札幌第一vs関東一
札幌第一逃げ切り2回戦へ、9番兼村4安打の活躍
4安打で大当たりの兼村(札幌第一)
札幌第一は全道大会が終わりほぼ1か月ぶりの公式戦である。菊池雄人監督は、「試合感覚の面では、厳しいです。その間、修学旅行などの学校行事などもありましたし、今の時期、北海道では外で練習できませんですから」と語る。
対する関東第一は、4日前に同じ[stadium]神宮球場[/stadium]で、二松学舎大付と死闘の末、優勝を決めたばかり。米澤貴光監督は、「選手たちを集めて、二松学舎大付の分も、神宮枠をとるため、しっかりやらないといけないと言ってきました」と語る。ただ、劇的な優勝を決めたばかりで、選手の気持ちの中に、ほっとした部分があるのも否定できないだろう。
関東一の先発は秋季都大会の準々決勝以来の先発になる竹井丈人。札幌第一は2回表、5番銭目悠之介の二塁打と8番上出拓真の四球などで二死一、三塁のチャンスを迎える。ここで打席には9番の兼村京佑が入る。竹井はボールが先行し、ノーストライクスリーボール。9番打者だけに、次の球は当然見送ると思えたが、打ちに出て、打球は中堅手を超える二塁打に。2人が還って札幌第一が2点を先取する。
「思いっきりのいい子なんで。でもあそこで打ってくれるとは思っていませんでした」と、札幌第一の菊池監督は語る。本来は上位を打つ力があるものの、上位に据えると結果が出ないために、9番で起用しているという。一方、関東第一の米澤監督は、「9番の子にノースリーから打たれたのは誤算でした」と語る。
その裏、今度は関東第一がチャンスを迎える。札幌第一の先発は、絶対的なエースである上出。「都大会の映像を観て、二松学舎大付の大江君の速球に対応していましたから。僕はそんなスピードはないですから」と上出は語る。二松学舎大付の大江は、都大会の決勝で最速148キロをマークしているが、上出はそれより10キロ以上遅い。それだけに、丁寧な投球をしていた。
2回裏も11球を投げて二死となっていたが、6番竹井は三塁手の失策で出塁。続く村瀬佑斗の左前安打で一、二塁。8番石塚大樹は右前安打。二塁走者竹井は、三塁を回ったところでストップ。しかし村瀬は二塁を回り三塁に向かっており、押し出される形で竹井も本塁を狙うが、挟まれてアウトになった。都大会では見られなかった走塁ミスであった。実は竹井は足を痛めており、三塁コーチャーはそれを考えて止めたようだが、ちぐはぐになってしまった。関東第一としては、ここで点が入らなかったのは痛かった。
チームを引っ張った村瀬主将(関東一)
4回表、札幌第一は、兼村と2番の辻陸人の安打に3番長門功の四球で二死満塁となったところで、関東第一は投手を竹井からエースの河合海斗に交代した。本来であれば、打撃のいい竹井は左翼の位置につくはずだが、足の状態も考慮して、ベンチに退いた。
しかし河合は4番高階成雲に四球。押し出しで、札幌第一は1点を追加した。
この日は河合の状態が良くなく、5回表には上出、兼村、宮澤晃汰、辻の4者連続安打で札幌第一は2点を追加。
5回裏、関東一は遊撃手への内野安打で出塁した9番本橋慶人が、上出の暴投2つで一気に生還し、1点を返したものの、6回表札幌第一は関東第一の3番手佐藤 奨真から上出の左前安打などで1点を追加した。
札幌第一が試合を優勢に進めていたが、上出の投球数は6回で既に100球を超えており、徐々に疲れも出てきた。6回裏、関東第一は山室勇輝の二塁打、途中から二塁の守備に入っている森川瑶平の右前安打、7番村瀬の四球で無死満塁とし、内野ゴロ2つで2点を返し6-3と3点差に迫った。さらに関東一は8回裏にも山川新太の三塁内野安打で1点を入れ、2点差とする。
9回表、札幌第一はこの日4安打目となる二塁打を放った兼村を、辻が犠飛で還し再びリードを3点差にしたが、9回裏はエースの上出に代えて、冨樫颯大をマウンドに送る。関東一はこの回先頭の佐藤佑亮が右前安打、続く山室と代打の溝渕龍之介が四球で出て、無死満塁のチャンスをつかむ。札幌第一の菊池監督は、「ボール自体は悪くありませんでした。でもフォアボールを出した時は、『頼むよ~』という思いでした」と語る。
確かに冨樫の球には威力があり、後続の打者を三振、三振、中飛に打ち取り、札幌第一が関東一の反撃をかわして逃げ切り、2回戦に進んだ。
試合後米澤監督はセンバツに向け、「投手で、誰か1人出てくれないと」と語った。ヒーローなく、全員で勝ち取った都大会の優勝であるが、全国のさらに厳しい戦いを考えれば、柱が欲しいのは確かだ。
勝った札幌第一の上出も、8回で四死球7と、問題がある内容ではある。それでも1試合粘り勝ったことで、次はどのような試合をするか、注目したい。
(文=大島 裕史)
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