試合レポート

関東一vs二松学舎大附

2015.11.10

関東一2年ぶり4回目の優勝!壮絶8、9回の攻防

優勝旗授与 関東一・村瀬佑斗主将

 一昨年は決勝で対戦し関東一が勝ち、昨年は準決勝で対戦し二松学舎大付が勝ったものの、いずれも延長戦の大熱戦を演じた両校の対戦は、またしても壮絶な試合となった。

 関東一の先発は背番号10の佐藤 奬真は、好投したものの、4回裏に二松学舎大付の4番・永井 敦士に左中間を破る二塁打を打たれ1点を失い、7回裏には永井にライトスタンドに入る本塁打を打たれ計2点を失った。

 3回裏には、1番・三口 英斗のライトオーバーの二塁打で一気に本塁を狙った一塁走者の平野 潤を右翼手、一塁手の中継プレーで刺すなど好守もみせた。7回を終わって二松学舎大付を2点に抑えたことは、健闘といえるものの、二松学舎大付のエース・大江 竜聖の出来を考えれば、かなり厳しい点差に思えた。しかし試合は、8、9回に劇的な展開をみせる。

 8回表関東一は先発の佐藤奬に代えて送った代打の森川 瑶平が三遊間への内野安打で出塁し、1番・宮本 瑛己が二塁へ送り、2番・村瀬 佑斗が四球で一死一、二塁。ここでこの日3番に入った山室 勇輝が左中間を破る二塁打を放ち2者が生還、同点に追いついた。

 その裏二松学舎大付は、佐藤奬に代わり登板したエースの河合 海斗から、この回先頭の9番・平野 潤が右中間を破る二塁打を放つ。1番・三口のバントは投飛となり失敗したものの、2番・鳥羽 晃平が四球、4番・永井が死球で二死満塁となった。河合は5番・今村 大輝に対し、フルカウントからの6球目をインコースにズバッと決め三振に仕留め勝ち越しを許さない。

 すると9回表、この回先頭の6番・山川 新太が遊撃手強襲の内野安打で出塁し、二塁へ盗塁。捕手・今村の送球が暴投となり、三塁に進む。続く米田 克也は四球で出塁し、二塁へ盗塁で二、三塁。8番・本橋慶人は三振で倒れたものの、続くは8回からレフトを守っている石塚 大樹。石塚は高いバウンドの投ゴロとなったが、これが幸いし、山川が生還。勝ち越した。さらに1番宮本も高いバウンドの遊撃手へのゴロが内野安打となり、1点を追加した。

 大江の速球は自己最速の148キロを記録するなど、疲れがみえているわけではなかった。それでも関東一の選手の執念により、打球がラッキーな当たりとなり、関東一に2点をもたらした。


二松学舎大附 大江竜聖

 ところが勝負はそれで終わらない。
9回裏二松学舎大付は先頭の6番・橋本 雅弥がレフト線への二塁打で出塁。さらに8番の大江 竜聖が流してレフト線上への二塁打で橋本を還し、1点差に迫る。続く9番・平野 潤への投球が2ボール1ストライクとなったところで関東一は、エース・河合 海斗に代えて、1年生の小川 樹をマウンドに送る。小川は1次予選で1回を投げただけで、都大会は初登板。「調子は良かったので、使いたいと思っていました」と、米澤 貴光監督は語る。

 また捕手の佐藤 佑亮と小川は、中学生時代(取手シニア)バッテリーを組んでいた。「強気と、真っ直ぐの良さを生かすリードをしました」と佐藤佑。

 平野 潤は遊撃手への内野安打、三口は四球で、一死満塁。1年生投手には重圧のかかる場面で、打席にはやはり1年生の2番の鳥羽 晃平。1ボール1ストライクからの3球目、チェンジアップが投ゴロとなり、投-捕-一と渡りダブルプレー。この瞬間、関東一の2年ぶり4回目の優勝が決まった。

 試合後に米澤監督は、「何とか食いついていきました。8、9回何かあると思っていました」と語る。
この大会が始まった時、「マイナスからのスタート」と語っていた米澤監督であるが、「いつも1試合が精一杯で、我慢、我慢でした」と大会を振り返る。このメンバーで甲子園に出たのは竹井 丈人佐藤 佑亮だけで、レギュラーはいない。甲子園でベスト4に進出した先輩たちの背中を見て、教えを受けながら勝ち取った秋の栄冠であった。

 一方、二松学舎大付は、3年連続で秋季都大会は準優勝に終わった。試合後大江は涙を流していた。選手層の厚さ、大江 竜聖今村 大輝のバッテリーを中心とするチーム力は全国レベルにあったと思う。それでもなぜ勝てなかったのか。それが野球というスポーツの難しさである。少なくともこの試合では、投ゴロが高く弾んで、三塁走者が生還したチームと、投ゴロが併殺になってしまったチームとの差しかなかったと思う。

 これで1次予選を含め、2カ月にわたって行われた秋季大会は終わった。都大会の前半、二松学舎大付・早稲田実など好ゲームが続出したものの、準々決勝以降は、大差の付く試合が多かった。そうした中で決勝戦は、今年の東京都の高校野球の最後を飾るにふさわしい、白熱した好ゲームであった。

 関東一は短期間でチームを仕上げ、傑出したヒーローがいなくても優勝できることを示した。関東一に限らず、秋季大会の期間だけでも、かなり成長した選手もいる。ひと冬越して、どのチームが成長を遂げるか、来年の春を楽しみにしたいと思う。

(文=大島 裕史


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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