新田vs松山聖陵
重過ぎる初戦で新田が見せ付けた「落ち着き」
最速141キロをマークした松山聖陵先発・アドゥワ 誠(2年)
[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]の内野席を埋めた観衆は夏の愛媛大会かと見間違うような多さ。ネット裏には中予地区をはじめとする各校のスカウティング部隊たち。NPBスカウトの姿もその中にはあった。これはもはや中予地区予選1回戦の雰囲気ではない。
スコアボードに目を転じればそれも納得である。「新田vs松山聖陵」。小山を挟み、徒歩30分圏内にある松山市西部地区私学の両雄。高校野球の世界でも新田は「ミラクル新田」と称された1990年センバツ初出場準優勝含め春2度の甲子園出場。松山聖陵もこれまで甲子園出場こそないが、昨秋四国大会1勝をはじめ県内屈指の強豪として名を馳せている。
負ければ「地区予選初戦敗退」という屈辱だけが残る重い一戦。その中で終始落ち着き見せていたのは三塁側・新田であった。
準々決勝で松山商に6対7と競り負けた中予地区新人戦後に行った恒例の関東遠征では、上尾・浦和学院・前橋商業・本庄第一・宇都宮工業との練習試合を実施。タイプの異なる甲子園出場校と対戦する中「一瞬でのスキを見せれば一気にやられてしまう一方で、しっかりした野球をすれば何とかなる」(岡田 茂雄監督)手ごたえを得たことで、この日最速141キロ(新田高校スピードガン計測)を叩き出した松山聖陵エース・アドゥワ 誠(2年・195センチ80キロ・右投右打・熊本中央リトルシニア<熊本>出身)に対しても、ストライク・ボールの見極めがしっかりとできていた。
新田の3番・眞田 康弘(2年)
2回表二死二・三塁から8番・古和田 仁(1年・捕手・173センチ77キロ・右投右打・松山中央ボーイズ出身)が右前に落とした先制2点打や、6回表に先頭打者四球後のファーストストライクを狙い撃ち、センター頭上を越える適時三塁打を放った3番・眞田 康弘(2年・中堅手・174センチ68キロ・右投左打・松山ボーイズ出身)などはそれらの代表格といえるだろう。
転向から約3週間、「打ちにくさは出すことができた」田中 蓮(2年・投手・177センチ69キロ・右投右打・松山市立小野中出身)のサイドスローにはいまだ向上の余地はあるが、勝負どころで併殺を奪うなど主将の三上 幹太(2年・遊撃手・164センチ63キロ・右投両打・愛媛ボーイズ出身)いわく「チームで頑張る」形を出し、ライバルにダメージを与えられたことは夏までを見据えた上でも必ずプラスに働くことだろう。
最後に松山聖陵について。リリース時に腕を叩く傾向が出たときは力のあるボールが出ているアドゥワをはじめ、個々の潜在能力は間違いなくある。その一方、9回表に決定的な6失点を喫した要因は投球練習最後の二塁送球を簡単に後ろに逸らしてしまったことがきっかけだと筆者は考える。
では、なぜ9回表にそのプレーを起こしてしまったのか?悪い空気をなぜ止められなかったのか?そこを考えることが屈辱を返す春へ向けての第一ミッションとなるはずだ。
(文=寺下友徳)