試合レポート

東海大市原望洋vs千葉経大附

2016.05.03

秋から洗練さが増した東海大市原望洋 この日も攻守で圧倒!

東海大市原望洋vs千葉経大附 | 高校野球ドットコム

先発・中村亮太(千葉経済大附)

 関東大会を目指して始まった準決勝。[stadium]千葉県野球場[/stadium]はぎっしりと埋まった。
 2013年以来の関東大会出場を狙う東海大市原望洋と、2008年以来の関東大会進出を決めたい千葉経大附。この試合は初回からスリリングな試合展開に。

 1回裏、東海大市原望洋は二死満塁のチャンスを作り、6番山本が三遊間を押そう鋭い当たり。これを千葉経大附の遊撃手・石川優が横っ飛びで捕球。その後、すぐに体勢を直して送球。アウトとなり、ファンプレー。これに勢いに乗った千葉経大附は5番長谷川武(3年)がライトスタンドへ飛び込む本塁打を放ち、1点を先制。さらに一死一、二塁のチャンス。ここで千葉経大附はチャンスを作りたかったところだが、捕ゴロ併殺となり、チャンスをつぶす。

 追加点を許さなかった東海大市原望洋。すぐに反撃を開始、無死から7番金久保優斗(2年)が失策で出塁し、8番具志堅駿(3年)が右中間を破る適時三塁打を放ち、同点。具志堅はバッテリーミスで生還し、2対1と逆転に成功。さらに無死一、三塁のチャンスから2番藤本誠啓(2年)の併殺崩れの間に1点を返す。

 5回表、一死一塁から4番峯尾京吾(3年)が右越え二塁打を放ち、5番塚本翼(2年)の適時打で4対1とする。千葉経大附中村 亮太(3年)はなかなかの好投手で、右スリークォーターから投げ込む直球は、常時135キロ前後(最速138キロ)のストレート、120キロ台のスライダーのコンビネーションで勝負する投手。130キロを記録するのが1,2球ぐらいだった昨秋と比べるとかなり球速が伸びている。スライダーも120キロを超えていて、コントロールも悪くない。

 打たれたところは一瞬だけ甘くなったボールなのだが、それを逃さない東海大市原望洋打線は間違いなく、レベルアップしている。


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島孝明(東海大市原望洋)

 千葉経大附打線も、140キロ近い速球を投げ込む金久保から7安打を放ち、二死一、二塁のチャンスを作る。これを見て東海大市原望洋は、エース・島孝明(3年)が登板。島の登場で俄然と沸く千葉県野球場。

 島は140キロ台の速球を連発し、7番保谷を146キロのストレートで空振り三振に打ち取る。
 その島の快投に打線も勢いに乗ったか。1番だが、長打力抜群の倉石がライトスタンドへ飛び込むホームランで1点を追加。

 7回表、島は快投。ここから島の投球内容を具体的に振り返っていきたい。まず8番石川を高めの142キロのストレートで空振り三振。9番石川は外角に決まる128キロのスライダーで空振り三振。1番小川はストレートで左飛に打ち取ると、8回表、代打・菅野を142キロのストレートで空振り三振。3番長壁はこれも外角に決まる130キロの外角スライダーで空振り三振。さらに4番坂巻も128キロのスライダーで空振り三振と打者7人と対戦して、6奪三振と結果として見れば素晴らしいといえる。しかし今日の島は145キロ越えが2球ほどで、ほとんどが140キロ~144キロ。どちらかといえば控えめな内容だった。

 スピードだけではない。調子が良くないのか、リリースポイントが安定せず、高めへ浮いてしまうストレートが多かった。それでも余りあるスピードで相手打者は思わず空振りしてしまうので、打ち取ることができていたものの、課題が残る内容だった。6奪三振することができたのは、ストレート以上に良かった130キロ台のスライダーとカーブがあったからだ。スライダーは打者の手元で曲がるスライダーでやや曲りすぎなように見えるが、相当鋭い曲りであり、このスライダーは高く評価されそう。100キロ台のカーブは上手く抜けて、しかもストライクゾーンに入る。そこから一気に140キロ台のストレート。並みの高校生ではそう対応できるものではない。なかなか小賢しさがある投手なのである。今日の投球内容では決して満足してほしくはないが、次の試合へ向けて、修正をしていってほしい。

 8回裏、再び東海大市原望洋は、チャンスを作り、二死一、二塁で、千葉経大附は左腕・佐藤を投入したが...1番倉石が高めのストレートをうまくおっつけて今度はお得意の逆方向への3ラン本塁打でサヨナラ勝ちで3年ぶりの関東大会出場を決めた。


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サヨナラ本塁打の倉石(東海大市原望洋)

 倉石の魅力は木更津総合戦でもお伝えしたように逆方向に鋭い打球が打てること。スクエアスタンスで構えて、投手の足の動きに合わせて上手くシンクロさせて、インパクトまで無駄のないスイングができており、下半身が突っ込まず、軸回転でしっかりと振り切ったスイングができる。東海大市原望洋の選手たちは全体的にがっしりしている選手が多いが、その中でも倉石は、太ももの太さが段違い。下半身の筋力的な素質が最も優れた選手で、それも長打力の源になっているだろう。長打だけではなく、逆方向にクリーンヒットをかさなえており、この打撃技術は舌を巻くものがあるといっていい。

 打力ならば千葉県どころか、関東地区でもハイレベルなものがある。甘いコースを見逃さない鋭さも光り、これからマークが非常に厳しくなると思うが、その中でも一打を打てる勝負強さを出していきたい。

 また全体的に野手が伸びており、8番具志堅は逆方向に鋭い打球が打てて、さらに軽快な三塁守備と8番打者だが、なかなか面白い選手だ。また適時打を放った塚本は、なかなかパンチ力ある左打者で、さらにライトから素晴らしい強肩を見せており、今後も見逃せない打者だった。

 この日、2安打を放った荒川太一(2年)も、スクエアスタンスで構える姿は力みがなく、こちらもインパクトまでロスのない鋭いスイングを見せる左打者で、今後の試合でも強打を披露できるか。今年の東海大市原望洋は、能力自体は県内ナンバーワンと呼べるほどハイレベルな高い選手が集まっていたが、試合運びに課題があった。それが大きく改善されている。

 敗れた千葉経大附も、7安打を放つなど、打力は高く、要所で盗塁を仕掛けたりと、この試合ではつながらなかったが、各選手の能力は高い。内外野ともに鍛えられており、球際の強さはさすが強豪校と感じさせた。コールド負けを喫したが、それでも千葉経大附の総合力は4強入りしたチームと思わせるものはあった。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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