試合レポート

創志学園vs東海大甲府

2016.03.24

舞台俳優さながらのピッチングを見せた高田萌生

創志学園vs東海大甲府 | 高校野球ドットコム

創志学園の先発・高田 萌生

 創志学園の先発、高田 萌生(3年)に最も注目した。
昨年夏の岡山大会笠岡商戦のピッチングが非常に印象に残り、秋の明治神宮大会を見て少しがっかりした。夏は横浜時代の松坂 大輔(ソフトバンク)を彷彿とさせ、秋は肩を振って投げる現在の松坂を彷彿とさせると自著にも書いた。それから4カ月たって高田はどう変わったのか、再び“松坂2世”の輝きを取り戻したのか。

 試合後、日本ハムの今成 泰章スカウトは「変化球から立て直した。中盤からどんどんよくなったね」と言い、苑田 聡彦・広島スカウトは「あの投げ方なら故障はない。夏までに短い距離の走り込みをさせたらもっとよくなる」と評価した。

 今成スカウトの「変化球から立て直した」とは、変化球主体のピッチングに変えることによって相手打者のタイミングを外しながら、徐々にストレートを立て直し、ピッチング全体のレベルを上げていった、という意味だろう。

 5回まで毎回安打(6安打)を許したように、立ち上がりはよくなかった。ストレートは130キロ台が多く、強い打球をたびたび許していた。それが4回になって配球をガラリと変えた。4番・松岡 隼祐(3年)にカーブ→スライダー→スライダーで3球三振に切って取ったシーンが第二幕の幕開け。

 スライダーは縦・横2種類あり、三振を取りに行くときは横変化、カウント球では縦変化という使い分けが目についた。これにカーブとツーシームがあり、ツーシームはいいキレ味ながら中盤以降はほとんど投げなかった。


 終盤になるとストレートのスピードがどんどん上がっていった。7回に146キロ、9回の3番・福武 修にも146キロのストレートで三振を奪う。3回まではふらふら、4~6回までは変化球主体でしのぎ、7回以降はストレートとスライダー主体で打者を圧倒するという、3イニングごとに別人の顔を見せる舞台俳優さながらのピッチング。

 変わらなかったのはピッチングフォームだ。昨年の明治神宮大会で肩を揺すって投げていたのが、この日はすっと背筋が伸びた上体がそのまま動かず、これを下半身でリードして打者に向かっていくという理想的な流れ。前半は確かにふらふらしていたが投げ方がよかったので私は全然心配していなかった。

 高田を助けたのはディフェンス陣だ。1回は一死一塁で福武を6-4-3、3回は無死一、二塁で谷口極を6B-3、5回は無死一、二塁で川上 和輝を6-4-3、9回は1死一、二塁で原田 隆聖を5C-3の併殺に打ち取っているが、このうち3つの併殺にかかわったのがショートの北川 大貴(3年)。安定したフィールディングとスローイングは見ていてまったく不安がなかった。

 北川はバッティングもよく、ヒットは第1打席の1本だけだが、始動とステップが実に粘っこく、ストレート待ちで変化球がきても対応できる柔軟さがあり、第1打席ではキャッチャー寄りで捉えた打球をおっつけてレフト前にきれいに持って行った。明治神宮大会ではまったく印象に残らず、観戦ノートには一言も触れなかったのが、一冬越してまったく別人になった。春の選抜はこういう選手に出会えるのが嬉しい。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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