試合レポート

花咲徳栄vs聖望学園

2016.05.02

花咲徳栄打線、追い込まれ本領発揮

花咲徳栄vs聖望学園 | 高校野球ドットコム

綱脇(花咲徳栄)

 花咲徳栄vs聖望学園という県内有数の強豪私学の対決となったこの試合、春の大会ながら両チーム共に、ブラスバンドにチアリーダーが登場しバックネット裏の観客もほぼ満員と、球場内はまるで夏を思わせるような雰囲気に包まれた。その熱気も相まってか白熱した内容となった。ちなみに、昨春もベスト8でこの両者がぶつかり、その時は高橋昴が先発した花咲徳栄に対し聖望学園が勝利している。

 花咲徳栄が2年生の綱脇、聖望学園が西澤と両右腕が先発し試合が始まる。
試合は初回から点の奪い合いとなった。

 まず、先攻の花咲徳栄は二死から3番・岡崎がセンター前ヒットで出塁すると、続く西川もセンター前ヒットで続き二死一、三塁、さらに、5番・楠本も四球でつなぎ二死満塁とする。ここで、続く山本はセカンドゴロに倒れ、西澤は立ち上がりをうまく乗り切ったかと思われたが、ややプレーを焦ったセカンドがこの打球をファンブルする間に二走・西川も本塁を奪い花咲徳栄が2点を先制する。

 だがその裏、聖望学園もすぐに反撃を開始する。一死から2番・松元が四球で出塁すると、続く平柳がショートへの内野安打を放ち一死一、二塁、さらに4番・大野の4球目をキャッチャーがファンブルする間に一死二、三塁とすると、二死後、5番・大地が四球でつなぎ二死満塁とする。ここで、6番・西野がフルカウントからライト前へ2点タイムリー二塁打を放ち同点とすると、さらに中継が乱れる間に一走・大地も一気に本塁を奪い3対2と逆転に成功する。

 2回以降は、綱脇、西澤両投手が何とか立ち直り、ピンチこそ招くが無失点で切り抜ける。

 迎えた4回表、花咲徳栄はこの回先頭の山本がセンター前ヒットで出塁すると、続く西銘のショートゴロを今度はショートがエラーをし、無死一、三塁となった所で聖望学園・岡本監督は早くも西澤を諦め右サイドスローの中川へスイッチする。中川は8番・綱脇のピッチャーゴロを二塁へ送球し併殺を狙うが、その送球がやや左方向に逸れ無死満塁と傷口を広げてしまう。だが、その後の満塁のピンチを9番・野本のショートゴロの間の1点のみに抑え3対3の同点で前半戦を終了する。

 一方、花咲徳栄は2回以降ピンチこそ招くが、無失点で切り抜けていた綱脇を5回で諦め、6回からは二番手・清水がマウンドへ上がる。

 聖望学園は6回裏、その清水に襲い掛かる。
この回先頭の渡部が右中間への三塁打を放ちチャンスメイクすると、一死後、9番・中川がスリーバントスクイズを決め1点を勝ち越す。さらに、二死後、津田がライト前ヒットを放ち再びチャンスメイクをすると、続く松元が四球を選び二死一、二塁とする。ここで、3番・平柳がライト前タイムリーを放ち5対3とする。

 6回を終え2点差、もちろん、ここからエース高橋昴が登板すれば話は別だが、聖望学園が裏攻めであり、これまでの直接対決の相性や花咲徳栄の三回戦までの打線の湿り具合などを考えると、やや花咲徳栄は厳しいかと思われたが、ここから花咲徳栄打線が地力を見せ始める。


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渡部(聖望学園)

 まず7回表、先頭の千丸が左中間への二塁打で出塁すると、続く高橋哉もレフト越えのタイムリー二塁打を放ちすぐに1点を返す。
さらに、無死二塁、一打同点という場面で、たまらず聖望学園ベンチはエースの加藤をマウンドへ送る。

 花咲徳栄は一死後、4番・西川がセンター前ヒットを放ち一死一、三塁とすると、二死後、同点を狙った花咲徳栄は足で揺さぶりをかけダブルスチールを狙うが、聖望学園内野陣は動ぜず、落ち着いて三塁走者を牽制しながら一走・西川を刺し、この回は事なきを得る。

 だが、8回表、花咲徳栄打線は加藤を捉える。この先頭の山本がセンター前ヒットで出塁すると、続く西銘のエンドランがセカンドゴロとなり一死二塁とする。ここで、加藤は8番・ピッチャーの清水に四球を与える。この四球が余計であった。続く野本が三塁線を破るタイムリー二塁打を放ち同点、さらに1番・千丸がセンター前タイムリーを放ち逆転に成功すると、2番・高橋哉が四球でつなぎ一死満塁としクリーンアップを迎える。まず3番・岡崎が犠飛を放ち1点を追加すると、続く西川もライト越えのタイムリー二塁打を放ち2点差、さらに5番・楠本が四球を選び再び満塁とすると、続く山本がショート強襲2点タイムリーを放ち10対5とする。花咲徳栄はこの回一挙6得点のビックイニングを作り試合を決めた。

 まず聖望学園だが、今大会好調の打線は、この日もその力を見せつけ花咲徳栄を追い込む所までは行っていた。問題は投手陣だ。もちろん、この日は守備陣が足を引っ張ったこともあるが、旧チーム松本のような柱になれる投手が現状見当たらない。岡本監督も期待する中川が一本立ちしない限り頂点へは立てないであろう。打線は計算できるだけに投手陣の再整備が夏までの課題となる。

 一方の、花咲徳栄だが、今大会高橋昴を温存しながらのこの戦いぶりはさすがだ。2年生の綱脇などに経験を積ませながら勝ち上がり、まずここまでは順調にきている。三回戦まで不安視されていた打線も、追い込まれてスイッチが入ったか、この日は全く別の姿を見せた。さらに、この日は代打で出場し結果を残せなかったが、本来はこの打線に春先の怪我で出遅れている秋4番を打っていた隈本が加わる。だが、そうなると当然誰かが外れることとなる。現状のメンバーで十分機能しているだけに岩井監督も悩ましい所であるが、いずれにせよ、彼が夏までにきっちりと調整してくるとなると、ますます花咲徳栄打線は手が付けられなくなる。夏の本命であることに変わりはない、そう言わしめるこの日の戦いであった。

 (文=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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