横浜vs東海大相模
2人の本格派による、期待通りの投手戦
先発・藤平(横浜)
全国屈指の激戦区、神奈川を代表する神奈川横浜高と東海大相模高が準々決勝で激突するとあって、ただでさえ大観衆が押し寄せる神奈川大会のメインスタジアム・[stadium]サーティーフォー保土ヶ谷球場[/stadium]には肌寒い小雨模様の中、試合開始1時間前にもかかわらず席を探すのが困難なほどの超満員となった。
全国的な強豪、神奈川横浜と東海大相模のがっぷり四つに組んだ組織対組織の攻防以上に私が注目したのは神奈川横浜・藤平 尚真(3年)と東海大相模・北村 朋也(3年)の投手戦だ。ストレートの最速は藤平が最速151キロ、北村が148キロという全国的に見ても屈指の本格派右腕だが、神奈川横浜が藤平を押し立てたのに対して東海大相模の先発は技巧派左腕の山田 啓太(3年)だった。
1回表に神奈川横浜の4番・村田 雄大(3年)が早々と左中間スタンドに2ランを放ち、北村の温存は裏目に出たなと思ったが、山田はそれ以降大きく縦に割れるカーブとチェンジアップを交えた緩急や打者の踏み込みを許さない執拗な内角攻めで神奈川横浜の強打線を封じ込めた。
神奈川横浜の藤平は山田とは対照的に力強いストレートで打者を圧倒し、とどめは縦・横2種類のスライダーで刺すという本格派の見本のような投球で、8回途中まで東海大相模の強打線を2点に抑えた。8回裏、1死一塁の場面で3番田中にライトスタンドに放り込まれ、同点にされたところで2番手の石川 達也にマウンドを譲ったが、それまでは4回に内野手と捕手のエラーで2点を失っただけで、ほぼ完璧に近い投球を見せた。
投手・北村(東海大相模)
最速151キロのストレートは強風による寒さもあって144キロに減速したが、バットを押し返すボリューム感や、左肩の早い開きがない投球フォームの長所などもあって、スピードガン表示以上の威力を打者の頭に刻み込んだ。
2ストライクに追い込まれた打者のストレート待ちをあざ笑うように、藤平は勝負球にスライダーを多投した。7回3分の1を投げて9三振を奪った結果球の内訳を見れば、ストレート1個に対してスライダーは8個。これを見たら打者はスライダーに照準を絞りそうだが、それが簡単にできないほど刻み込まれたストレートの印象は強かったということだろう。この投球を見て今秋ドラフトの1位指名は間違いないと思った。
東海大相模の北村は6回表、2死一、二塁の場面でリリーフに立った。昨年夏の甲子園大会で見たときは、左肩上りや体の開きの早さなど投球フォームのクセの強さが目立ったが、ひと冬越してそういう粗っぽさが払拭され、見事な本格派に脱皮していた。
ストレートは自己最速に5キロ及ばない143キロ。それでも改善された投球フォームがスライダー、カーブの精度を上げ、藤平ができなかった内角攻めも交えて神奈川横浜打線を苦しめた。5回3分の1を投げて被安打8は打たれすぎだが、三振を7個奪い、四球を1つしか許さなかったのはさすがと言っていい。
天気は最後まで晴れ間が見えず、肌寒い強風に身震いし続けた3時間超えゲームだったが、2人の本格派による期待した通りの投手戦が演じられ、非常な満足感を得て次の試合に臨めた。
(文=小関 順二)
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