走者を進める。だが後続が倒れ得点を奪えない。

 一方、藤野の前に中盤以降抑えられていたは、8回表、チャンスを迎える。一死から五幣がレフト前ヒットを放つと、続く米山もライト線へ二塁打を放ちチャンスは広がったに思われたが、一塁走者が本塁へ行くと思った米谷が二塁を大きくオーバーランしてしまい挟殺されると、その間に本塁を狙った五幣も本塁で刺されチャンスは潰える。

 は最終回にも走塁ミスが出る。この回代わった二番手左腕・安田尋登(2年)を攻め、一死から5番・葛葉がファーストへの内野安打で出塁すると、すぐさま盗塁を決め一死二塁とする。続く八木優希(3年)もセカンドへの内野安打を放ちチャンスが広がったかと思われたが、三塁コーチャーが腕をグルグルと回し二塁走者は本塁へ突入する。結果は楽々アウトとなってしまいまたしても追加点を奪えない。

 こういうミスが出ると得てして流れが変わるものだが、この日の小長は3点あれば十分の投球内容であった。

 8回裏狭山ヶ丘は、一死から代打・皆川拓深(3年)が死球で出塁すると、続く中島は左中間へ大きな打球を放つ。だが、センター八木に好捕され万事休す。結局この試合一回も連打が生まれなかった狭山ヶ丘は、小長に1安打完封を許し早々に大会から姿を消した。

 は、この日はとにかく小長の好投に尽きる。おそらくキャッチャー宮野と共に各打者に相当対策を立てたのであろう。2年生バッテリーに研究の跡が見られた。次の相手もDシード大宮東戦と強豪だが、対策を立てる時間はたっぷりとあるだけに次戦も好投を期待したい。その一方で売りである走塁だが、2回表、一死一塁レフトフライで一塁走者がタッチアップするなどこの日その一端は見る事はできたが、やや終盤走塁ミスが多かった。この点は次戦への懸念事項であろう。

 一方の狭山ヶ丘は、藤野は良く投げていたがこの日は守備が乱れた。やはりというか守備の乱れで失った流れを再度持ってくることは容易ではない。だが、これまではそれもある程度織り込み済みで打ち勝ってきたのだが、この日は看板である打線も奮わなかった。こうなってしまう前兆はあった。前の試合でも決して打線が爆発して勝ってきたわけではなく、まだ大会に入れていない野手もいたのであろう。新チームでは、2年生左腕安田が残るが、メンバーはほぼ3年生であっただけに一からのスタートとなる。いずれにせよ、狭山ケ丘にとっては早すぎる夏が終わった。

(文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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