鳴門vs辻
辻の「健闘」から見えた鳴門の「課題山積」
辻先発・滝上 和弥
スコアだけを見て見出しを打てば「鳴門8回コールド・河野 竜生、4安打完封順調発進!」が、実際の鳴門がどんな状況だったかは、浮かない表情で一塁側ベンチから出てきた森脇 稔監督の表情が何よりも物語っていた。
「相手投手、よかったですね」
それは間違いない。辻の先発左腕・滝上 和弥(2年・左投左打・176センチ67キロ・三好市立三好中出身)は6回途中5失点ながら身体をしなやかに使い、低目への制球力も一定のレベルに達していた。フィールディングのよさも光り2回にはけん制での刺殺も記録。
「中学時代は野手だったが、雰囲気を見て、けん制、カバーリングからやっていって投手にした」1988年・小松島西センバツ初出場時のエース・高井 正善監督の目利きが正しいことを大舞台で証明した。
辻にはもう1人、今後注目すべき選手がいた。東みよし町立三加茂中では文部科学大臣杯第4回全日本少年春季軟式野球大会出場経験を持つ3番・中堅手の森下 義伸(2年・171センチ64キロ・右投左打)である。
昨年11月開催の「平成26年度徳島県高等学校野球体力・技術向上研修会」において並み居る上級生たちに伍して6位となるベースランニング14秒27を残した森下は、この試合でも4回に二盗、7回に三盗と2盗塁を記録。まるで健大高崎(群馬)を思わせる大きなリードで河野へ大きなプレッシャーを与えていた。
そこで鳴門側に視点を返せば・・・・・・冒頭で記した通りということだ。現在、フォームの微調整に取り組んでいる河野 竜生(2年・左投左打・172センチ72キロ・鳴門市第二中出身)は「窮屈そうに投げていた」と指揮官も指摘するように躍動感が見られず。攻撃もけん制死2度にバント失敗とミスが頻発。
4回裏二死満塁からの8番・河野による走者一掃左翼越え二塁打。さらに2013年4月開催の「第5回少年硬式野球四国選手権大会」決勝戦では2年生で代打サヨナラ打を放ち、徳島ホークス(ヤングリーグ)を初の頂点に導いた勝負強さを公式戦初出場4打数3安打で改めて印象付けた6番・胡桃 好伸(中堅手・168センチ78キロ・右投右打)の活躍がなければ勝敗がどちらに転ぶかも判らなかった。
もちろん鳴門の見ている目線は徳島県・四国で勝つことだけではないはず。辻の健闘によって焙り出された課題をいかに消化できるか。最後は数名の選手を名指しし「帰って走らせます」と言い残して帰路についた森脇監督の意図は、悄然とした顔が並んだ選手たちにも伝わっていると信じたい。
(文=寺下 友徳)
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