試合レポート

愛知産大三河vs西尾東

2016.04.30

改めて、野球はマインドが左右するということを思い知らしめた試合

愛知産大三河vs西尾東 | 高校野球ドットコム

寺澤投手(愛産大三河)

 風で砂塵が舞い上がり、再三試合が細かく中断するという悪コンディションだったが、選手たちは、気持ちを切らさずにプレーしていた。そして、試合そのものは、前半は立ち上がりのピンチを1点でしのいだ西尾東が、攻める気持ちを示していったが、リードして、守りきろうとしたところを自力では勝る愛産大三河が逆にチャレンジャー的にぶつかっていって、8回に追いつき延長で振り切った。最後は風も愛産大三河に味方したというそんな試合だった。

 西尾東の試合の入りはあまりよくなかった。いきなり送球ミスと連続四球で無死満塁としてしまった。愛産大三河は4番池田君だったが、内野に打ち上げてしまった。インフィールド飛球でアウトとなったが、それが風に流され落球してそれぞれ走者が進んで1点が入った。こんなプレーから始まると、果たしてどんな乱戦になっていくのだろうかとさえ思わせる始まり方だった。

 しかし、愛産大三河は結局この回無安打で1点止まり。西尾東の神尾君も投げていくうちにジブのリズムを取り戻していっていたそして、西尾東は2回に二死一、二塁から9番眞子(まなこ)君の中前タイムリー打で追いつく。さらに、3回は5番吉田君の左翼への2ランで勝ち越し、7回にも安打で出た村野君をバントで送り、またも眞子君が右前打で帰して3点差として、そのまま西尾東の逃げ切り体制かと思われた。

 ところが、ここから展開が一転する。
 8回は一死から5番の代打山本彪雅君が左翼線二塁打すると、鈴木翔馬君も右中間を破る三塁打で1点を返し、続く橋本君も途中から入っていた選手だったのだが、しっかり中前打して1点差とした。愛産大三河は控えでいた選手が出場機会を得て、ことごとく役割を果たしていったことが、最終的には逆転へつなげていたといってもいいだろう。

 9回にはあたれば一発の力もあるという3番の藤江君がその一発を放ってついに同点。こうなると、試合展開としても愛産大三河に流れていくのは、致し方ないのだろうか。9回に一死一二塁を三直併殺で逃れた愛産大三河は10回、先頭の鈴木翔馬君が相手失策で出塁する。何でもない内野ゴロだったのだが、送球の瞬間に大きな砂塵がきて一塁手が見えなくなったというプレーだった。盗塁で二塁へ進んでから一死後、8番鈴木太陽君が中前打してこれが決勝点となった。


 西尾東としては、ここまで何とか神尾君が踏ん張ってきていたのだが、8回からは流れがどんどん思惑とは違う方向へ行ってしまったという印象の試合となってしまった。

 西尾東の寺澤康明監督は、「後半からは、前半とはまったく違う試合になってしまいました」と、8回以降で試合そのものが違う展開になってしまい、それを止め切れなかったことを悔いた。
 昨春から、竹治玄造部長と立場が入れ替わった愛産大三河の櫻井春生監督は、冷静に分析していた。
「最初は受けて立っていたようなところがあったと思うんですよ。それが、初回に貰ったチャンスで1点だけでしょ。あそこは3~4点取らなくてはいけないところなんですけれどもね…。結局、それからも、ずっと受けていてしまって逆転されて…。それが、7回から開き直ったみたいになって、逆に相手が逃げ切ろうと受けて立ってしまって、それで9回は計算外みたいな本塁打も出て同点になって、これで流れを引き寄せられました」
 愛産大三河は、8回一死からの4連打、それがすべてだったが、起用された選手がことごとくそれぞれの役割を果たしたことも大きかったと言えるだろう。西尾東としては、最後に突然の砂塵で守りを乱された不運もあった。終始気になった強風が、最後に微妙に影響した試合でもあった。

 そして、お互いの試合展開としては、まさに状況によって異なってくるという、野球はマインドに影響される競技だということを再認識させられる試合でもあった。

 (文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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