試合レポート

前橋育英vs青藍泰斗

2016.05.23

どちらもスケール抜群の逸材が登場した一戦!

前橋育英vs青藍泰斗 | 高校野球ドットコム

石川翔(青藍泰斗)

 楽しみな逸材が多く出た試合。徹底的にレポートしていきたい。
この試合の注目は、青藍泰斗のエース・板垣理音(りお・3年)だ。最速145キロを投げる速球投手として注目されているが、それ以上の速球、将来性を見せたのが、青藍泰斗の先発・石川翔(2年)だ。

 いきなり常時140キロ台中盤を連発し、最速146キロを計測した。これには驚きを隠せなかった。この投手がこれほどの速球を投げられるのはフォームにある。178センチ75キロと均整がとれた体格をした投手だが、板垣がずっとがっしりしているのだが、体の使い方はどの投手よりもうまい。肩ひじの柔軟性はもちろん、肩の強さ、背筋力の強さもあり、投手としてはこれ以上ないほど肉体的な素質に恵まれた投手。ランナーがいないところからセットポジションから始動し、左足を真っ直ぐ上げる姿はバランスが良い。その後、左足を二塁方向へ送り込んで、お尻から先行するヒップファーストで、体重移動を行い、前足をゆったりと着地すると、左腕を高々と掲げて、右腕を大きく引いて、トップを作る。テークバックの動きは大きく、しっかりと胸を大きく張ることができる。そしてリリースに入るが、真っ向から振り下ろす本格派らしい投球フォームだ。体の軸を鋭く回旋することができていて、いわゆる全身をバランスよく使ったフォームといえるだろう。

 投げ方だけで非凡な逸材だと伺えるが、それだけで勝てるピッチングができるとは限らないのがこの競技の難しさである。県大会で3試合連続本塁打を記録した3番飯島大夢(2年)にストレートを思い切り引っ張られ、先制本塁打を許すと、2回裏には暴投で1点を許してしまう。さらに3回裏には再び飯島に適時打を浴びたところで降板。悔しいマウンドとなった。石川は、2回以降は、130キロ後半にがたっと落ちた。いきなり全力投球でペース配分を忘れてしまったのだろう。まだまだ勢いだけで投げて来たところがあり、駆け引きをしながらピッチングができていない。石川のフォームならば縦の変化球で勝負できるはず。フォーク、カーブなりの変化球をマスターできるだろう。そういう技を身に付けるよりも、まずは誰にも打たれないストレートを目指して、ストレートに強弱をつけることから始めるだけでも、だいぶ違いは出てくるはず。すべて100パーセントではなく、普段は7割~8割だけど、ここぞというときに10割の力で抑えられる術を身に付けていってほしい。


前橋育英vs青藍泰斗 | 高校野球ドットコム

佐藤優人(前橋育英)

 2番手で登板した板垣はこの日は調子が良くないのか、投球フォームを見ると上半身主導で力みが入ってしまい、左腕を使って、体全体を使って腕を振ることができない。常時135キロ前後(最速138キロ)で、140キロを超えるストレートはなかった。いかに投手は体全体を使って鋭く腕を振って投げられる準備ができている可だと痛感される。これほどガッシリ体型の力投派は、井口和朋(北海道日本ハムファイターズ)を思い出す投手。投球フォームを見ると縦の動きをしようとしているが、左肩の開きが早くなってしまい、上手く捻りを入れて投げていない。腕の振りが横振りになり、さらに球離れも早く、そのため甘く入ったボールをことごとく打たれ、5回までに0対8のリードを許してしまう。

 ただ6回裏、縦の動きで投げることを意識したのか、カーブを多投。それに面食らった前橋育英打線を三者凡退に打ち取る。この日は腕の振りが横振りになってしまったことが、ストレートが走らない要因だったのだろう。

 もう一度、体全体を使ったフォームで投げられるためのドリルを夏までに再三積み重ねていった方がよいだろう。
 一方、前橋育英の先発・佐藤優人は下半身主導のフォームで投げられる投手で、昨年は130キロ前半だったが、この日は130キロ中盤~130キロ後半とコンスタントに投げることができており、両サイドだけではなく、高低に使うことができる。さらにスライダー、カーブをきっちりと投げ分けることができており、まさに投手のお手本ともいうべき投球。高卒プロタイプではないが、大学レベルならば、早くも実戦登板が期待できる筋の良さを持った投手であった。

 そして7回表には、根岸崇裕(2年)が登板。191センチの長身を誇る右腕だが、高橋光成のような右腕へ成長することを期待されていると思うが、まだ体力レベル、フォーム技術を見ると、まだまだ課題は多い。それでもコンスタントに130キロ前半のストレートを投げ込んでおり、1点を失ったとはいえ、スライダーとのコンビネーションが光った。高橋のように体全体をダイナミックに使って、強く腕を振って、投げられる形ができれば、140キロ台、145キロ~150キロも投げられる潜在能力は十分に秘めている。あとはどれだけ自分を追い込んで、身体を大きくする努力、フォームを追求できるかにかかっているのではないだろうか。

 また打線も8得点を挙げたように強力。取り上げたい打者が多くいるが、その中でも先制本塁打を打った飯島をピックアップしたい。スタンスを大きく広げた構えから速球、変化球にもついていける柔軟性があるのが魅力。スイングも鋭い上に、さらにフォロスルーも大きい豪快な打撃フォームから放たれる打球の速さはピカイチ。県大会で3試合連続本塁打したのも十分に頷ける打者であった。彼は清宮世代だが、本当にこの世代はスラッガー候補性が本当に多い。もう1試合見てみたいと思わせるほどの潜在能力を秘めた選手であった。

(文=河嶋宗一、写真(img48~)=佐藤 純一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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